「パティシエになる」、夢を実現したクローン病患者さんの働き方

ライフ・はたらく2022/4/26

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ゆずねさん

今回の「仕事・はたらく」で取材したIBD患者さんは、大阪・兵庫でパティシエとして働くゆずねさん(Instagramハンドルネーム)です。クローン病と診断を受けたのは高校1年の春休み、16歳の時だったそう。その後、一度は諦めた「パティシエになる」という夢が、思いがけないことをきっかけに実現。現在、新店舗オープンに向け新商品の開発などにも忙しいゆずねさんに、これまでの治療や、パティシエの仕事、働き方の工夫などについてお聞きしました。

ゆずねさん(クローン病歴6年/22歳)

大阪府出身。中学3年の秋ごろから下痢などの症状が現れ始める。高校1年生の春休みに大学病院に検査入院し、クローン病と診断。高校卒業後、洋菓子店の「販売アルバイト」募集に応募したところ、「製造・パティシエ」としての正社員募集があることを知り、パティシエに志願し、就職。約2年間勤務した後、知人が働くカフェへ、パティシエとして転職。
Instagram: ibd_patissier_k

カフェ勤務のパティシエ4年目、新商品考案も

――ゆずねさんの今の仕事内容を教えてください。

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ゆずねさん作のケーキ

現在、勤めているのは大阪府内にあるカフェです。モーニング、ランチなどを提供するカフェで、スイーツを担当しています。パティシエは先輩と私の2人だけで、イートイン用のパフェ、テイクアウト用のケーキなど、スイーツに関わる仕事全般を担当しています。現在、兵庫県に新店舗をオープンする予定があり、看板メニューの考案や新商品の試作にも携わっています。移動時間がこれまで以上にかかって少し大変ですが、とても充実しています。

――パティシエとしては4年目と伺いました。

カフェに勤め始めて約1年。その前は、別の洋菓子店で約2年間働いていました。高校卒業後、地元のレストランのスイーツ部門でアルバイトとして働き始めました。それから数か月後、洋菓子店の「販売アルバイト」を掛け持ちしようと面接に行ったところ、「製造部門、パティシエとして正社員の募集もあるよ」と誘いを受けました。製菓の専門学校の卒業は問わないということで、入社することになりました。

お菓子作りが好きで、中学生の頃から抱いていたパティシエになりたいという夢が、思いがけず実現することになり、すごくうれしかったです。

――洋菓子店ではどのような仕事をされていましたか?

地元の人気店で、比較的大きな規模でした。製造部門は、デコレーションを担当する部門と、スポンジ生地やクッキーといった焼きもの部門に分かれていて、私は焼きもの部門に配属されました。生地作りのほとんどの工程を担当していましたよ。

診断がつくまでの1年は「整腸剤が手放せない」

――クローン病の症状が出始めたのは中高生の頃だったそうですね。

下痢などの症状が続くようになったのは中学3年生の冬頃、高校受験目前のタイミングでした。受験が終われば治まるだろうと簡単に考えていたのですが、高校入学後も治まることがなく…。整腸剤を手放すことができないまま約1年を過ごしました。

さすがに違和感を覚えて、近所の病院を受診。そこで精密検査を受けたほうがよいと大学病院を紹介され、高校1年の春休みに検査入院しました。大腸内視鏡検査などを受け、クローン病(小腸大腸型)と診断されました。

初めて聞いた病名で、難病と聞いて驚きはしましたが、自己注射薬と内服薬による治療が始まり、菅理栄養士さんに食事指導を受けるなど、適切な治療が始まったことで、それまで抱いていた不安が解消され、そこまでショックはありませんでした。また、クローン病とわかってからも、症状がひどくて学校に行けないということはありませんでした。

――パティシエになるための高校卒業後の進路を考えていましたか?

実は、クローン病になってから、パティシエは叶いそうにもないと諦めて、看護師という別の夢を見つけていました。ですが、高校3年生になり、周囲も進学に向けて追い込んでいる中、クローン病の症状は特になかったのですが、気持ちがついていかなくなってしまいました。途切れてしまったという感じです。1学期はほとんど学校に行けず、2学期は休みながらも何とか通学していました。

そんな姿を見かねた母が、「1年間くらいゆっくりと休んでみたら」と、進学にこだわらない選択肢をアドバイスしてくれました。結局、そのまま看護学校の受験はせず、高校卒業を迎えました。肩の荷が降りて、気持ちがとても楽になりましたね。

同じパティシエという職でも、職場によって変わる働き方

――パティシエと聞くとハードワークという印象がありますが、実際はどうですか?

洋菓子店に勤務し始めて数か月後にクローン病であることを職場の上司に伝えましたが、特別視されることはなく、重い小麦粉を運んだり、大きな調理器具を扱ったり、また、クリスマスなどの繁忙期は特に、休憩もなかなか取れず、朝から夜まで立ちっぱなしということも、もちろんありました。

持病がない上司には、「何となく体がつらい」というニュアンスが伝わりにくく、泣いてしまったこともありました。それでも辞めずに続けることができたのは、欠勤が続くほど体調を崩すことが幸いにもなかったこと、また、製菓学校出身でない高卒の私をパティシエとして雇ってくれたのだから、とにかくがむしゃらに、がんばるしかないという気持ちからだったのかなと思います。

――洋菓子店からカフェへ転職することにしたきっかけは?

洋菓子店に勤め始めて2年が経とうとしていた頃、仕事がとても忙しくなり、体調を崩しがちになっていました。そんな時、知人から、現在勤めるカフェへの転職の誘いを受けました。

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ゆずねさんが手掛けたホールケーキ

洋菓子店より勤務時間が短くコントロールされていること、トイレに行きたいタイミングで行くことができ、パティシエとしてというオファーで、私にとっては好条件がそろっていました。また、体への負担を考えてデコレーション部門への異動を願い出ていたのですが、すぐには異動できないと断られた直後だったこともあり、転職を決意しました。同じパティシエでも、職場によって働き方が大きく異なることを実感しました。

――忙しい中でも食事など気を付けていることはありますか?

洋菓子店勤務時代は、どんなに忙しくても、コンビニでごはんを買ったりはせず、母がつくってくれたおにぎりと、スープジャーにみそ汁を入れて、持参するようにしていました。現在勤めるカフェにはまかないがあるのですが、自分が食べられるものを自分の体調に合わせて食べることができています。

病気を理解して欲しいなら、自分から伝える努力は必要

――クローン病とわかってから、周囲とのコミュニケーションで気を付けていることなどがあれば教えてください。

外見からわかるほど症状が重い時がある一方、症状がそれほど重くない時でも「何となくつらい」という状態になることがあります。周囲に理解されにくいのは当たり前だと思います。私も病気になるまでクローン病のことを知りませんでしたしね。

だから、友人など病気のことを理解して欲しい人には、積極的に病気の話をするようにしています。理解して欲しいなら、自分から伝える努力が必要かなと。もし、病気と伝えたことで疎遠になるようなら、その人との関係はその程度…と思うようにしています(笑)。

――最後に、同じIBDの患者さんへ一言お願いします。

楽しいことが一番!無理な時は無理をしないで、ひとやすみしてみてください。私もひとやすみしたからこそ、パティシエとしての道が開けました。

(IBDプラス編集部)

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