50歳目前でクローン病診断、経営者の社会復帰をサポートするものは?

ライフ・はたらく2022/5/27

  • Xでポストする
  • いいね!
  • LINEで送る
  • URLをコピー URL
    copied
ibd-onoda-prof-300

今回のIBD患者さんは、飲食店経営者の小野田淳夫さん。東京・五反田にあるソウルミュージックバー「Ali-Ollie!!!!」(アリオリ)の経営者であり、飲食店の販促などをサポートする会社も営んでいます。小野田さんがクローン病と診断されたのは2021年10月、49歳の時でした。自営業ゆえ、「自分が病気と診断されたらどうしよう」という不安から、なかなか病院に行けなかったそう。若いころは少し“無茶な”働き方もしていたという小野田さんにお話しを聞きました。

小野田淳夫さん(50歳/クローン病歴半年)

宮城県出身。20代で音楽・映像ソフトレンタル大手企業でスーパーバイザーとしてエリアマネージャー兼マーケティング業務を担当。2005年、33歳で東京・恵比寿にソウルミュージックバー「Ali-Ollie!!!!」をオープン。35歳で飲食店販促支援会社を起業。激務続きで、たびたび体調不良になる。2021年、49歳の時に体調不良をきっかけに精密検査を受け、クローン病と診断。

「バーのマスター」と「飲食店経営サポート」の二刀流

――小野田さんの仕事内容を教えてください

私が自営業を始めたのは2005年、33歳の頃でした。趣味が高じてソウルミュージック(1960年代に発展した米国のブラックミュージック)を楽しむことができるバー「Ali-Ollie!!!!」をオープンさせました。バー経営の傍ら、2007年からは他の飲食店の販促やマーケティングのサポートをする会社も立ち上げ、約16年間、「二刀流」で仕事を続けてきました。

ibd-onoda-3.jpg
店内にはアリ・オリ・ウッドソン氏のサイン!ウイスキーの種類も豊富です

店の名前は、私が敬愛するソウルシンガー、元テンプテーションズのリードヴォーカリスト、ALI-OLLIE WOODSON(アリ・オリ・ウッドソン)氏にちなんで。ご本人来店という嬉しいサプライズもありました。バーは元々恵比寿にありましたが、2017年に五反田へ移転しました。

販促やマーケティングサポートの仕事としては、飲食店の事業計画書の作り方から販促ツールの制作プロデュースまで、幅広く請け負っています。

――小野田さんと音楽の縁はいつ頃からですか?

私は宮城県出身で、高校時代からバンド活動を始め、バイト代は全部レコード代に消えるほどで、音楽との関わりは密だったのですが、高校卒業後は地元の工業ガス製造会社に就職。あまり上手く行ってないと感じていた頃に、音楽・映像ソフトレンタルの大手企業の地元での採用情報を知り、試験を受けました。

無事に転職でき、中古レコードの事業や、店舗運営のスーパーバイザー兼エリアマネージャー、マーケティング業務も担当しました。1年ごとに転勤があるなど、かなりハードでした。10年ほどの在籍中にさまざまな事業に関わり、そこでの経験を生かして、ダウンサイズしてビジネスができないかと模索して始めたのが、今の形です。

「脂っぽいものを食べると体調不良」30代から感じていた異変

――昼はプロデューサー、夜はバーのマスター、ハードワークでしたか?

睡眠時間は平均2時間、日中は事務系の仕事、夜7時から朝7時までバーで勤務するなど、とにかく働きました。飲酒もかなりの量でした。そのような生活が続いて、体に異変が出ないはずがなく…(苦笑)。開業から1年ほどで体調を崩しました。病院に行くと、「胃潰瘍でしょう」と言われ、薬を服用するようになりました。

「自営業あるある」と言えるかもしれませんが、がんばった分は全て自分に返ってくるんですね。だから、どうしても無理をしてしまい…。ですが、この頃から、接客時の飲酒はできるだけ断るようにしていました。

――体調不良はその後もたびたびあったそうですね

2011年、39歳の時に、椅子に座れないほど肛門がひどく腫れて病院に行ったことがありました。でも、特に病気は見つかりませんでした。

2014年、再び肛門付近に異変が起こり、今度は痔ろうと診断され、手術を受けました。事前に大腸内視鏡検査などはなかったため、単なる痔と思っていました。

以前から、脂っぽいものを食べては体調を崩すことが度々ありました。今思えば、当時からクローン病の症状があったのかもしれません。ですが、翌日には元通りの生活ができていたので、あまり深刻には考えていませんでした。

正直なところ、自営業を始めてから「自分が病気と診断されたらどうしよう」という不安が常にあり、診断されることを恐れて、なかなか病院に行くことができなかったというのもありますね。そこまでひどくならなかったとは言え、市販の胃腸薬が手放せない状況が続いていました。

コロナ禍で計画した新事業が1日で終了、体調不良に陥り検査へ

――クローン病と診断されたのは2021年だったそうですね

コロナ禍で、総菜販売の新ビジネスをスタートさせようと準備をしていました。地域性からも成功を見込んでいて、2020年5月から計画準備をしてきたものだったのですが、事情により1日で終了することになってしまいました。そこから体調が一気に悪化しました…。

回復の兆しが見られず、夏に近所のクリニックを受診。そこで大学病院での精密検査を受けるように言われ、都内の大学病院を紹介され、10月に検査。その結果、クローン病と診断されました。小腸に裂傷があり、一部に狭窄もありました。

その後入院となり、しばらくステロイド治療を受けました。幸いにも手術を受けるほどではなく、2021年の年末に退院。現在はステラーラを使用し、エレンタールで栄養を補っています。

――クローン病と診断されて、どんな気持ちでしたか?

落ち込んだり、不安な気持ちにはもちろんなりましたが、一方で、「長年の不調はもしかしてこれだったのか」と、ある意味ホッとしました。

実は、兄も40代半ばでクローン病と診断されていました。兄は病院を転々とし、数件目の病院でようやく診断がつきました。自分がまさかクローン病になるとは思ってもみなかったのですが、クローン病がどういう病気なのか、兄の治療経過を知っていたので、少しは不安が軽減されました。

ランニングを退院後から開始、生活リズムが整う

――入院から退院、退院後の復帰はどのような経過でしたか?

バーの仕事は2か月半ほど休み、なるべく休養をとるようにしました。年明けからは週2、3回位のペースで仕事を再開しました。

――クローン病であることを、周囲に説明されていますか?

常連客には、病気のことを詳しく説明するようにしています。「マスターは、なぜお酒を飲まないの?」といった疑問をもつお客さまもいますし、見た目にはわからない生活における支障なども話すようにしています。

ibd-onoda-2
「Ali-Ollie!!!!」には女性スタッフも

病気で休職する場合、仕事によっては職場復帰が困難な方もいると思いますが、私は、自分のペースで仕事を再開させることができました。10年以上一緒に働いている気心知れた頼もしいスタッフのサポートのおかげではありますが、自営業だったからこそ、無理せずに復帰することができました。

――現在、生活面で心掛けていることはありますか?

もともと運動するタイプではありませんが、退院直後から筋力低下を補うため、ウオーキングを開始。効率が悪いから走ろうと決め、まずはランニング用の装備を揃えるところから始めました。

最近のお気に入りは、早朝に皇居(東京駅近く)付近まで走り、カフェでデカフェ(カフェインレスコーヒー)を飲み、電車で戻るというコースです。ルート沿いのトイレ事情にも詳しくなりました。

ランニングを習慣化するようになってから、7時間連続で眠れるようになりました。体がリセットされる感じで、生活リズムが整い、調子はいいです。もちろん、食事の面でも、低脂質、飲酒しないなど、気をつけています。

人とのつながりをこれからも大切に

――小野田さんの支えとなっている「もの」や「こと」はありますか?

やっぱり「人」ですね。お客さんの楽しそうな顔を見ていると、嬉しくなります。自分が元気で働けるからこそ、お客さんと話をすることができますしね。今回クローン病とわかって、いろいろ考えるようになり、マインドにも変化がありました。人とのつながりをこれからも大切にしていきたいですね。

――最後に、同じIBD患者さんにメッセージをお願いします

今のところ、クローン病は「寛解」はするけど「完治」はできない、長くつきあっていかなければいけない病気です。いろいろな不安はあると思いますが、何か1つでも希望をもって、楽しめることを見つけてほしいなと思います。そして、良い方向に向かっていってほしいと思います。

「ソウルミュージックって何だろう?」と思われたら、ぜひお店に遊びにいらしてください。

(IBDプラス編集部)

この記事が役立つと思ったら、
みんなに教えよう!

会員限定の情報が手に入る、IBDプラスの会員になりませんか?

IBDプラス会員になるとこんな特典があります!

会員登録

  • 1. 最新のニュースやお得な情報が届く
  • 2. 会員限定記事が読める
  • 3. アンケート結果ダウンロード版がもらえる

新規会員登録(無料)

閉じる
レシピ特集
レシピ特集をみる