【開催レポート】IBDとはたらくプロジェクト主催 オンライントークLIVEイベント
月別のイベント | 2020/10/8
IBD患者さんが「自分らしくはたらく」といっても、その人の病歴、病状、職種、働く環境などによって、100人いれば100通りの自分らしい働き方があります。ヤンセンファーマ株式会社はそんな患者さんたちの悩みや疑問を少しでも解消すべく、オンライントークライブを開催。クローン病のお笑い芸人「お侍ちゃん」のMCで全4回に渡り開催されたライブの内容を、ダイジェストでお伝えします。
第1回 自分らしくはたらくために 正しく知ろう、病気のこと
ゲストに佐賀大学 医学部内科学講座消化器内科教授の江﨑幹宏先生を迎え、「IBDの正しい知識」や「日常的に注意すべきこと」などについてトークが繰り広げられました。
江﨑先生は初めに、IBDは潰瘍性大腸炎(UC)・クローン病(CD)いずれも慢性の病気で多くの場合、寛解と再燃を繰り返すと説明。継続的な治療や日常的なケアにより、落ち着いた状態を保つことが重要だと述べました。
また、仕事に関する相談で多いものを聞かれると、「面接などで病気のことを話した方が良いのか?という質問が最も多い」と回答。状況にもよるが、通勤やトイレの問題も避けられないと思うので、最初にきちんと話した方がいいのではないかとアドバイスすることが多いとのことでした。
食事については、「動物性脂肪は控えた方が良いと思う。以前は低残渣、炭酸・お酒・香辛料も控えるという指導がされていたと思うが、最近では腸内細菌が重要視されつつあり、水溶性食物繊維は善玉菌を増やすという話もあるので、野菜はもっと取っても良いという指導に変わりつつある。ただし、自分が下痢するものは控えるように」と、述べました。
第2回 自分らしくはたらくために ポジティブに語ろう、病気のこと
ゲストにジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ統括産業医・岡原伸太郎先生と、クローン病を抱えながらヤンセンファーマで働く鎌田慶さんを迎え、「職場とのコミュニケーション」などについてトークが繰り広げられました。
統括産業医について、岡原先生は「社員たちをサポートする保健室の先生みたいなもの」と説明。先生自身は、「会社に病気をどのように伝えればよいか?」という質問をよく受けるとのこと。トークライブ開催中に視聴者対象に行われたリアルタイムアンケートの結果では、「病気について伝えているがあまり具体的ではない」が52%で最も多く、ふんわり伝えている人が多いことがわかりました。一方、「病気について伝えやすい環境か?」との質問では、どちらともいえない42%、伝えやすい34%、伝えにくい23%という結果に。これに対して岡原先生は「本人ががんばりたい、貢献したいという想いを否定する会社はないので、何ができて、何ができないのかということをセットで伝えていくのがポイント」と力強く語りました。
鎌田さんは、26歳のときにクローン病と確定診断されて病歴25年。すでに4回の手術を経験しているそうです。2014年にヤンセンに入社するまで数回転職を経験しているそうですが、自分が休んでいるときに周囲に負担をかけていたことを後で聞き、それ以降、病気のことをきちんと伝えようと決意。男性ということもありますが、トイレの回数や通勤中や会議中にトイレに行きたくなる可能性があることも伝えているそうです。
岡原先生は、「寛解などで何も困ることがなければ無理に開示する必要がない。ただ、支援を得る必要があるなら、周囲の人にはある程度伝えておく必要がある」とコメント。一方で、病気を明かさずに入社した人に関しては「入社後に健康診断や産業医を通して必要なサポートをしていくので、無理に伝える必要はないと考える」と、自身の考えを述べました。
最後に、お侍ちゃんが「毎日いろいろなことをしたり、いろいろなものを食べたりしているとわからなくなってしまうので、朝はこれを食べるとか、何か決めておいた方が、具合が悪くなった時に原因が探しやすい」とのアドバイスで締めくくりました。
第3回 自分らしくはたらくために 見つけよう、withコロナの働き方
ゲストにサイボウズ株式会社 代表取締役社長の青野慶久氏と、株式会社三雲社 CCJAPAN(クローン病・潰瘍性大腸炎患者向け情報誌)編集長の森田広一郎氏を迎え、「withコロナの働き方」についてディスカッション。ヤンセン社が無償貸し出しを開始した自立走行可能なビデオ会議ロボット「リモートワーキングロボット」も紹介されました。実際に森田氏はリモートワーキングロボットで出演されていましたよ!
お侍ちゃんが「仕事と病気の両立が難しい。IBDでも働けなくなった時に誰かにカバーしてもらわないとならず、それが難しいんですが…」と投げかけると、青野氏は、「大事なのは、みんなが我慢するのではなく、それぞれがワガママを出し合って何とかなるというのが良い」とコメントしました。
森田氏は、クローン病患者だけで三雲社を立ち上げたときのことについて、「働きたいが休まなければならないし通院の問題もある。そんな中で、負担にならないように働こうと思った」と述懐。IBDを隠さなくてもいい、具合が悪いときも共有できるなどのメリットを挙げ、入院中でも横になりながらでもできる仕事はあると語りました。急に入院することもあるので、常に自分の仕事は見える化して、共有するようにしているそうです。
コロナ禍でリモートワークが広まったことはIBD患者さんにとってはある意味追い風と言えます。しかし、「在宅勤務可能か?」というリアルタイムアンケートの結果は、対応可能45.6%に対し、対応困難・不可25.6%でした。そんな中紹介されたリモートワークロボット。PCのオンライン会議では画面が固定されてしまいますが、自分がその場所にいるように見たい方向を向いたり、移動したりできるというメリットがあるそうです。
最後に青野氏は「社会はコロナを機に激変期を迎えたと思っている。働きにくいのであれば働きやすい会社にどんどん転職すべき。少なくともうちの会社は理念を共感している人であれば、病気であるかどうかということは気にしない」と、力強く述べました。
第4回 自分らしくはたらくために 知りたい、就活のこと
ゲストに株式会社マイナビ マイナビ編集長の高橋誠人氏と、株式会社ゼネラルパートナーズの藤大介氏を迎え、「就活」をテーマにトークが繰り広げられました。
まず、多くの学生たちが気にしているであろう「新型コロナが就活に影響するのか?」という疑問について高橋氏は、「外食、宿泊、航空業界などで新卒採用を中止する企業はあるが、その割合は1、2割程度。増やすという企業もあるので、全体的には氷河期ほどひどくはない。むしろ、来春からの採用活動本番に向けて、今から準備して欲しい。来年は採用スケジュールが早くなる可能性もある」と回答しました。また、オンライン面接だけでなく、対面の面接対策をしっかり行うことが大切なのだとか。最終面接は対面という企業が多く、オンラインとは違うので実際に会うと緊張して本領発揮できず不採用になるケースもあるそうです。あわせて、オンラインインターンシップも増加しているので、こちらの情報収集もするべきとアドバイスしました。
難病専門の就労移行支援事業に携わっている藤氏によると、難病を抱えながら働くために必要なのは、実務スキル、疾病管理、コミュニケーション能力とのこと。「体調が悪いときは開き直って休み、その分、回復したら残業するなど120%の力を発揮するなど、メリハリをつけて働くことが大事。仕事でブランクがある場合は、入院中に資格の勉強をしていたなど、アピールできることはきちんと伝えるべき。また、1日のトイレの回数や、どのようなときに誰のサポートが得られるのかなども具体的に伝えた方がよい」と、専門に支援している人ならではの視点で語りました。
最後にお侍ちゃんは仕事で悩む全ての人に対し、「病気で人に迷惑かけてしまうこともあると思うが、それを乗り越えるような強みがあれば、企業はそちらに魅力を感じてくれるんだなと思った。働き方も変化しているし、自分に合う職場は必ずあると思うので、ガンガン転職してしまっていいと思う。侍は忍耐が美徳とされているが、そんなことでストレスたまるならやめちまえ!それくらいの感じで、物事をずらしてみたりしていくことで見えてくるものもあると思う。自分がどうなりたいか?ということを考えていけばいいと思う」と、熱いエールを送りました。
(IBDプラス編集部)
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