現在はクリエイター、その原点は入院中に教わった「義肢装具士」

ライフ・はたらく2021/5/12 更新

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ノリタカ氏

今回のIBD患者さんは、ノリタカ氏(Twitterハンドルネーム)。アクセサリー、レザークラフト、時にはイラストレーターと、持ち前の器用さとセンスを生かし、クリエイターとして活動しています。

クリエイター活動のきっかけは、潰瘍性大腸炎の治療で入院中、ある看護師さんから紹介された「義肢装具士」という職業だったそう。発症から約17年、これまでの治療のこと、仕事のこと、そして現在、未来のこと、ノリタカ氏に聞きました。

ノリタカ氏(35歳/潰瘍性大腸炎歴 17年)

1986年生まれ、兵庫県出身。現在は京都でクリエイターとして活動しながら、TwitterなどでIBD患者さんからの相談に応じたりもしている。ハンドメイド通販サイト「minne」などで作品を販売中。

京都のアトリエで夫婦一緒にハンドクラフト

――製作されたオシャレなアイテムを拝見しました。美術系の学校に通って技術を磨かれたんですか?

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ノリタカ氏: 女性用のピアスやイヤリング、レザーを使ったキーケース、オリジナルデザインのTシャツ、スマホケースなどを作って販売していますが、特に美術系の学校で学んだことはなく、ほぼ独学です。大学生の時に4年間古着屋さんでアルバイトしていましたので、その時に学んだことは生かされていますね。

製作活動を始めたのは今から6年ほど前。同じタイミングで、アクセサリーづくりをしていた妻とも出会いまして(笑)。今も一緒のアトリエで製作活動をしていますが、仕事のペースの調整など、妻に支えてもらっています。

――独学とは驚きました。もともと手先が器用なんですね。

ノリタカ氏: そうかもしれません。でも、大きなきっかけとなったのは、20代前半で取得した「義肢装具士」という国家資格です。義足や義手を必要とする患者さんのところへ行き、その患者さんに合う仕様の設計、細かな調整などを行う仕事。その時の経験は、今の私の支えとなっています。

看護師に教わった「義肢装具士」という仕事

――「義肢装具士」を目指したきっかけは?

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ノリタカ氏: 高校3年の時に過敏性腸症候群のような症状が現れ始め、潰瘍性大腸炎と診断がついたのは大学4年でした。その間ずっとお腹の痛みとの戦いで。家族にもなかなか理解が得られず、「お腹痛いだけで大学行かへんなんて、なんでや?」と、冷たい言葉をかけられたこともありました。

大学4年の時、粘性の血便、高熱などの症状が出て、母と一緒に近くのクリニックを受診。「ここでは手に負えないから」と、すぐに総合病院へ行きました。消化器病棟に入院することになったのですが、その時、若い人が全然いなくて、唯一の若かったのが、看護師さんでした。いろいろ話をする中で、ある看護師さんが「義肢装具士」という仕事を教えてくれました。

本来の志望とは違う大学で、いわゆるキャンパスライフをほとんど楽しめなかった私が、「これだ!」と思えたんですね。もともとモノづくりは好きな方でしたし。まずは治療に専念して、退院したらその資格がとれる専門学校に行こうと決めました。

一方、治療はというと、総合病院から大学病院へ転院し、そこでの主治医との話し合いから、大腸全摘手術を受けました。

やりがいはあるが長時間労働…術後合併症の回腸嚢炎、双極性障害に

――義肢装具士となり、働き始めてどうでしたか?

ノリタカ氏: 専門学校卒業後、関西圏にある義肢装具関連の会社に就職。あこがれの仕事で、やりがいはあったのですが、設計から営業、遠方の病院までの移動など全てを1人でこなさなくてはならないので負担が大きく、長時間労働の日々が続きました。

ある日、無理が高じてうつ病を発症。ほぼ同じタイミングで術後合併症として「回腸嚢炎」も発症してしまいました。大腸全摘手術を受けていたし、再びお腹の痛みに悩まされることはないと思っていたのですが、それがきっかけで入院して休職、その後しばらくして退職しました。

一度はうつと言われたのですが、別の病院を受診して「双極性障害」との診断を受けました。突如、2つの病気を抱えることになったのですが、治療がうまくいき、症状は比較的早く落ち着きました。

SNSで病気相談に乗るも、発信の難しさを知る

――休職後しばらくして、Twitterで病気の相談を受けるようになったそうですね。

ノリタカ氏: はい。これまでの闘病経験を発信することで、同じ病気で悩んでいる人の役に立ちたいなと。当時は自分の病歴をプロフィール欄に掲載。それを見た人から、手術のことや、どんな薬で治療してきたかなど、いろいろな質問がDMで寄せられました。

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そこで感じたのが、「発信の仕方の難しさ」です。患者さんそれぞれ状況が違うので、中には「先輩風吹かして」といった感じで、離れていく人もいました。今も聞かれればもちろん応じますし、IBD患者の1人として、同じIBD患者さんの役に立ちたいという思いは変わりません。

「作るのが好き」なIBD患者さんが集まれる機会を

――これからやってみたいことがあるとお聞きしました。

ノリタカ氏: 今はコロナ禍で、なかなか現実世界では難しいですが、IBD患者さんで「作るのが好きな」人たちが集まれる機会をつくれたらなと思っています。

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お互いの活動を知ることは、その人自身が刺激を受けることもあるでしょうし、特に作ることをしていない人にとっても、何か「心に火をともす」ような、そんなきっかけづくりができたらと。病気や食事だけでなく、学業、恋愛、仕事など、悩みはつきないかもしれませんが、何か可能性を感じてもらえたらうれしいですね。

(IBDプラス編集部)

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