就職活動数か月で脱フリーター→ICTの指導員に、成し得たワケは?
ライフ・はたらく | 2022/6/2 更新
今回「仕事・はたらく」で取材したIBD患者さんは、クローン病の「かなと@難病サラリーマン」(twitterハンドルネーム)こと、かなとさんです。
18歳で発症し、定職には就かずに過ごしてきましたが、30歳を目前に一念発起。就職活動を始めて数か月でIT関連企業の内定を勝ち取り、現在は小学校のICTの指導員として活躍しています。就職までの道のりは?クローン病の治療は?
かなと@難病サラリーマン(30歳/クローン病歴12年)
このストーリーのあらすじ
一次面接から病気のことを伝え、スピード内定
――ICTの指導員として働き始めてまだ数か月とのことですが、仕事は順調ですか?
かなとさん: 今春から都内の小学校に派遣され、パソコンやタブレットなどを使う授業のサポートをしています。学校の先生に代わって授業を行うこともありますね。一緒にゲームを作ったりするのですが、仕事内容が自分には合っていて、今のところストレスもなく、楽しめているかなと思います。
――IT関連の仕事の経験はこれまでなかったそうですが、就職のためにどんな準備をされましたか?
かなとさん: プログラミングの勉強を始めたのは昨年末。最初は簡単な占いゲームアプリを、プログラミング言語で製作しました。今年に入って就職支援会社に相談、2月に面接を受けて、3月に内定をいただくという流れでした。
――スピード内定でしたね、クローン病のことは面接時に伝えましたか?
かなとさん: 一次面接で伝えました。どんな病気かは知らなかったようですが、持病を抱えながら働く社員が在籍しているとのことで、担当者から「採用した場合、どんな支援が必要かを教えてほしい」と聞かれました。今は症状が落ち着いていますが、何かあってもサポートしてもらえる環境があるようで、安心感があります。
「教える」の基礎は、サッカーコーチとファストフード店のアルバイト経験
――誰かに教える、という経験も初めてなんですよね?
かなとさん: プログラミングを教えるのは初めてですが、20代の頃に子ども向けのサッカー教室のコーチをしていたことがあります。実はこれ以外に、治療などで一時辞めていた時期もありますが、約12年続けていたアルバイトがあって、その時の経験がすごく生かされているなと感じています。
――そのアルバイトとは?
かなとさん: 某大手ファストフード店のアルバイトです。接客の基礎、コミュニケーションの取り方などを教わっただけでなく、アルバイトでしたが、店長になるための研修の一部を受けていました。そうした経験があったので、初めてのことでも何とか対応できていると思います。
クローン病とわかってからは、さすがにフライドポテトは控えて、調子のいい時にハンバーガーとドリンクは食べていましたよ。
闘病がきっかけで読書好きに、初心に返るための1冊と出合う
――読書が好きとお聞きしました。何かきっかけはありましたか?
かなとさん: クローン病になる前は、「少年ジャンプ」中心で、いわゆる書籍とはほぼ無縁でした(苦笑)。
中学2年で始めたギターの作り手になりたいと、楽器製作の専門学校に進学しましたが、入学して間もなく、クローン病を発症。治療優先で、専門学校を数か月休むと授業についていけないレベルになってしまい、自主退学しました。
その後、治療で服用したメサラジンの副作用で急性膵炎に。この時はかなりつらい痛みでした。このままでいいのか、10年後に社会復帰できるのか、などいろいろ考え始め、ちょっとした「覚醒」が起こりました(笑)。それから、ビジネス書などを読むようになりました。
年に1度は読み返すようにしている本は、『7つの習慣』です。あの時よりはつらくない、初心に戻ってがんばろう、と思えます。
「不良患者」をやめて食生活見直し、睡眠はしっかり
――現在は食事療法のみということですが、他に気を付けていることはありますか?
かなとさん: 18歳での入退院後、遊びたい・食べたい願望が抑えられず、バンド仲間とラーメンや焼肉を食べに行くなど、「不良患者」と言っていいほどの食生活だったんです。脂っこいものを食べた翌日は1日絶食とか、ひどいですよね。
――体調はどうでしたか?
22歳で痔ろうに…。この時は外科手術を受け、ヒュミラを勧められましたが、以前のメサラジンの副作用がどうしても気がかりで、使用しないことにしました。この選択をした時、「暴飲暴食はもうダメだ!」と気持ちを改め、食事に気を付けるようになりました。とはいえ、料理が得意なわけではないので、白いご飯とおかずを少しにするとか、そういうレベルです。
他には、睡眠でしょうか。6時間以下の睡眠が数日続くと調子が悪くなるので、しっかり寝るようにしています。
諦めなければ、一度諦めたことでも実現できる
――いろいろな葛藤や困難を1つずつ乗り越えてきた経験は、IBDと診断を受け、これから治療を始める人にとって参考になりそうですね。
かなとさん: 「優等生」な患者ではないし、長く定職に就いてこなかった僕みたいな生き方が、がんばり過ぎずに病気と向き合うという意味で(笑)、誰かの役に立つのではと思って、これまでの経験をYouTubeなどで発信しています。
体調が急に悪くなってアルバイトを休むと、「急に休めていいよね」と言われたり、SNSのDMで小言を言われたり、つらい経験もありましたが、時間が解決してくれました。
あくまで自分の考えとして発信し、「こういう考え方もあるのか」「細かいことを気にし過ぎなのかな」と、気付きにつながり、気持ちが楽になってくれる人がいたらいいなと思っています。
――IBD患者さんに他に伝えたいことはありますか?
かなとさん: 納得できない治療なら主治医としっかり話をするなど、不安を解消しながら治療を進めていくのがいいと思います。そしてもう1つ。諦めない夢と目標を持ち続けていれば、遠回りをするかもしれないけど、目標に近づく方法はあるはず、ということでしょうか。
かしこまった感じは苦手なので、時間が許す方は、YouTubeなどをのぞきにきてください!
(IBDプラス編集部)
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