新卒IBD患者さんの「就活」事情-職種選び、病気の伝え方は?

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今回のIBD患者さんは、潰瘍性大腸炎の患者さんで現在大学4年生の「わけん」(Twitterハンドルネーム)さんです。自動車販売店への就職が決まっており、来年春から新社会人として働く予定です。

これから就職活動(以下、就活)を本格的に始める予定の学生のIBD患者さんの中には、職種選びや病気のことを企業にどう伝えたらいいかわからず悩んでいる人もいるかもしれません。そこで、半年前に就活を終えたばかりのわけんさんに、コロナ禍での就活をどのように進めたのか、病気に関する企業とのやりとり、潰瘍性大腸炎発症後の学生生活で気を付けたことなどを話していただきました。

わけんさん(21歳/潰瘍性大腸炎歴2年)

1999年生まれ、山口県出身。現在、山口県内の大学の経済学部4年生で、「労働」に関するゼミに所属。潰瘍性大腸炎の発症・診断は大学1年生で2019年1月頃。趣味はモータースポーツ観戦と音楽。
Twitter : KentakeWadapyon

自動車の販売・営業職志望で臨んだオンライン就活

――就職活動をいつ頃から始めたのか、どのような企業にエントリーしたのかを教えてください。

わけんさん: 就活を始めたのは大学3年の終わり、2021年1月頃でしたので、周りに比べると就活を始めた時期は遅い方だったかもしれません。幼い時から車が大好きだったので、自動車関連の業種で考えつつ、「人とかかわることが好きだな」と思っていたので、営業や販売の仕事を目指すようになりました。ほかに、スーパーなど小売関係の企業も含めて約20社にエントリーしましたが、ほとんどが中規模の企業でした。

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――2021年1月といえば、日本では新型コロナウイルス感染症の第3波の時期ですが、採用試験はどのように行われましたか?

わけんさん: ほとんどの企業で、エントリーから面接までオンライン対応でした。(内定をいただいた企業の面接は本社まで行きました。)地方都市に暮らしているので、面接のたびに遠方まで行くことが少なく済んだ点は良かったですが、実際に会わないことによる不安はありました。オンラインでのアピールはすごく難しかったのですが、話すときに声のトーンを上げたり、カメラ目線で会話するなどの工夫をしました。友人に面接の練習に付き合ってもらったこともありました。

全社の履歴書に「潰瘍性大腸炎」を明記、ポジティブな対応の企業が多かった

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――潰瘍性大腸炎について、どのように企業に伝えましたか?

わけんさん: 全社分の履歴書に潰瘍性大腸炎であることを明記し、提出しました。企業によっては病気のことを調べてくださっていたり、面接時に病気のことを質問されたりしました。IBDではない他の病気を抱えながら働く社員さんが在籍する企業では、福利厚生の制度についても詳しく紹介してくださいました。予想していたよりも病気のことに対してポジティブな対応をしてくださるところばかりで、その点は心強かったです。

――「営業職」はノルマがあったり、ハードワークも予想されますが、潰瘍性大腸炎に配慮した働き方について、企業に何か確認したことはありますか?

わけんさん: 内定先の企業の人事担当者に聞いた話では、明確なノルマはないということでした。営業職を希望するにあたり、病気のことを考えはしましたが、幸い2年以上寛解を維持できていることもあり、ネガティブにならず、むしろ「人と接する」という自分の希望に合う職種で就職活動をすることにしました。

4月には本命の1つとしていた自動車販売会社から内定をいただくことができましたので、今は卒業論文を必死になって書いているところです(笑)。

発症・診断直後に3か月入院…、退院後はほぼ体調を崩さず寛解維持

――寛解が続いているということですが、潰瘍性大腸炎を発症したのはいつでしたか?

わけんさん: 2019年1月、大学1年の冬です。突然、強いお腹の痛みを感じました。最初は食あたりかと思って近所の病院を受診しましたが、「感染性の胃腸炎だろう」と診断され、薬をもらいました。ところが、全然良くなる兆しがなく、1日に何度もトイレに行くような状況が続いたため、改めて病院を受診して検査を行った結果、潰瘍性大腸炎と診断されました。

――その後の治療経過はいかがでしたか?

わけんさん: 約3か月間入院しました。最初の1か月ほどは自宅から近い病院でしたが、症状が改善しなかったので、自宅から車で1時間ほど離れた大学病院を紹介され転院しました。5-ASA製剤やステロイドなどを含むいくつかの治療薬を使用しましたが、最終的にはリアルダとヒュミラで体調を維持できるようになり、今も継続して服用しています。

――その後の治療経過はいかがでしたか?

わけんさん: 退院後は、自分自身の健康に対する意識を変えて、できるだけ低脂質な食事を心がけました。一緒に暮らす家族もいろいろ気遣ってくれましたが、自分が調子の良いときは、あまり気にし過ぎず揚げ物を一緒に食べることもありました。

友人に病気のことをどう伝えるか悩みましたが、きちんと話をして、揚げ物などの脂質の高いものがあまり食べられないことなども伝えました。結果として、一緒に食事に行く場面では必ず何が食べられるかを聞いてくれるような関係になれました。

過度な気遣いは逆にストレスが溜まり、体調にも影響すると思うので、食事についてもそれ以外のことについても「ほどほどに」気を付けるようにしました。退院以来、寛解状態を維持できているのは、周囲の理解も大きいですが、自分自身がストレスとうまく付き合えたことも要因の一つかなと思っています。

病気だからと引きこもらず、積極的に多世代とコミュニケーション

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モータースポーツ観戦のためにしばしばサーキット場へ

――音楽や車が大好きと伺いました。ストレスをコントロールする上でもポイントになりましたか?

わけんさん: コロナ流行以前は、よく音楽ライブやサーキット場に行くなどしていました。大好きなことを考えている時間は、病気のことを忘れて没頭できるので、改めて趣味を持つことの大切さを痛感しました。病気のことをあまり気に留めず、深く考え過ぎないようにすることが、ストレス軽減につながったのかなと思います。

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大好きなアーティストのファンと集まって一緒にライブ観戦

――趣味を通じて、さまざまな世代の人と交流を持っているとも伺いました。

わけんさん: 同世代から年の離れた人まで、趣味を通じてさまざまな年代の人と交流を持つことができました。大学生になるまで実はすごく口下手で、人見知りをするタイプだったのですが、大学への入学をきっかけにさまざまな方とお話しする機会が増えました。今の自分があるのは、病気発症後も落ち込むことなく、たくさんの人とコミュニケーションをとってきたおかげと言えるかもしれません。

――就職活動においても、そのコミュニケーションがプラスになりましたか?

わけんさん: それがなければ営業職を志すことはなかったかもしれないし、病気ともうまくつきあえなかったかもしれません。コミュニケーションをとることは社会人になっても大切なことだと思うので、これまでの経験がとてもプラスになりました。

――最後に、同じIBDの患者さんにメッセージをお願いします。

わけんさん: 正直この病気の診断が出たときはショックでした。しかし、SNSを通じて同じ病気を持つ方たちのお話を聞いてたくさん励まされたし、何よりみなさんがとにかくポジティブだったことに感銘を受けました。今ではこうして前向きに考えられるようになりましたが、発症当時は症状が酷かったこともあり、なかなか病気のことを受け入れることができませんでした。でも、病気になってから学んだことは多かったし、病気になったからこその出会いも多くありました。感謝してもしきれないし、病気を経験したことで、より人として成長できたような気がします。

今回は就活がテーマでしたが、きっと企業のみなさんも病気のことは理解してくれると思うので、安心して就活に臨みましょう。思い通りにいかなくて落ち込んだり、ストレスに感じることもあるかもしれませんが、時には嫌なことをすべて忘れて、好きなことに思い切り時間を使ってみてください。悩み事は決して1人で抱え込まず、周りの誰でもいいので相談してくださいね。最後に、みなさんのこれからのご活躍を心から祈っています。

(IBDプラス編集部)

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