仕事も、IBD患者会も「耕して、育んで、豊かに」-長崎IBD会長の想い

五十嵐さん

離島が多く、活火山の雲仙岳を有する長崎県で、県職員として土壌改良に携わる傍ら、長崎IBD友の会「ユアジール」を運営する五十嵐総一さん。潰瘍性大腸炎歴約20年になります。五十嵐さんが患者会運営を始めたのは2年前のこと。「土づくりとIBDには共通点があり、潰瘍性大腸炎も“必然”だったのかも」と五十嵐さん。その真意とは?

五十嵐総一さん(34歳/潰瘍性大腸炎歴約20年)

1987年生まれ、長崎県出身。潰瘍性大腸炎の症状は15歳(中学3年)の秋に始まり、診断確定は17歳(高専2年)の秋。高専卒業後、佐賀大学農学部へ編入学。23歳で国家公務員Ⅱ種に合格し、29歳で長崎県庁職員に転職。土壌医1級。長崎IBD友の会「ユアジール」会長、NPO法人長崎県難病連絡協議会 理事、九州IBDフォーラム理事などを兼任。患者会の情報はこちら

学生時代から一貫して農業の道、土づくりエキスパートの公務員

――現在の仕事は「土壌改良」とのことですが、具体的にはどんなことをされていますか?

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五十嵐さん: 今日は大量のブロッコリーを収穫してきました! 長崎県では近年ブロッコリー栽培に力を入れているのですが、長崎の気候や土地の条件に合う土づくりについて、県の試験場で日々研究しています。

有機質資材などを利用し、化学肥料をできるだけ使わない、環境にやさしい土づくりのノウハウを開発して、農家さんに還元する、そんな仕事です。

――「土壌医1級」の有資格者とお聞きしましたが、どのような資格なのでしょうか?

五十嵐さん:: 5年以上の土づくり等の取組実績、作物生育等の改善指導ができるレベルにあることが条件で、さらに筆記試験に合格すると得られる資格です。実は、長崎県では初の土壌医なんです。県職員の前は、農林水産省の機関で肥料と飼料に関わる仕事に従事。国立高等専門学校(高専)、大学でもバイオテクノロジー(生物工学)を専門とし、仕事でもずっと農業に携わってきました。

――屋外での農作業も多いようですが、現在の潰瘍性大腸炎の症状はいかがですか?

五十嵐さん: 4年前、大腸全摘の一歩手前のような深刻な症状の悪化があり、4か月ほど休職しましたが、その後は現在に至るまで寛解を維持できています。作物を収穫したり、畑を耕したりと重労働はありますが、好きなことに関われていることもあり、調子はいいですよ。

再燃を繰り返した学生時代、「我慢強さ」が裏目に

――潰瘍性大腸炎を発症したのは中学3年生だったそうですね。

五十嵐さん: 中学3年生の秋頃から痛みを感じ始めました。ですが、まずは受験を突破しなくてはと、我慢して耐えていました…。1月頃にはトイレの回数もすごく増えたのですが、高専の受験と合格発表が終わった2月下旬、ようやく病院に行きました。はっきり「潰瘍性大腸炎です」とは言われず、薬を飲んで1か月ほどで症状が治まりました。

――高専時代の潰瘍性大腸炎の症状はどうでしたか?

五十嵐さん: 高専2年の秋、夜中に出血し、急に体調が悪化。中3の時と同じ病院で検査を受け、潰瘍性大腸炎と診断されました。ペンタサや一時的にステロイドによる治療を受け、3か月ほど経つと症状が落ち着きました。高専3年の時は、剣道部の試合前に再燃。高専4年の時は、修学旅行前日に再燃。修学旅行はどうしても行きたかったので、痛さを我慢して参加しました…。行先は東京でしたが、原宿を歩きながら買い物を楽しむのではなく、トイレを探し続けていたのを覚えています(苦笑)。

学校では友人1人にしか病気のことを打ち明けておらず、先生にも伝えていませんでした。また、「1度症状が出ても、2~3か月我慢して耐えれば症状が落ち着く」の繰り返しだったので、あまり深く考えず、何とかなるだろうと思っていました。

当時は、今のようにインターネットでIBDのさまざまな情報を簡単に調べられるような環境ではなかったため、治療についての正しい情報をあまり知りませんでした。

自分自身の後悔から患者会再設立へ、「発症して間もない患者さんを支援したい」

――患者会「ユアジール」(yourZEAL)を運営することに至った理由を教えてください。

五十嵐さん: 「再燃・耐える」を繰り返した苦い経験から、もっと他のIBDの患者さんにアドバイスを聞いていたら、繰り返す再燃を防げたのではないかと思うことがありました。

4年前に休職した際、落ち着いたらやってみたいことをいろいろ考えました。IBDは若年発症の患者さんが多いですが、若い患者さんほど、かつての私と同じように、他の患者さんの声に耳を傾ける機会が少ないのではないか…そんな考えから「若い患者さんを支える患者会」の必要性を意識するようになりました。

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――それまで長崎県にIBD患者会はありましたか?

五十嵐さん: 長崎県には「ほぼ休眠」状態の患者会と、会長さんの仕事の都合で運営が難しい状態に陥っていた患者会の2つがありました。前任の会長さんや長崎県難病連絡協議会とも相談して、運営が難しくなっていた患者会を私が引き継ぎ、2019年に「ユアジール」として再設立しました。それに伴い、知り合いに紹介してもらったデザイナーにロゴマークを作成してもらいました。

――「ユアジール」という名前の由来を教えてください。

五十嵐さん: ZEAL(ジール)は、日本語で「熱意」「努力」を意味します。外からは見ることができない痛みに耐えているIBD患者さんの思いを結集させたい、という願いから名付けました。

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――患者会オリジナルのTシャツを作成されたそうですね。

五十嵐さん: コロナ禍でリアルなイベント開催などが難しい期間、どのようにして患者会の認知を広めるかを考え、身に着けられるグッズを作成することになりました。ロゴ入りTシャツを作成したのですが、病院に着て行けるよう、ファッションに馴染むデザインにしてもらいました。Tシャツを着用した会員が病院を受診することで、同じ病気の患者さんや医療関係者に気づいてもらう。外見からIBDの関係者とわかるようすることがはじめの一歩だと考えました。このほかにも、いろいろな企画を検討中です。

農業も、患者会も、大切なのは「サステナブル」

――五十嵐さんの行動力で、長崎のIBD患者さんを取り巻く環境が変化しそうですね

五十嵐さん: 患者会運営は「その人ありき」ではなく、人が変わっても「サステナブル(持続可能)」であることが大切。現在、ユアジールの副会長は20代のクローン病患者さんが担ってくれています。

話は変わりますが、土壌改良とIBDの共通点、何かわかりますか? 答えは「微生物」です。腸には腸内細菌が生息していますが、土壌中にも多くの微生物が生息しています。患者会にはサステナブルが大切だと話しましたが、農業においてもサステナブルが大切です。こうして考えてみると、私が潰瘍性大腸炎患者であり土壌改良に携わっていることは、ある意味必然だったのではと思います。

長崎の農業も、IBD患者会も、“耕して、育んで、豊かに”なっていってもらえたらと願っています。

――最後に、同じIBDの患者さんへ一言お願いします。

五十嵐さん: 長崎にお住まいのIBD患者さんを知っていたら、ぜひ「ユアジール」を紹介していただきたいです。よろしくお願いいたします!

(IBDプラス編集部)

長崎IBD友の会 ユアジール

    
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長崎県のIBD患者会。会員数11人(潰瘍性大腸炎・クローン病・過敏性腸症候群の当事者が計8人、2021年11月時点)。これまでの主な活動は、長崎県難病相談・支援センターでの定期的な交流会(長崎市、佐世保市)、調理実習会など。 九州内のIBD団体と連携し、全域に支援を行う「九州IBD」にも所属。
患者会ホームページ : https://nagasaki-ibd-yourzeal.jimdofree.com/

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