もっと自由に、自分らしく―難病系フリーランスオカンの歩む道

仕事・はたらく2019/7/1

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くわっちさん

今の時代、共働き、離婚、シングルでの子育ては、決して珍しくありません。また、多様な働き方も受け入れられるようになってきました。今回は、IBDプラスチャットでもおなじみ、難病系フリーランスオカンこと、くわっちさんに、山あり谷ありの人生と、苦難をパワフルに乗り越える秘訣について伺いました。

くわっちさん(25歳、潰瘍性大腸炎歴11年)

中学2年生のときに症状が出始め、高校入学と同時に潰瘍性大腸炎の確定診断を受け入院。その後、食品加工会社の工員やバーテンダーなどさまざまな職業を経て、フリーランスで在宅ライターの仕事を開始。シングルマザーとして、3歳の娘さんの育児にも奮闘中。

中学2年生の頃に発症。母との確執が大きなストレスに

――最初に、潰瘍性大腸炎と診断された頃のお話をお聞かせください。

くわっちさん: 中学2年のときに腹痛や下痢が続き、母が看護師として働いている近所の診療所で診てもらいました。しかしその時には、「多分風邪だろう」と母が伝えていたこともあって、精密検査などは受けませんでした。その後、高校進学と母の再婚を機に、瀬戸内海の島から本州に引っ越したのですが、その家の近くに大腸に詳しいクリニックがあったのです。そのクリニックで内視鏡検査を受けたところ、「潰瘍性大腸炎の疑いが強い」と診断されました。近くの総合病院へ紹介状を書いてもらい、不安な気持ちを抱えたまま高校生になりました。

高校の入学式が終わり、数日後に紹介先の病院で検査をしてもらう予定だったのですが、入学式直後から40度の高熱が3日間も続き、腹痛もおさまらず、トイレの前の廊下に布団を敷いて、トイレと布団を行き来するような状態が続きました。結局、検査予定日の1日前に耐え切れなくなり、紹介された総合病院を受診することに。内視鏡検査の結果、潰瘍性大腸炎との確定診断がつき、即入院となりました。結局そのまま2週間入院しましたね。

潰瘍性大腸炎の原因はまだ明らかにされていませんが、私の場合、体調を崩した原因に「家族との関係」が、多少は影響しているかもしれません。というのも、小学校高学年の頃から、母と意見が食い違うことが多くなり、進学する高校も、「引っ越し先と近いから」という理由で、母が勝手に近所の商業高校に決めてしまったんです。それに加えて、高校進学のタイミングで母が再婚し、さらに引っ越しで環境が劇的に変わったことが、ストレスというか、心身の負担になったのではないかと思います。一方で、潰瘍性大腸炎だとわかったときは「やっと自分のよくわからない腹痛に名前がついた」という、不思議な安心感がありました。入院時にこんなことを思うのは変かもしれませんが、ベッドの上で「原因も対処法もわからないまま2年も闘っていた腹痛や下血に、きちんとした名前があった。風邪でも、仮病でも、気のせいでもなかったんだ…!」と、心底ホッとしたのを、今でもはっきりと覚えています。

――高校に入学してすぐに潰瘍性大腸炎と診断され、学校生活との両立は大変だったのではないですか?

くわっちさん: 高校1年の6月になっても症状が落ち着かなかったので、「GCAP(顆粒球吸着療法)かステロイド内服治療のどちらかを始めた方が良い」と、主治医からお話がありました。GCAPはステロイドに比べて副作用が少ない分、3か月くらい通院する必要がありましたが、学校の先生に相談し、協力してもらいながら治療を続けました。

高校では文芸部に所属していました。2年から部長になったのですが、私に何があってもいいように、副部長を2人体制にしてサポートしてくれました。トイレには頻繁に行っていましたが、活動拠点の図書室の前にあまり使われていないトイレがあり、使いたい放題でしたね(笑)。その後は入院することもなく、とても楽しい高校生活を送ることができました。

さまざまな仕事を経験、そして結婚、妊娠、出産…

――高校生の頃、「この仕事に就きたい!」というような夢はありましたか?

くわっちさん: “書く”ことが大好きだったので、文章に関わる仕事がしたいと思っていました。また、デザインの授業で評価されたことがあり、そんな仕事も楽しそうだなと…。でも、「実家を出たい!」という気持ちがとにかく強かったので、寮のある仕事や県外の仕事を探していました。そんな中、食品加工会社の事務員として就職が決まっていた友人が、「人手不足」ということで、私を紹介してくれたんです。寮もあったので、実家を出て、そこの工場で工員として働くことに決めました。

――面接などで、潰瘍性大腸炎だということは伝えましたか?

くわっちさん: 正直に伝えましたが、特に何も言われませんでした。職場の人に病名を言っても、「ふーん」という感じでしたね(笑)。トイレに行く回数が多かったので、「お腹が弱い子」くらいの認識だったのかもしれません。その後しばらくして退職し、当時交際していた彼氏の家で同棲生活を始めました。

――その頃はどのような仕事をされていましたか?

くわっちさん: アミューズメント施設のホールスタッフの仕事です。この時も、履歴書にはきちんと病名を書きましたが、とにかく人手不足だったらしく、問題なく採用されました。ただ、立ち仕事だったので、最初は体力が続かず…週3〜4日くらいしか働けませんでしたね。でも、潰瘍性大腸炎の方は実家を出てから寛解状態になり、薬も飲んでいませんでした。「病院には行かないといけない」とわかっていながらも、自覚症状がないのをいいことに、足が遠のいていました。そんな中、彼氏と1年半くらいで別れて一人暮らしを開始。それからもしばらく何事もなく過ごしていましたが、20歳を迎えた春に、ふと、高校1年の春に入院したときのことがフラッシュバックのようによみがえったのです。それを機に徐々に体調が悪くなり、腹痛や下痢が続くようになりました。「思い出しただけで再燃?」と思われそうですが、それまでは焼き肉を食べても平気だったのにゼリーしか食べられなくなり、3か月で10kgもやせてしまいました。結局、体調はいつまで経っても良くならず、ホールスタッフの仕事を辞め、体力的に負担の少ないバーテンダーの仕事に転職しました。

――大変でしたね…。でも、その翌年に結婚、同じ年の6月には女の子を出産されていますね!ご主人やそのご両親は潰瘍性大腸炎であることをご存知だったのでしょうか?

病気のことは交際する前から話していましたが、夫と義母はあまり気にしていない様子でしたね。義父はとても心配していましたが。妊娠前から血便があり、つわりもひどかったので、バーテンダーの仕事は辞め、ずっと寝ていました。産婦人科に行った際に潰瘍性大腸炎のことを相談しましたが、特別な検査や治療をすることもなく、普通に出産しました(笑)。

「難病のシングルマザー」というポジティブな生き方

――ライターの仕事をするようになったきっかけを教えてください。

くわっちさん

くわっちさん: 妊娠中に、ベビー服の通販に関する在宅ライターの仕事を見つけました。高校時代に文芸部で小説を書いていたので、その経験を生かせると思い、出産してから本格的に始めました。出産後に一度ライターを辞めて看護助手の仕事に就きましたが、業務がつらく、人間関係がうまくいかなかったこともあって、その後、退職しました。このときに悪くなった具合はそのまま回復せず、2017年7月から8月にかけて、3週間も入院することになってしまったんです。私の場合は、人間関係のストレスが、体調に影響を与えているのかもしれないと、この時も思いました。入院中は、義母が子どもの面倒を見てくれたのですが、子どもの動画をしょっちゅう送ってくれて、それが心の支えでしたね。

退院後、すぐにライターの仕事を再開したかったのですが、まずは体調の回復を最優先にしました。2017年に始めたブログやTwitterを徐々に活性化させながら、ライターの仕事も少しずつ増やしていきました。一方、ゲーム好きの夫とは、子どもが生まれてからすれ違いが多くなり、最終的には離婚しました。今は子どもと三重県に移住し、寛解維持しながら過ごせています。直近の目標は、「IBD子連れオフ」を開催することですね。私を含め、患者会に参加したくても、「子どもが騒いだらどうしよう…」と、気後れしてしまう人って、たくさんいると思うんです。そんなママさんたちで集まったら、きっと楽しいですよね!

「やってみる」「自分らしく」をモットーに、無理しない生き方を

――それでは最後に、IBD患者のみなさんにアドバイスやメッセージをいただけますでしょうか。

くわっちさん: フリーランスで仕事を始めたい人は、まず「やってみる」ことが大切だと思います。文章を書く、プログラミングをする、ゲームを開発するなど、自分の好きなことや興味のあることでスキルアップを目指すのがよいのではないでしょうか。私もプログラミングを知り合いに教わりながら、ブログのメンテナンスをしています。趣味でもいいから、まず始めてみて、わからなければ知っている人に聞いてみましょう。最近になってよく思うのは、「自分はひとりじゃない」ということ。助けは必ずどこかにあるし、知らないところで自分のために誰かが動いてくれていることもあります。まずは無理せず、肩の力を抜いて、自分らしく進んでいきましょう。

(取材・執筆:眞田 幸剛)

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