大学卒業直後に潰瘍性大腸炎に―24歳女の子が思う、病気と仕事と恋愛とは?

ライフ・はたらく2019/10/4

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うにちゃん

設計に関わる仕事に就くという夢を叶えるために大学で建築を学び、その夢を実現させるために建築業界で第一歩を踏み出そうとした矢先に潰瘍性大腸炎と確定診断を受けた「うにちゃん」。それまで病気とは無縁だったうにちゃんが、病気と仕事、趣味、恋愛と、どのように向き合いながら、社会人としての2年間を過ごしてきたのか。じっくりとお話を伺いました。

うにちゃん(24歳/潰瘍性大腸炎歴2年)

大学で建築を学び、卒業直後に潰瘍性大腸炎の確定診断を受ける。設計に関わる仕事に就くことを目指してリフォーム会社に新卒入社。その後、転職し、現在は不動産会社で設計業務に携わる。趣味は、美術館・展覧会巡り、楽器演奏、アニメ鑑賞など。

社会人を目前にして、潰瘍性大腸炎と診断される

――初めに、潰瘍性大腸炎と確定診断を受けた頃のお話について、お聞かせください。

うにちゃん :大学で建築を勉強しており、4年生のときの卒業課題の制作期間にかなり身体に負担をかけてしまいました。1月が課題提出の期限だったのですが、それに間に合わせるために12~1月は徹夜で取り組んでいて…。夕食を食べているときに寝てしまう、ご飯の味がわからなくなるなど、自分を追い込んでいました。そのタイミングで下血が始まったのですが、忙しさを理由に放置してしまったんです。父も祖父も建築系の仕事をしており、私も設計に関わる仕事を志していたので、そのときは課題を完成させたい一心でした。

無事に卒業課題を終えて、卒業式を控えていた2月頃、母から病院へ行くように言われ、近所にある胃腸内科で内視鏡検査を受けました。そのとき、「潰瘍性大腸炎」と診断されました。

――医師から潰瘍性大腸炎と告げられ、どのように思いましたか?

うにちゃん :体調がとても悪かったこともあって、病名を聞いてもピンとこず、あまり難病という実感がありませんでした。そのため、ショックもそんなに受けませんでしたね。その後に潰瘍性大腸炎のことを調べてみると、難病で完治が難しく、発症原因も不明だと知りました。

当時はインターネットで上手く情報を探せずSNSを使う発想も無かったので、家族が一緒になって、本などで勉強してくれました。当時も今も実家に住んでいるのですが、家族は「トイレに行きたかったら、何回でも行っておいで!」という感じで、過剰に反応することもありませんでした。そこに家族の優しさが感じられて、とても嬉しかったです。食事には、とても気を使ってくれましたね。脂っこいものを減らして、脂質を抑えるような食事にしてくれました。特に豆腐料理は、体調が悪いときでも食べやすかったです。

――ご家族以外、例えばお友達には潰瘍性大腸炎であることを伝えましたか?

うにちゃん :はい。体調が悪いときに約束をずらしてもらったり、会っているときに体調が悪くなったりすることもあると思ったので、親しい友達には潰瘍性大腸炎であることを伝えています。

「一級建築士」という夢に向かって

――入社直前に診断されて、会社には病気のことを伝えたのでしょうか?

うにちゃん :入社前に診断結果をメールで人事に送りました。入社後すぐに2か月間、長期研修で一人暮らしをすることが決まっていたので、病気のことは事前に報告した方がよいと考えたからです。

――潰瘍性大腸炎になってすぐに2か月間の一人暮らしなんて、不安も大きかったのではないでしょうか?

うにちゃん :そうですね。なので、通っている病院の先生に一筆書いてもらい、病状が悪化したらどの病院でもすぐに診てもらえるようにしました。薬はステロイドとペンタサを持って行きました。

一人暮らしをしている間は、ささみなどを中心に、食事はなるべく自炊しました。同期に食事へ誘われることもありましたが、半分くらいは断ってしまいましたね。ただ、お酒を飲むことは好きなので(笑)、自分の体調と相談しながら、大丈夫そうなときは参加して、食べられるものだけ食べて、お酒も飲んでいました。同期には病気のことを話していませんでしたが、幸い、病院に行かなければならないようなことにはなりませんでした。

――転職を経験されたとお聞きしていますが、最初の会社ではどのような仕事をされていましたか?

うにちゃん :最初は、リフォーム会社で営業をしていました。頻繁に工事現場へも行きますし、体育会系の仕事でしたね(笑)。入社して半年くらいで、風邪の悪化から体調を崩し、下血しました…。辛かったのですが、長期休暇は取らずに有給の取得だけで対応するような状態で、点滴を打ってから出社した日もありました。

――潰瘍性大腸炎に対して、上司の理解は得られていましたか?

うにちゃん :症状がわかりやすいように「お腹が弱い」と言っていたので、営業同行で外出したときは「トイレ大丈夫?」と心配してくれましたし、検査がある日などは、きちんと報告するように気を付けていました。土日は仕事でしたが、平日に自由に休みが取れるので、無理なく通院もできていましたね。ただ、人間関係などの悩みもあって、転職することにしました。

――どんな部分を軸に、転職活動を行いましたか?

うにちゃん :身体に負担のかからない事務職なども考えましたが、やはり建築、特に設計に携わりたかったので、不動産会社の設計職へ2018年秋に転職しました。実は営業職を経てからの異動が条件で、設計職ではまだ新人なので自分の案件は持っていないですが、自分の考えたものが形になる設計の仕事に、やりがいを感じています。

転職活動中に、母の勧めで患者会に初めて参加しました。その時に、「体調が良ければ、潰瘍性大腸炎のことを面接時に言う必要はないよ」とのアドバイスをいただいたので、病気のことは特に言わずに転職活動をしていました。

――実際に転職してからは、病気のことを会社に伝えましたか?

うにちゃん :体調も良かったので、最初は伝えていなかったんですが、健康診断書を提出しなければならなかったので、その際に人事と上司に報告しました。「無理があったら言ってね」と声をかけてくれました。今は隣の席の社員にも潰瘍性大腸炎だと伝えていますので、食事に誘われたときでも無理そうだったら断れますし、「脂っぽくない魚料理だったら行けますよ!」と返すこともでき、とても楽になりました。

――仕事の中で工夫されている点や目標があれば教えてください。

うにちゃん :仕事と同じように、自分の体調も上司に報告するようにしています。一級建築士を目指していますが、難易度が高いと聞いていますので、計画的に受験しようと考えています。勉強のために学校に通うことも考えていますが、そこでプレッシャーを感じてストレスが溜まらないように気を付けていきたいです。そして、ゆくゆくは、大学の同級生と一緒に仕事をできたらいいなと…。漠然としていますが今の仕事に限らず、クリエイティブな仕事にチャレンジしていきたいです。

恋も、趣味も、全力で楽しみたい!

――現在の通院状況や医師との関わり方を教えてください。

うにちゃん :今の職場は水曜休みなので、しっかり通院できています。先生はとてもフランクな方で、薬に関するアドバイスや、どんな治療をしていくかなど、相談しながら進めてくれます。そのおかげもあって、現在は寛解状態です。2019年の4月も体調を崩しましたが、今はほとんど出血もありません。体調を崩すと熱だけのときもあるし、下血だけのときもありますが、私はどちらかというと腹痛は少ない方だと思います。食事には気を付けているので、腹痛を予防できているのかもしれません。でも、思いっきり食べたり飲んだりしたいときもあるので、休みの日にスイーツビュッフェに行くなら、その後は予定を入れないなど、腹痛が来ても大丈夫なように、万全な状態で楽しんでいます(笑)。

――SNSでご自身のことを発信されていますが、SNSをやっていてよかったと思う瞬間はありますか?

うにちゃん :SNSで自分のことを発信して、コメントをもらったり、いいねをもらったりすると、素直に嬉しいですね。患者会だと参加するために日程の調整が必要ですが、SNSは同じ境遇の方と気軽につながることができます。患者さん向けのイベントにも、タイミングが合えば参加したいなと思っています。

――旅行も楽しまれているようですが、心配なことはありませんか?

うにちゃん :一緒に行く友人には潰瘍性大腸炎のことを言ってありますので、特に心配なことはありません。先日は一人で京都へ行って、現地で前職の同期や、大学の友人に会ってきました。夕食を一緒に食べる約束をしていたので、朝昼の食事は調節して、お腹を整えました。

あとは、美術館にもよく行きます。トイレもちゃんと完備されているので、不安はないです。あと、ライブにもよく行くのですが、始まる前は食事をあまりとらないようにして、ドリンクも気を付けておけば大丈夫です!ただ、屋外フェスはトイレで並んだり、そもそも数が少なかったりと不安が多いので、誘われても行かないようにしています。

私自身、高校の同級生とやっているコピーバンドで、ドラムを叩いたりもしています。年に1回くらいはスタジオを借りて、みんなで集まって演奏していますね。やりたいことは我慢しないで、試しながら徐々に慣らしていく感じです。最初は外食もできなかったのですが、最近では約束があれば調整して行けるようになりました。

――潰瘍性大腸炎やクローン病と診断されてから、恋愛や結婚に対して消極的になる方も少なくありません。うにちゃんは恋愛や結婚について、どのように考えていますか?

うにちゃん :潰瘍性大腸炎になって1か月後くらいに、お付き合いを始めた彼がいます。当初は、「彼女が病気だったらイヤだろうな…」と、何も言わずに元気な彼女を演じようと思っていました。でも、悩んだ結果、思い切って彼に打ち明けることにしたんです。すると、彼は本を買ってきて、潰瘍性大腸炎について勉強してくれました。潰瘍性大腸炎になった当時、彼が本当に大きな支えになってくれたので、いつか恩返ししたいと思っています。マジメな人なので、状態が良いときに脂っこいもの食べようとしたら「食べて大丈夫なの?」と、逆に心配されることもありますね(笑)。

恋愛に消極的になっている人の中には、病気の理解を得られなかったなど、つらい経験をお持ちの方もいるかと思います。そのことはとても辛いと思いますが、そこで立ち止まらないで欲しいですね。きっと、一緒にいるだけで病気の痛みを忘れさせてくれたり、一緒にいられてよかったと思えるような相手が見つかると思います。

リスクはみんな同じ。病気になった自分を悔やむのではなく、できることを精一杯頑張りたい

――最後に、同年代のIBD患者さんや、発症して間もない患者さんへメッセージをお願いします。

うにちゃん :潰瘍性大腸炎になってから「いつ急に動けなくなるかわからない」と考えるようになりました。学生のときは、そんなことを考えたこともありませんでしたから(笑)。健康な人でも、ある日突然働けなくなるリスクはあります。私はそれに早く気付くことができたと思って、身体を大事にしながら、できることを精一杯頑張っていきたいですね。

(取材・執筆:眞田 幸剛)

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