社会人デビュー直前に潰瘍性大腸炎に―23歳・一般職女子の想い

ライフ・はたらく2020/9/29

  • Twitterでつぶやく
  • いいね!
  • LINEで送る
  • URLをコピー URL
    copied
成田さん

今回の「仕事・はたらく」でご紹介するIBD患者さんは、自動車関連の会社で正社員として働く、社会人1年目の潰瘍性大腸炎患者のAさん。学生の頃から留学などの経験があり英語が堪能なAさんは、自身の英語力をいかし、一般職で活躍しています。

Aさんが潰瘍性大腸炎と診断を受けたのは2020年2月、ちょうど入社を控えた時期でした。そこから、入院による治療で症状が落ち着いたこともあり、会社には病気のことを伝えずに入社。その後、1度再燃を経験しますが、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務での仕事が可能だったこともあり、仕事と治療をうまく両立できたのだそうです。現在は寛解しており、仕事にも特に支障がないことから、会社側には病気のことを伝えずに働いています。

社会人1年目、突然の潰瘍性大腸炎の発症に戸惑いながらも、前向きに仕事に取り組み、プライベートも充実しているというAさん。潰瘍性大腸炎と診断されたときの気持ちや、これからの仕事の目標、恋愛や結婚のお話まで、詳しくお話を伺いました。

Aさん(23歳・女性/潰瘍性大腸炎歴6か月)

半年ほど腹痛や下痢、発熱などの症状に悩まされ、2020年2月に潰瘍性大腸炎と診断を受ける。社会人としての新生活を控えていた頃だった。治療によって症状が落ち着いたことから、予定通り、内定先の自動車関連の会社の正社員として入社。一般職として、英語を使う事務職の仕事をしている。会社側に、病気のことは伝えていない。
英語は、学生の頃から興味を持ち、身近な存在だった。高校生の頃には、1年留年し海外へのホームステイを決意。大学時代には、複数回の留学を経て、さらに英語を学んだ。「英語をいかした仕事をしたい」と考えるようになり、見事、希望していた「自動車関連会社の一般職」の内定を得た。その他、幼い頃から始めたクラシックバレエを今も続けるなど、プライベートも充実している。

海外への留学を通じ、英語に関わる仕事を志すように。一方でからだに違和感も…

――現在、英語力をいかしたお仕事をされているとのことですが、どのようにして英語に興味を持たれるようになったのですか?

Aさん: 英語に興味を持つようになったのは、高校生の時からです。この頃、高校を1年留年し、ニュージーランドにホームステイすることを決意しました。ずっと海外に憧れを持っていて、英語の勉強を本格的にしたいと思っていたところ、仲良しの友達もホームステイすることになったので、一緒のタイミングで私も行くことに決めたんです。

ニュージーランドでの生活は、とても刺激的でした。最初は相手の話している言葉がわからなかったり、自分の言いたいことがうまく伝わらなかったりして、ストレスを抱えたこともありましたが、徐々に英語がわかるようになったことは、自信につながりました。自分自身、大きく成長することができた経験だったと思います。

01

一方、海外生活を送る中で、お腹にガスが溜まるようになるなど、からだに違和感を覚えるようになりました。海外の食事って、日本食と比べると、どうしても脂っこい食事なんですよね。特に、ニュージーランドは揚げ物が多かった印象があります。病院に行くほどではなかったのですが、「何だか体調が悪いな」と感じていました。

その後、大学でも英文科を専攻し、オーストラリアやオーストリアへの留学を経験するなどして、英語を学び続けました。大学生になると、英語は自分にとって身近な存在になっていたので、自然と「英語を使う仕事をしたい」と思うようになっていました。

――留学などで、大学生活も充実されていたことと思います。そこから、どのような経緯で潰瘍性大腸炎との診断を受けられたのでしょうか?

Aさん: 診断を受ける半年ほど前から、ずっと体調が悪かったんです。下痢、下血、腹痛の症状が現れ、トイレを我慢できないほどでした。発熱も繰り返していましたね。

当時は、原因がわからず、不安な日々を過ごしていました。インターネットで、可能性のある病気について、よく調べていましたね。そのときに、潰瘍性大腸炎という病気のことを知り、「もしかして、私の病気…潰瘍性大腸炎かな?」と、予想していました。そのため、心の準備はある程度できていたので、診断を受けたときは「やっと原因がわかった…!」と、安堵した気持ちが大きかったです。体調不良の原因が確定していなかった半年間は、得体の知れない不安でいっぱいだったので…。診断がついて、本当に安心しました。

――発症のきっかけとして、思い当たることはありますか?

Aさん: 大学生の頃は、留学先で脂っこい食事をとる機会が多かったということが、まず浮かびますね。あとは、ストレスという部分から振り返ると、就職活動も思い当たります。

就職活動での私の希望は、一般職で、かつ、英語を使えるような事務職でした。一般職は、特に人気で倍率が高く、就職活動を始めた頃は、なかなか内定をもらえず苦労しました。また、自動車関連の仕事に関わりたいという希望もありました。ホームステイや留学を通じて、「日本車って、すごいな」と感じていたためです。結果的に、いまは希望通りの仕事に就くことができて、英語でメール対応を行うなど、充実した社会人生活を送っています。

――発症当時~現在まで、どのような治療を受けられましたか?

Aさん: 診断を受けた時は、3週間入院しました。1週間絶食で、点滴でしたね。その後は、ステロイドや血球成分除去療法による治療を受けました。

実は、今年の8月に少し再燃を経験したんです。そのときも、ステロイドや血球成分除去療法を受けました。幸いにも、長期化せずに落ち着いたので、現在はペンタサによる治療のみ受けています。

――病歴が浅い中で気付いた、思ったよりも「大丈夫だったこと」「大変だったこと」はどんなことですか?

Aさん: 思ったよりも大丈夫だったことは、体調が良いときであればトイレが気にならないことですね。仕事は事務職なのでデスクワークがほとんどですが、自由にトイレに行ける環境なので、安心感があるということも大きいと思います。

思ったよりも大変だったことは、食事制限が多いことです。私の場合は、油をとるとすぐに体調を崩してしまい、チョコレートを1粒食べただけでも、すぐに体調が悪くなってしまうほどです。そのため、油には注意するようにしていますね。飲み会に行っても、あまり食べられるものがないので、ちょっと悲しいです…。お酒を飲んでも体調を崩してしまうので、注意しています。

再燃を経験、在宅勤務の活用で治療と仕事を両立

――職場の方には、潰瘍性大腸炎のことをお伝えしていますか?

Aさん: いまは、伝えていません。再燃した時期もありましたが、現在は症状が落ち着いているためです。あとは、潰瘍性大腸炎のことを伝えて、もし偏見を持たれたら…という心配な気持ちもあるからです。病気のことを知らない方も多いと思うので。誰かに病気のことを伝えて嫌な思いをしたことはまだありませんが、その可能性を考えると不安があるのは事実です。そのため、親とも相談し、いまは会社に病気のことは伝えないことにしました。今後、また再燃して症状が重くなった場合には、会社に伝えることを考えるかもしれません。

――会社で体調が悪くなった場合は、職場の方にどのようにお伝えしていますか?

Aさん: 会社で体調が悪くなったことは、幸いにも、まだないんです。新型コロナウイルスの影響もあって、4月に入社してから、在宅勤務の日が多かったためです。再燃して体調が優れないときもあったのですが、在宅勤務だったので休みながら仕事をしたり、通院のために半日お休みをもらったりするなどして、仕事と治療をうまく両立することができました。

02

特に再燃時は、在宅勤務で本当に良かったと思いましたね。ステロイド治療も受けていたので、免疫力の低下により、外出先で、もし新型コロナウイルスに感染したら…という怖さもあったためです。そういった意味でも、在宅勤務を推奨している職場で良かったと感じています。

また、一般職という部分でも働きやすさを感じています。例えば、総合職だと、どうしても出張や転勤も必要になるので、別のストレスがかかっていたかもしれません。特に、自動車関連の会社なので、海外への出張や転勤は十分にあり得ます。私は一般職なので、そういったストレスはないですし、いまの職場はとても働きやすく、いまのところデメリットは全く感じていません。

仕事やクラシックバレエに全力投球!…もちろん、結婚も

――今後の目標についてお聞かせください。

Aさん: 一番の目標は、いまの寛解を維持して働き、はやく仕事で一人前になることです。私は社会人1年目なので、いまは先輩方にいろいろとチェックしていただくことが多いですが、全部1人でできるようになりたいですね。また、来年には新しい後輩もできます。後輩に仕事のことを優しく教えてあげられるような、頼りになる先輩を目指したいです。

03

それから、プライベートではいつか結婚したいです。潰瘍性大腸炎になって感じるのは、もっと自由に恋愛をしたいけど、病気であることがさまざまな場面で足かせになっている…ということですね。例えば、デートで外食する場合、基本的に私は和食しか食べられないので、お店が限られてしまいます。体調が悪いときは、そもそも出掛けられないですし、出掛けたとしても常にトイレのことを気にしないといけません。再燃時であれば、気にすることがさらに増えます。そのため、将来パートナーになる人には、病気のことを理解してもらいたいなと思っています。一方で、相手に病気のこと伝えるのは、とても勇気のいることだな…とも思っています。

――誰かに病気のことを伝えることは、勇気のいることですよね。これまで、ご家族以外で病気のことをお伝えした方はいらっしゃいますか?

Aさん: 5歳から習っているクラシックバレエの先生には、病気のことを伝えました。ただ、伝えるときは、ものすごく緊張しました。勇気を振り絞って、恐る恐る病気のことを伝えたんです。そうしたら、先生は「言ってくれてありがとう。何かあったら、いつでも何でも言ってね」と言ってくださって、本当に嬉しかったですね。先生が、私の病気のことを理解しようとしてくれていることが伝わってきて、とても心強かったです。

クラシックバレエは、全身を使って表現することが求められるので、再燃時は全く練習できませんでした。入院した時期もあったので、体力や技術面で取り戻すことがとても大変でしたね。いまでは、以前と同じように練習することができています。今後、また再燃しても、先生は病気のことを理解してくださっているので、安心して大好きなクラシックバレエを続けられると思います。

SNSで得たIBD患者さんとのつながり、「1人じゃない」という心強さも

――潰瘍性大腸炎を公表してTwitterを始められたのは、どのようなきっかけからですか?

Aさん: 理由は、大きく2つあります。1つ目は、潰瘍性大腸炎の情報を集めたいと思ったからです。Twitter通じて、多くの情報を手に入れることができるようになったので、始めて良かったと思いました。

2つ目は、同じIBD患者さんとつながりたいと思ったからです。身近に同年代のIBD患者さんの知り合いがいないので、SNSを通じてつながりたいなと思ったんです。Twitterで自分が何かつぶやいたときに、同じIBD患者さんたちが反応してくれるのが嬉しいですね。「こういう意見もあるんだな」といった、新しい気付きもありますし、何より「自分は1人ではない」と感じられるようになったのは大きな変化です。

――最後に、同年代のIBD患者さんや、発症して間もない患者さんへメッセージをお願いします。

Aさん: 私は、潰瘍性大腸炎と診断を受けたばかりの頃、大きな不安を抱えていました。でも、毎日の食事の管理などでサポートしてくれる家族や、体調のことを気にかけてくれる友達、SNSでつながり励まし合っているIBD患者さんたちなど、多くの方々に支えてもらい、いまは病気と向きあうことができるようになってきました。

最初は、不安なことも多いと思います。でも、決して1人ではないということを忘れないでくださいね。つらいことがあっても、一緒に励まし合い、頑張ることができたらうれしいです。

(IBDプラス編集部)

この記事が役立つと思ったら、
みんなに教えよう!

会員限定の情報が手に入る、IBDプラスの会員になりませんか?

IBDプラス会員になるとこんな特典があります!

会員登録

  • 1. 最新のニュースやお得な情報が届く
  • 2. 会員限定記事が読める
  • 3. アンケート結果ダウンロード版がもらえる

新規会員登録(無料)

閉じる
レシピ特集
レシピ特集をみる