職場でもう迷わない!【シーン別】病気/治療薬の説明の仕方
ライフ・はたらく | 2021/9/16 更新
潰瘍性大腸炎、クローン病の治療を継続しながら仕事をする上で、自身の症状や治療について、会社の人事や上司、同僚に、どのように話したらよいか困ったことはありませんか?食事や飲み会の誘いを受けても断らなければいけなかったり、外見からはわかりづらい体調の変化について、うまく説明できずに困ってしまったり…。
IBDプラス編集部では、医師監修のもと、患者さんたちからよく質問される内容をふまえて、回答の例文を作成しました。また、治療薬については、医療の専門知識がない人にも伝わるように、簡単な言葉を使って説明文を作成しましたので、参考にしてみてください。(監修/JCHO相模野病院 消化器内科部長 三枝陽一先生)
【目次】
「体調がよさそうだから、もう通院しなくていいんじゃないの?」と聞かれた場合
「体調がよさそうだから、通院や服薬は不要なのでは」と会社の人に聞かれて、困ってしまったことはありませんか?症状が落ち着いている寛解期の患者さんで、通院の必要性について聞かれたときの回答例です。
潰瘍性大腸炎/クローン病は、治療すれば完全に治る病気ではなく、良くなったり悪くなったり(再燃寛解型)を繰り返します。
良い状態を維持するために、3か月に1度は定期的に通院して、薬をもらうだけでなく、医師とコミュニケーションを取り続けていく必要があります。良い状態が続いている患者さんの通院間隔は、人にもよりますが数か月に1度程度の人が多いようです。
通院のために遅めの出勤や早退、ときにはお休みさせていただくことがこれからもあると思います。できるだけご迷惑をかけないよう、仕事の進捗は随時共有するようにします。
point
・「治療すれば完全に治る病気ではない」ことをきちんと伝える
・病気の症状は良くなったり(寛解)悪くなったり(再燃)を繰り返すことを説明する
異なるタイプの場合は、下記を参考に補足する
慢性持続型=薬で何とか症状を抑えている状態
初回発作型または再燃寛解型で寛解期にある場合=今は薬で落ち着ていてほとんど症状はない状態
・定期的な通院について、「●か月に1度」のように頻度を伝えておく
健康な人は「数週間に1度」のように短いスパンでの通院をイメージする人もいるため、寛解期のIBD患者さんの通院頻度の目安も伝えてみる
・「他の方になるべくご迷惑をかけないように段取りを考えます」「通院日は1週間以上前に共有するようにします」など、周囲への配慮の一言と、具体的な対策を併せて伝える
「大切な取引先との接待だから、少しくらいは飲めるよね?」と聞かれた場合
コロナ流行下では、接待や宴会は行われていないと思いますが、収束後には再びそのような機会が増えていくかもしれません。そんな時の返答例です。
潰瘍性大腸炎/クローン病は、腸への「刺激物」を食べたり飲んだりすることで、腹痛や下痢などの症状を引き起こすことがあります。
刺激物とは、お酒、揚げ物など油分が多い食べ物、辛い食べ物などのことです。また、食物繊維を多く含む食べ物も食べられません。お酒は症状が落ち着いている時に少し飲む人もいますが、私は飲まないようにしています。
例え少しでも、飲酒したことで気が大きくなり、制限されている揚げ物などの「おつまみ」をついつい食べてしまうこともあるかもしれないですし、急な体調変化で先方にご迷惑をかけてはいけないので、飲酒は控えています。
point
・潰瘍性大腸炎、クローン病いずれについても、飲酒が及ぼす影響は明らかではないものの、アルコールが腸粘膜を刺激することは確かなようなので、その旨を伝える
・お酒ではなく、高脂質(脂っこい)なおつまみなどをついつい食べてしまい、症状を悪化させてしまわないために、という断り方もある
・食物繊維を多く含む食べ物は食べられない、ということも伝えておく
・相手に迷惑をかけないために、という理由で断る方法もある
・過去の飲酒でひどい腹痛や下痢があった場合は、その旨も併せて伝えておく
●三枝先生からアドバイス
潰瘍性大腸炎の寛解期は、適量であれば食事制限はありません。クローン病は腸が狭窄しているので食物繊維は控えた方が良いでしょう。ただし病状が安定していれば海藻類に代表される水溶性の食物線維の摂取は良いという意見もあります。
飲酒に関しては、「飲めない体質のためノンアルコールビールでお付き合いします」との返答で良いでしょう。最近の職場では、飲めない体質や病気の人に対して、飲酒を強要することは「アルハラ」(アルコール・ハラスメント)といって、ルール違反になっています。
「トイレの回数が多いけど、仕事をさぼっているの?」と疑われた場合
勤務中に腹痛や下痢などの症状に襲われ、詳しい事情を知らない同僚などから、トイレに何度も(もしくは長時間)行くのは、仕事をさぼるためではないかと疑われた場合の回答例です。
潰瘍性大腸炎/クローン病では、突然、下痢や腹痛などが起こることがあります。そんな時は、何度もトイレに行くこともあれば、痛みが続いてしばらくトイレから出られないこともあります。また、冬場は冷えることでトイレの回数が多くなりがちです。仕事をさぼりたいわけではなく、誤解を招いているのでしたら申し訳ありません。ですが、このような事情があることをご理解いただければうれしいです。
point
・症状が急に現れることがあると伝える
・トイレの回数が多くなる、長時間(どのくらいの時間)になる可能性を明確に伝える
・腹痛は冷えなどから起こる場合もあることをあらかじめ伝えておく
・トイレからなかなか戻ってこない時は、尋常ではない腹痛に襲われている可能性があることも伝えておく
・理解してもらうために、症状が出る前に「可能性」として伝えておく方が無難
・仕事に対して真剣に取り組む姿勢を見せる、言葉でも伝える
「病気に対して、会社はどんなことをサポートすればいい?」と聞かれた場合
入社前や入社直後、会社の人に病気のことを初めて伝えた時、このようなことを聞かれるかもしれません。そんな時の回答例です。
潰瘍性大腸炎/クローン病は、治療すれば完全に治る病気ではなく、症状が悪化した状態(活動期)と、落ち着いている状態(寛解期)を繰り返します。定期的な通院のために早退することや、急な体調不良で欠勤する可能性があるので、周囲から業務のサポートを受けられると助かります。
上記の他に、職場の環境によってお願いすることは異なるので、下記の項目から当てはまりそうなものを尋ねてみてみましょう。
point
〈シフト〉日勤/夜勤を不規則に繰り返す場合、睡眠不足などにより体調を崩しやすくなるので、規則的なシフトを組んでもらうことが可能かを聞く 〈在宅勤務〉体調があまり優れない場合でも業務が行えるように、在宅勤務が可能な業務に配属してもらえるかを聞く 〈社内での席〉冷えることを避けるため、夏場は冷房から離れた席、冬場は比較的暖かい席などで勤務できるかを聞き、ひざ掛けなどの持ち込みが可能かなども聞いておく 〈弁当の持参〉社食など決まった食事がある職場でも、弁当を持参することが可能かを聞く 〈制服がある場合の寒さ対策〉制服着用などの規則がある場合、寒さ対策のためにインナーを着こんだりすることは可能かを聞く
治療薬に関する説明例
・5-ASA製剤(商品名:「ペンタサ」「アサコール」「リアルダ」など)
症状を改善する目的のほか、症状が出ていない状態をなるべく長く維持する目的で使われる薬。病状に関係なく毎日必ず飲み続ける必要がある。肌の状態を保つ「塗り薬」や「化粧水」に例えられることも。
・生物学的製剤(商品名:「レミケード」「ヒュミラ」など)
炎症を起こす物質(過剰免疫)の働きを抑えたり、この物質をつくる細胞そのものの働きを抑える薬。自己注射以外は通院が必要。
・ステロイド(商品名:「プレドニン」など)
炎症を抑える効果が非常に高いため、使われることが多い。副作用として顔が浮腫むムーンフェイス、イライラ感、不眠などが現れる場合もある。
・免疫調整剤(商品名:「イムラン」「アザニン」など)
過剰な免疫の働きを抑えることで、炎症を抑制する薬。治療中は免疫力が低下するため、できるだけ密になる場所を避ける。潰瘍性大腸炎/クローン病は、免疫機能が過剰に働き、体内の組織を攻撃してしまう「自己免疫疾患」と考えられており、免疫の働きを抑える薬が用いられることがある。
・経腸成分栄養(商品名:「エレンタール」など)
腸に刺激を与えず栄養が手軽に取れる高カロリー栄養剤。食事でおなかを下してしまうときだけでなく、日常的な栄養補給としても使われる。
(IBDプラス編集部)
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