潰瘍性大腸炎とお酒(アルコール)【UCと食事のQ&A】

ライフ・はたらく2018/12/17

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潰瘍性大腸炎とお酒

※潰瘍性大腸炎と食事(食材)の関連性は現在もなお不明な点が多く、緩解期か活動期か、手術の経験があるかないか患者さん個々人の状況によって食べられるもの・食べられないものが大きく異なります。医師や栄養士など専門家によく相談して、摂取の可否を判断しましょう。

食事とともに楽しむ日本酒やワインなどのアルコールは、気持ちをリラックスさせる、料理の味を引き立てて食欲を増進させる、血流をよくするなどの効果があります。「ひと仕事終えた後のビールは、ストレス解消にもってこい!」という人もいるでしょう。昔から、「酒は百薬の長」といわれることもありますが、潰瘍性大腸炎の患者さんは、アルコールを飲んでもいいのでしょうか?また、飲んでいいのだとしたら、どれぐらいが適量なのでしょうか?

監修者プロフィール

監修者プロフィール

管理栄養士・スポーツ栄養専門士(公認スポーツ栄養士取得予定)

優生(ゆうき)

自身もIBD患者である病院栄養士。予防医療の普及や女性や子供の健康のために活動する、Luvtelli東京&New York公認カウンセラーとしても活動。得意分野はスポーツ栄養と予防栄養。

1. 飲酒が潰瘍性大腸炎に与える影響は?

健康な人でも「お酒を飲むと、おなかがゆるくなる」「お酒を飲んだ翌日は、必ず下痢をする」という人がいます。これには「アルコールによって血流がよくなるため、腸の動きが活発になるから」「ビールなど、大量の水分が腸に入るため」「ビールやワイン、冷酒など、冷たい飲みものをいっぺんに摂ることが刺激になる」「アルコールと一緒だと食が進み、ついついおつまみをたくさん食べてしまうから」など、理由は諸説あります。また、アルコールそのものが腸への刺激になっている可能性もあります。

2. 潰瘍性大腸炎になったらお酒・アルコールは絶対にNG?

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜がただれたり、潰瘍ができたりする病気です。そのため、刺激の強い食べ物や飲み物は避けたほうが無難だと言われています。しかし、アルコールが潰瘍性大腸炎に与える影響については、まだはっきりとはわかっていません。そのため医師の間でも意見が分かれ、「寛解状態で、少量であれば飲んでもよい」という人もいれば、「多かれ少なかれ、アルコールは腸管の粘膜に刺激を与える。症状が悪化する可能性があるから、控えたほうがよい」という人もいます。さらには、「少量ならかまわないと思うが、少量のつもりで飲み始めても、酔うとセーブがきかず、つい飲み過ぎてしまうので、飲まないほうがよい」との声も。また、米国のある栄養学博士の意見には、「適量のワインを除く、すべてのアルコールが再燃と下痢を起こしやすい」というものもあります。少なくとも、潰瘍性大腸炎の治療薬を飲んでいるうちは、アルコールの摂取を控えるべきでしょう。

3. 「少量なら飲んでよい」と医師に言われたけど、飲んでもよい量の目安は?

「寛解状態で、少量であれば飲んでもよい」と考える医師でも、「どの種類のお酒を、どれぐらいの量なら飲んでよいのか」という目安は出しにくいようです。その理由として、アルコールが体に与える影響の個人差が大きいということが挙げられます。そうは言っても、「少量って、どれぐらいだろう?」と、具体的な量が知りたくなりますよね。

ここでひとつの目安となるのが、厚生労働省が出している一般的な指標です。それによると、「通常のアルコール代謝機能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20g程度」が適量だそうです。これは、たとえば日本酒で1合、ビール中瓶1本、ワインならグラス2杯弱、ウイスキーならダブルで1杯程度(女性や高齢者は、この1/2~3/4が適正量)です。寛解状態にある潰瘍性大腸炎の人がお酒を楽しむ場合、最初は「ごく少量を、試しに飲んでみる」程度にしてください。そして症状が悪化しないかどうか様子を見ながら量を増やし、適量の範囲を超えないようにしましょう。

また、潰瘍性大腸炎患者さんのアルコール摂取量については、「成人の場合、1日の摂取カロリーの1.5%までは、アルコールでカロリーを摂っても悪い作用がない」という意見もあります。たとえば1日2,000キロカロリー※のエネルギーを摂取している人なら、ワインであればグラス1杯、ビールなら小瓶1本程度が相当量です。

※日本人の成人の場合、1日に必要なエネルギー量は1,800~2,200キロカロリーといわれていますが、年齢・性別・活動量によって差があります

4. その他、潰瘍性大腸炎の人がお酒と付き合う上で注意が必要なことは?

病状が落ち着いているとはいえ、腸に余計な負担をかけないために、毎日の飲酒は避けましょう。また、たまにしか飲まないからといって、適正量を上回る飲酒も控えましょう。極端に冷たいものも腸にはよくありません。「空腹時にキンキンに冷えたビールを一気飲み!」などというのはもってのほかです。食事を楽しみながら、ゆっくり少量ずつ飲むのが理想です。さらに、量は少なくてもアルコール度数が高ければ高いほど腸の粘膜にとっては刺激になるので、十分注意しましょう。

またアルコール摂取時に気をつけたいのが、おつまみです。味の濃いおつまみは飲み過ぎに繋がりますし、揚げ物など油分の多いおつまみはアルコールと相性がよいので、特に注意が必要です。また、一度にたくさんの脂質をアルコールと一緒に摂ると、腸の動きが活発になり、下痢や腹痛の原因にもなります。

ワインと相性のよいチーズなどの乳製品や肉、卵にも、部位や種類、調理法によっては脂質が多く含まれているので、摂り過ぎないように気をつけましょう。「おつまみは、さっぱりした野菜にしよう!」というときも油断は禁物。野菜サラダにかかっているドレッシング、野菜スティックにつけるマヨネーズなどには油分が多く含まれています。調味料の摂り過ぎにも十分に注意しましょう。

お酒を楽しむときには、水やお茶も一緒に飲んで水分補給を十分に行い、翌日は「お腹に優しい食事」を心がけるようにしましょう。

(ライター:植田晴美)

参考文献
  • 松本誉之、斎藤恵子ほか:潰瘍性大腸炎・クローン病の人の食事, 女子栄養大学出版部, 2003
  • 田中可奈子、酒井英樹ほか:クローン病・潰瘍性大腸炎の安心ごはん, 女子栄養大学出版部, 2014
  • ジェームズ・スカラ著, 福島恒男監訳:潰瘍性大腸炎・クローン病の食事療法, メディカ出版, 2007

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