ベルスピティ(一般名:エトラシモドL-アルギニン)
潰瘍性大腸炎の治療で使用する主なお薬一覧 | 2025/12/18
潰瘍性大腸炎では、口から入ってくる異物を排除するはずの免疫が、何らかの原因で大腸粘膜を攻撃してしまうために発症すると考えられています。炎症は大腸粘膜から始まり、直腸から大腸全体に連続的に広がることが特徴とされている疾患です。炎症が生じることで腹痛や下痢、血便などの症状が起こります。ベルスピティは、これまでの治療でも効果が十分に得られない場合の潰瘍性大腸炎に使用されます。
監修者:薬剤師 百武友加
効能・効果
免疫反応に重要な役割を担っているのが、体内で作られる「リンパ球」です。リンパ球は体内の「リンパ組織」という場所に蓄えられ、そこから血液中に流れ出すことで炎症部位に集まります。リンパ球の流れを制御するのがスフィンゴシン1リン酸(S1P)という物質で、通常は血液中に多く含まれており、リンパ組織中には少なくなっています。リンパ球はこのS1P濃度が低いところ(リンパ組織)から高いところ(血液中)に向かって流れる仕組みとなっており、全身の免疫反応を引き起こしています。エトラシモドL-アルギニンは、リンパ球上にあるS1P受容体に結合することで、間接的にリンパ組織内のS1P濃度を高め、リンパ球が血液中に流れ出ることを抑えることで、体内の炎症反応を抑える働きがあります。
ベルスピティの特徴
エトラシモドL-アルギニンは、S1P受容体の中でも特にリンパ球の流れや炎症反応に関係するS1P受容体1、受容体4および受容体5に対して選択的に作用するように設計されているお薬です。リンパ球が血中へ過剰に流れ出すことを防ぐことで、大腸の炎症部位にリンパ球が集まることを抑え、潰瘍性大腸炎の炎症を軽減すると考えられています。
使用上の注意
- 過去に潰瘍性大腸炎の治療を行っている方で、他のお薬でも効果が十分に得られない場合に服用するお薬です。
- 心臓に疾患をお持ちの方は主治医に相談してください。
- 重度の呼吸器疾患をお持ちの方、肝機能が低下している方は服用しないことが望ましいです。
- このお薬は胎児に影響を及ぼす可能性があるため、妊娠を希望する方や授乳中の方は、服用前に必ず主治医に相談してください。服用中に妊娠がわかった場合はすぐに服用を中止してください。
併用禁忌・併用注意
- 服用開始6か月以内に心筋梗塞や心不全、脳卒中など心臓や脳の疾患の既往がある方は、このお薬を服用することはできません。
- 生ワクチン(麻しん・風疹ワクチン、BCGなど)を接種すると病原性をあらわすことがあるので、服用終了後最低2週間は接種を控えてください。また、事前に接種する必要がある場合は服用開始4週間以上前に接種してください。
- 感染症のリスクが高くなる可能性があるため、免疫抑制剤や生物学的製剤、ヤヌスキナーゼ阻害薬との併用は避けてください。
- その他、併用することで効果が弱まったり強くなったりするお薬があります。他に服用している薬やサプリメントがある場合、必ず医師または薬剤師に伝えてください。
用法・用量
既存治療で効果が不十分な場合の中等症~重症の潰瘍性大腸炎の治療に使用されます。通常、成人は1日1回、2mgを服用します。
副作用
風邪症状などの感染症、皮膚感染症、発熱、疲労感、めまい、悪心、嘔吐、頭痛、食欲不振、傾眠などがあらわれる場合があります。下記のように[ ]で示した疾患があらわれる可能性があります。当てはまる症状が出ている場合はすぐに医療機関を受診してください。
- 視力の低下、物が歪んで見える、中心がぼやける [黄斑浮腫]
- 意識障害、もの忘れをする、体の片側や手足に麻痺がある、ろれつが回らない、物が見えづらい [進行性多巣性白質脳症(PML)]
- 息切れ、倦怠感、失神、目の前が急に暗くなる [徐脈性不整脈]
- 悪心、嘔吐、腹痛、疲労、黄疸、褐色尿(コーラ色の尿) [肝機能障害]
- 頭痛、けいれん、失神、視力低下 [可逆性後白質脳症症候群]
コラム
このお薬を開始する前には、医師による問診のほか、心電図検査や血液検査などで、服用可能かどうかしっかりと確認することが必要になります。服用の際は1日1回、2mgを服用し、用量調節は不要のお薬です。服用中は定期的に血液検査や眼底検査などを行い、問題がないか確認しながら継続します。研究データから、食事の影響は受けないとされているため、食後・空腹時関係なく服用することが可能です。1日1回なるべく決まった時間に服用するようにしましょう。

