エンタイビオ(一般名:ベドリズマブ)

潰瘍性大腸炎は大腸粘膜で原因不明の炎症が起こる疾患で、強い腹痛や血便などの症状が出る活動期と、病気の症状がおさまる寛解を繰り返します。治療薬には、炎症を直接抑える薬や過剰な免疫反応を抑えて炎症を軽減する薬などがあり、症状や治療の経過に合わせ、組み合わせて使用する機会も多くあります。エンタイビオ(一般名:ベドリズマブ)は、白血球の一種であるリンパ球が腸粘膜へ入り込んで引き起こす炎症を抑えつつ、腸以外への影響は少なくなるように開発された生物学的製剤です。

監修者:薬剤師 谷本かおり

効能・効果

潰瘍性大腸炎の原因のひとつとして、炎症性細胞が大腸粘膜へ入り込み、これらの炎症性細胞の存在が、炎症を引き起こしているのではないかと考えられています。ベドリズマブは、炎症を起こしている腸管組織に、炎症性細胞の一種であるTリンパ球が入り込むのを阻害することで、炎症を軽減します。ベドリズマブは、中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療及び維持療法に使用します。

エンタイビオの特徴

炎症を起こしている腸管組織に、炎症性細胞のTリンパ球が入り込む際に、Tリンパ球の表面のα4β7インテグリンというタンパク質が関係していると考えられています。ベドリズマブは、このα4β7インテグリンに対して働く抗体を、バイオテクノロジーにより人工的に作製して医薬品にしたもので、生物学的製剤と呼ばれます。ベドリズマブはα4β7インテグリンに結合しTリンパ球の遊走(腸への移動)を抑えますが、そのことが感染症に対して身体を守る免疫能に影響を及ぼす可能性があります。このため、エンタイビオを使用している間は、感染症に特に注意する必要があります。また、生物学的製剤の点滴は、体が薬に対し強く反応して全身状態が悪化する、重い副作用(インフュージョン・リアクション)が起きることがあり、十分な対処ができる設備の整った医療施設での使用が推奨されています。

使用上の注意

  • 使用の前には、悪化する恐れのある感染症にかかっていないかを調べます。
  • まれに重篤な感染症にかかることがあります。事前に医師または薬剤師より十分な説明を受け、何か気になる症状が現れたときにどのようにすればよいかを確認してください。
  • 授乳中または妊娠中や、妊娠の可能性のある方は、医師や薬剤師に伝えてください。

併用禁忌・併用注意

  • この薬を使用している間は、生ワクチンの接種に注意が必要です。
  • 多発性硬化症の薬であるナタリズマブ(製品名:タイサブリ)を使用したことがある方は、必ず医師に伝えてください。
  • 他の生物学的製剤との併用は避けてください。

用法・用量

通常、成人には1回300mgを点滴注射します。その後2週、6週に投与し、それ以降は8週間の間隔で点滴注射を続けます。3回以上投与しても効果がない場合、この薬を継続して使用するかどうかは、患者さんの症状や病気の経過、副作用などを考慮して医師により慎重に判断されます。点滴を2回以上投与して治療反応が認められた場合は、次の投与予定日から注射剤に切り替えることが可能です。通常、成人には1回108mgを2週間隔で皮下注射します。

副作用

比較的起きやすいのは頭痛で、そのほかに発熱、風邪のような症状、倦怠感、関節痛などがあります。このような症状が出た場合は、医師や薬剤師に相談してください。
まれに下記のような症状があらわれますが、[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性があります。すぐに医師の診療を受けてください。

  • 息苦しい 、吐き気、蕁麻疹、ふらふらする [ショック、アナフィラキシー様症]
  • 長く続く咳、発熱、腹痛、下痢、嘔吐、倦怠感 [重篤な感染症]
  • 体の一部が麻痺する、言葉が出てこない、目の見え方がおかしい、記憶障害がある[進行性多巣性白質脳症(PML)]

コラム

エンタイビオのような免疫機能を抑える薬を使用する際に、医師や薬剤師から「生ワクチンの接種は避けてください」と説明を受けることがあります。ワクチンには大きく「生ワクチン」、「不活化ワクチン」「トキソイド」の3種類があるのをご存知でしょうか。「生ワクチン」は、生きたウイルスや細菌の毒性を弱めて病原性をなくしたもの、「不活化ワクチン」は、ウイルスや細菌を不活化・殺菌して感染する能力を失わせたもの、「トキソイド」は、細菌が作る毒素だけを取り出し毒性をなくしたものを、それぞれ原料としています。現在よく使われている「生ワクチン」には、ロタウイルス、MR(麻しん風しん混合)、みずぼうそう、おたふくかぜなど、「不活化ワクチン」には、ヒブ、小児用肺炎球菌、B型肝炎、4種混合、日本脳炎、子宮頸がん、インフルエンザなどがあります。「生ワクチン」は毒性を弱めていますが、細菌やウイルスをそのまま接種します。そのため、免疫を薬で抑えている時に使用すると、その病気にかかってしまう可能性がないとは言い切れないため、注意が必要なのです。IBDの治療中に予防接種を受けるときには、事前に医師や薬剤師に伝えるようにしてください。

この記事が役立つと思ったら、
みんなに教えよう!

会員限定の情報が手に入る、IBDプラスの会員になりませんか?

IBDプラス会員になるとこんな特典があります!

会員登録

  • 1. 最新のニュースやお得な情報が届く
  • 2. 会員限定記事が読める
  • 3. アンケート結果ダウンロード版がもらえる

新規会員登録(無料)

閉じる
レシピ特集
レシピ特集をみる