ゼポジア(一般名:オザニモド塩酸塩)

潰瘍性大腸炎では、口から入ってくる異物を排除するはずの免疫が、何らかの原因で大腸粘膜を攻撃してしまうために発症すると考えられています。炎症は大腸粘膜から始まり、直腸から大腸全体に連続的に広がることが特徴とされている疾患です。炎症が生じることで腹痛や下痢、血便などの症状が起こります。ゼポジアは、これまでの治療でも効果が十分に得られない場合の潰瘍性大腸炎に使用されます。

監修者:薬剤師 百武友加

効能・効果

免疫反応に重要な役割を担っているのが、体内で作られる「リンパ球」です。リンパ球は体内の「リンパ組織」という場所に蓄えられ、そこから血液中に流れ出すことで炎症部位に集まります。リンパ球の流れを制御するのがスフィンゴシン1リン酸(S1P)という物質で、通常は血液中に多く含まれており、リンパ組織中には少なくなっています。リンパ球はこのS1P濃度が低いところ(リンパ組織)から高いところ(血液中)に向かって流れる仕組みとなっており、全身の免疫反応を引き起こしています。オザニモド塩酸塩は、リンパ球上にあるS1P受容体に結合することで、間接的にリンパ組織内のS1P濃度を高め、リンパ球が血液中に流れ出ることを抑えることで、体内の炎症反応を抑える働きがあります。

ゼポジアの特徴

オザニモド塩酸塩はS1P受容体の中でも特にリンパ球の流れに関係するS1P受容体1、S1P受容体5と親和性が高く、これらと選択的に結合するように作られているお薬です。そのため、体に生まれつき備わった能力で、体内に侵入したウイルスやがん細胞を見つけだし、攻撃して排除する役割のあるナチュラルキラー細胞や、同じく細菌やウイルス感染時などの免疫反応に関わる単球には影響しないと考えられています。

使用上の注意

  • 服用開始する際、少しずつ増量していく飲み方をしなかった場合、心拍数の低下が生じる可能性が高くなることから、用法・用量を必ず守って服用してください。
  • 服用後にめまいや息切れなどの症状が見られた場合は主治医に連絡してください。
  • 用量を増やしていく期間はめまい、ふらつきがあらわれることがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械の作業をする際には注意してください。
  • 休薬期間が以下に該当する場合は、休薬前と同一の用量で投与再開した場合に一時的な心拍数低下が生じる可能性があるため、0.23mgから服用を再開し、用法・用量どおりに増やしていくこと(服用開始後14日以内に1日以上の休薬/服用開始後15~28日の間に7日間を超えて連続して休薬/服用開始後28日を経過した後に14日間を超えて連続して休薬)
  • 軽度または中等度の肝機能障害がある方は服用しないことが望ましいです。やむを得ず服用する場合には、1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mgを1日1回、8日目以降は1回0.92mgを2日に1回内服してください。
  • 服用中に水痘または帯状疱疹を発症すると重症化するおそれがあるため、服用開始前にワクチン接種について主治医と相談してください。
  • 重度の呼吸器疾患をお持ちの方、肝機能が低下している方は服用しないことが望ましいです。
  • 妊娠を希望する方は、服用前に主治医に相談してください。
  • 妊娠または妊娠の可能性のある方、授乳中の方は主治医に相談してください。
  • カプセルは開けたり噛んだりせず、そのまま服用してください。

併用禁忌・併用注意

  • 生ワクチン、麻しん・風疹ワクチン、BCGなどのワクチンを接種すると病原性をあらわすことがあるので、服用終了後最低3か月は接種を控えてください。また、生ワクチンを事前に接種する場合は服用開始1か月以上前に接種してください。
  • 不整脈や高血圧治療薬を服用されている方は、副作用が生じる可能性があるため医師に相談してください。

用法・用量

既存治療で効果が不十分な場合の中等症~重症の潰瘍性大腸炎の治療に使用されます。 通常、1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回服用します。(成人)

副作用

帯状疱疹や口腔ヘルペスなどの感染症、悪心、嘔吐、腹痛、疲労、食欲不振、頭痛などがあらわれる場合があります。下記のように[ ]で示した疾患があらわれる可能性があります。当てはまる症状が出ている場合はすぐに医療機関を受診してください。

  • 意識障害、もの忘れをする、体の片側や手足に麻痺がある、ろれつが回らない、物が見えづらい[進行性多巣性白質脳症(PML)]
  • 息切れ、倦怠感、失神、目の前が急に暗くなる[徐脈性不整脈]
  • 悪心、嘔吐、腹痛、疲労、黄疸、褐色尿(コーラ色の尿)[肝機能障害]
  • 視力の低下、物が歪んで見える、中心がぼやける [黄斑浮腫]
  • 頭痛、けいれん、失神、視力低下 [可逆性後白質脳症症候群]

コラム

ゼポジアは、少量の用量から飲み始め、徐々に用量を増やしていく「漸増(ぜんぞう)」という飲み方をするお薬です。1~7日目は「スターターパック」を使用し、8日目以降は0.92mgカプセルを使用します。スターターパックに含まれるカプセル(0.23mg、0.46mgカプセル)と0.92mgカプセルの生物学的同等性(体内での吸収率や吸収量がほぼ同じで、同じような効果を発揮すること)は示されていないため、代替して使用することはせず、服用する時期に合ったカプセルを使いましょう。また、飲み忘れがあった際や服用を一定期間お休みする場合は、決められた服用方法がありますので、医師や薬剤師に連絡してください。

この記事が役立つと思ったら、
みんなに教えよう!