後ろ向きになることが多かった僕が、治験参加で少しだけ前向きになれたワケ

IBDの治験体験談｜ 2022/7/13 更新

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※写真はイメージです

生物学的製剤で腹痛や発熱の症状は治まるも、痔瘻の痛みは改善せず…

18歳の夏頃に、出血と痛みの症状が出始めました。出血は、最初は便に少し混ざる程度でしたが、何日かすると排便するたびにトイレの中が真っ赤になるくらい出るようになりました。痛みは、立ったり座ったりしていると刺し傷のような痛みがジワジワしてくる感じで、排便時が一番痛かったです。おなかも壊していたのでトイレへ行く回数も増え、「ああ…また痛い思いをするんだなー」と憂鬱でした。この痛みがずっと続くようなら自殺してしまった方がいいかもしれないと思ってしまうほど、人生で一番つらい痛みでした。

痛みは日に日に増していき、まともに寝ることさえできなくなりました。寝る時も、うつ伏せで痛みに耐え続け、朝になった頃ようやく眠りにつく…そんな日が多くありました。最初はただの痔だと思っていたので、恥ずかしくて誰にもそのことを言えませんでした。

やがて、痛みや血便、睡眠不足で高校へ通うことが難しくなり、そこで初めて家族に打ち明けました。症状が始まって1か月後くらいのことでした。

近所の病院を受診したところ、「大きな病院で診てもらった方がいい」と言われ、紹介状を書いてもらいました。紹介された病院の肛門科で「痔瘻ができている。痛みは手術で良くなる」と言われ、入院して痔瘻の手術を受けることになりました。手術後、僕が麻酔で眠っている間に家族のところへ内科の医師がやってきて、クローン病だと説明をしたそうです。

その後、生物学的製剤の治療を受けることになりました。点滴と自己注射の製剤があると説明を受けましたが、何となく自己注射は難しいような気がして、点滴を選びました。生物学的製剤による治療を開始してからは腹痛や発熱が治まり、寛解状態になりました。しかし、痔瘻は時折痛むことがあり、血や浸出液がガーゼににじむことも多くありました。そんなとき、肛門科の先生から「クローン病の肛門周囲複雑瘻孔の治験」への参加を提案されました。

痔瘻の痛みや出血が減り、効果を実感

僕自身、治験そのものにはぼんやりとしたイメージしかなく、説明を受けても正直よくわかりませんでした。ただ、その時に治験コーディネーターさんが、メリットだけでなくデメリットも丁寧に説明してくれ、誠実に対応してくれたので、よく理解することができました。また、自分がクローン病でとても苦しい思いをしたので「今後同じ思いをする人が少しでも減ればいいな」と思い、治験に参加することにしました。

参加が決定してから、まず痔瘻の手術を受け、痔瘻部分に治験薬が投与されました。手術後は約2年、肛門科の診察時に経過を確認しました。

手術の前処置で痔瘻部分に通していたゴムを交換したため、汚れがなくなって浸出液の量が減りました。また、痔瘻の痛みや出血も減っていたので効果を実感しました。

治験コーディネーターの誠実さや親身なサポートが嬉しかった

治験参加のメリットは、「今までの治療では十分に得られなかった症状の改善が期待できること」ということですね。また、入院・手術時は治験コーディネーターさんが全ての手続きをしてくれましたし、経過確認のための診察時に待ち時間を確認してくれたり、検査時も横にいて部屋を案内してくれたりして、とても安心できたし心強かったです。

デメリットは、通院や検査の回数が増えて大変なことですが、定期的に自身の体調を確認できることはメリットとも考えられると思います。あとは、些細なことですが、血液検査がある日は朝食抜きになるのが人によってはデメリットに感じるかもしれません。

「今の状況を変えたい！」と思っているなら、一度相談してみては

クローン病で後ろ向きになることが多かったですが、治験に参加したことで「他の患者さんの助けになれているかもしれない」と、少しだけ前向きに考えられるようになりました。

治験と聞くと何だか怖いイメージがあるかもしれませんが、実際に参加してみると、普段の診察や検査の延長線といった感じでした。難しいことはほとんどありませんし、あったとしても治験コーディネーターさんが親身にサポートしてくれます。病気の症状に関わることなので気軽に勧めることはできませんが、「今の状況を変えたい！」と思っているなら、しっかり医師や治験コーディネーターさんの話を聞いた上で、参加を検討するのがいいと思います。