クローン病歴46年。積極的な情報収集と主治医への相談で決めた「治験」への参加
IBDの治験体験談 | 2023/5/19 更新
※写真はイメージです
何度薬を変えても大量下血で緊急搬送、入院・輸血の繰り返し。治療選択肢が減ってきて…
中学生の頃から痔があり、高校生になって「十二指腸潰瘍」と診断されましたが治らず、19歳の時に腹膜炎を起こし、小腸と大腸の一部を切除する手術を受けました。術後すぐに皮膚瘻(炎症などが原因で皮膚に開いた穴)が出たことから、その時に初めて「クローン病」と診断されました。しかし、その後も皮膚瘻は良くならず、20歳の時に原因と思われる小腸と大腸の炎症部位を切除する2回目の手術を受けました。それでも改善せず、30歳過ぎまで入退院の繰り返しでした。この頃はまだ薬の種類も少なかったので、5-ASA製剤とステロイドの坐剤を使っていました。また、IBD専門病院ではなかったので栄養指導もほとんどありませんでした。このように、高校を卒業する頃から体調が悪化してしまったため、就職をすることもできませんでした。
32歳の時、皮膚瘻を閉じるため、3回目の手術を受けました。IBD専門の外科医に手術していただいたので瘻孔の具合が良くなり、エレンタール中心の生活にしたこともあって、体調は徐々に良くなっていきました。この頃からアルバイトを始め、その後パートに切り替えて、徐々に長時間働けるようになっていきました。そして41歳の頃に就職活動をし、正社員として働き始めました。
その後も寛解には至らず、在宅中心静脈栄養法(HPN)を開始しましたが、入院することはありませんでした。ところが45歳の時、職場で突然大量下血して意識不明になり、地元の病院に緊急搬送されて輸血・入院となりました。退院後、主治医のいる病院で今後の治療について相談したところ、生物学的製剤を勧められました。副作用が出てしまったので途中で他の生物学的製剤に変えたりもしましたが、毎年1~2回は大量下血で入院・輸血を繰り返していました。
56歳の時、相変わらず下血を繰り返していたため、カプセル内視鏡検査などで調べた結果、小腸と大腸のつなぎ目に潰瘍があるということがわかりました。再度別の生物学的製剤に切り替えたところ、半年くらいで腹痛が治まり、下血もしなくなりました。
しかし、2022年の夏に2回大量下血を起こし、輸血を行いました。検査の結果、変わらずつなぎ目の病変が改善していなかったことから、再度別の生物学的製剤に切り替えました。しかし状況は変わらず、主治医から治験の話が出てくるようになりました。
「事前検査を受けても参加できるとは限らない」という不安が大きかった
この頃、一度治験の話を聞いてみようと思い、IBDプラスの「IBD治験情報サービス」に登録しました。その後、治験の紹介もしていただいたのですが、「過去の治療経緯などを総合的に見て、あまり効果が期待できない」との主治医の判断で、エントリーを断念しました。
別の日に改めて主治医と今後の治療と治験参加について話し合いました。主治医からは「使える薬が少なくなってきているので、年明けに発売される新薬を使うか、治験に参加するのがいいと思う」とアドバイスされました。その治験は既存の薬と併用して行うので、効果が期待できるのではないかとのことでした。プラセボに当たるリスクもありますが、今までと違う使い方をすることで病気が良くなる可能性があるのであればと思い、エントリーしました。
4週ごとに皮下注射をする治験で、24週までに効果がなければ中用量または高用量の治験薬に変更するというものでした。治験については十分に説明を受けて理解していたので不安はありませんでした。むしろ、「検査などで散々つらい思いをしても最終的に参加できなかったら…」という不安が大きかったですね。実際は、大腸カメラも麻酔をしてやってくれたので苦しくなかったですし、検査もスムーズに終わりました。そして、無事治験に参加できることが決まりました。
プラセボに当たる覚悟は必要だが、途中で実薬に切り替わる治験も
通院スケジュールに関しては病院が調整してくれるということで、基本的には仕事が休みの土曜日でお願いしています。最初の数回は平日の通院が必要ということで休みを取っていますが、お昼頃には終わるようなスケジュールで組んでいただいています。ただ、私が参加している治験実施施設はクリニックなので、このような融通がきくのかもしれません。仕事で休みが取りにくい人は、どのくらい融通がきくのか、事前に確認しておいた方が良いと思います。
治験実施施設は限られているそうですが、幸い長年の主治医のクリニックが実施施設だったため、精神的な不安なく参加できています。今、2回目の投与が終わったところですが、1回目から少し体調が良くなった感じがするのと、毎日ではありませんが腹痛や下痢の回数が少ない日があるように感じます。今は治験薬と免疫調節薬を併用しつつ、経腸栄養剤を続けています。今まで腹痛がつらい時に飲んでいたステロイド剤はNGということでしたが、ステロイド系以外の痛み止めは使えるということなので、特に問題は感じていません。
治験参加のメリットは、プラセボでなければ病気が良くなる可能性があるということです。また、最近は、効果がなかったら薬の用量を増やしてもらえたり、プラセボから実薬に切り替わる治験や、初めからプラセボがない治験も多いようです。デメリットは、大学病院などでは平日の通院が必須となるので仕事を休むことが多くなること。後は、事前の検査を受けたからといって必ず治験に参加できるとは限らないという点ですね。また、治験参加後は使えない薬もあるので、そういう薬を使っていてプラセボに当たってしまった場合は、ちょっとしんどいかもしれません。プラセボに当たっても仕方がないという覚悟は必要だと考えます。
治験のプラスもマイナスも知るために、まずは主体的な「情報収集」が大切
治験は誰でも受けられるものではないですし、プラセボに当たれば体調が悪くなることもあるので安易に勧めることはできません。一方で、治験実施施設以外の病院に通っている患者さんは、治験がどういうものなのか知る機会もほとんどなく、マイナスのイメージばかり先行してしまって、最新の治療を受けられる可能性があるというプラス面を、あまり理解していないように見えます。一度ご自身でIBDの治験に関する情報収集をして、きちんと考えてみることが大事だと思います。
※試験により実薬とプラセボの使用有無や通院間隔、施設によって負担軽減費が変わります。
治験参加者のプロフィール
ひーちゃんさん
- 年代
- 50代
- 性別
- 男性
- 病歴
- クローン病歴46年
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