善玉菌・悪玉菌・日和見菌という言葉を耳にしますが、悪玉菌は悪い影響、善玉菌は良い影響しかないのでしょうか。日和見菌はどんな影響がありますか?

それぞれの腸内細菌を、単純に善玉菌・悪玉菌・日和見菌に分けて健康への影響を推測するのは難しいと考えます。かつては細菌を培養して調べるという方法しかなく、腸内細菌叢の全体像を把握することはできませんでした。しかし、次世代シークエンサーの登場で、便の中の細菌を一度に解析することができるようになりました。実際にこの方法で見てみると、善玉菌・悪玉菌・日和見菌という単体での考え方が「本当ではない」ことが少しずつわかってきました。

私たちが注目している「バクテロイデス」は、かつては日和見菌と言われていましたが、最近ではバクテロイデス属の一部の菌種が免疫で大きな役割を果たしていることがわかってきました。また、潰瘍性大腸炎では「フソバクテリウム」という種類の菌群や大腸菌の一部の菌種が悪い影響を与えることが明らかになりつつありますが、他の病気にも悪い方向に働いているのかというと、そうでもないのです。そのため、細菌を単体で見て良し悪しを判断するのではなく、腸内細菌叢という「一つの集団」として見ていくのが正しいと考えます。

実際に腸内細菌は相互関係を持ちながら働いています。そのため、悪玉菌と呼ばれる細菌にも存在価値があるはずで、悪いからと全て取り除いてしまったら、周りにいる善玉菌も全ていなくなってしまう可能性があるのです。つまり、腸内を善玉菌だけにするのが良いのではなく、善玉菌・悪玉菌・日和見菌が絶妙なバランスを取りながら存在する「多様性」を保つことが非常に大切なのです。

(IBDプラス編集部)

石川大先生
順天堂大学 消化器内科 准教授
石川大先生
2001年 岩手医科大学医学部卒業、順天堂大学医学部附属順天堂医院研修医
2004年 順天堂大学医学部消化器内科学講座入局
2009年 米国Case Western Reserve University, IBD Research Center留学
2011年 順天堂大学大学院医学研究科修了博士(医学)
2011年 順天堂東京江東高齢者医療センター消化器内科学助教
2014年 順天堂大学医学部附属順天堂医院消化器内科学講座助教
2016年 順天堂大学医学部附属順天堂医院消化器内科学講座准教授

〈資格・所属学会〉
医学博士
日本内科学会(認定医)
日本医師会(認定産業医)
日本消化器病学会(専門医・指導医)
日本消化器内視鏡学会(専門医・指導医)
日本炎症性腸疾患学会
消化器免疫学会
国際粘膜免疫学会
日本消化器病学会(関東支部評議員)

この記事が役立つと思ったら、
みんなに教えよう!

閉じる
レシピ特集
レシピ特集をみる