筋トレが欠かせない!パーソナルトレーナーの潰瘍性大腸炎との関わり方
ライフ・はたらく | 2022/9/21
今回のIBD患者さんは、大阪でパーソナルトレーナーとして活動する、潰瘍性大腸炎患者さんの森田剛史さんです。診断を受けたのは2020年12月。以降、潰瘍性大腸炎に配慮しながらご自身のトレーニングを続け、トレーニング指導もしています。診断後、支えになったのはSNSを通じて寄せられた励ましの声。トレーニングが欠かせない職業だから故の悩みもSNSと通じて、解消していったそう。そんな森田さんのこれまで、そして今後について伺いました。
森田剛史さん(潰瘍性大腸炎歴約2年/34歳)
このストーリーのあらすじ
マンツーマンで教えるパーソナルトレーナー、自分の筋トレ時間も
――森田さんのインスタ、鍛え上げらえた体の画像がたくさんですね!どのくらい筋トレをしていますか?
はい、ありがとうございます。本当はシャイなので、恥ずかしさもありますが、個人事業主なので頑張って載せるようにしています(笑)。1日に1時間半くらいを自分のための筋トレ時間に充てています。ジムにあるさまざまなマシンを使って行っています。サプリメントや専用のドリンクなども摂取して、ボディメイクのためにトレーニングしています。
――パーソナルトレーナーとしてのレッスンはどのような内容ですか?
大阪市内の複数のジムで、マンツーマンでアドバイスをしながら1人1時間目安で、1か月に80人くらいのレッスンを行っています。仕事帰りの平日の夜に利用される方が多いです。年齢は20~50代の方が中心ですが、過去には80代の方のトレーニングを担当したこともあります。利用目的は、ダイエットやボディメイク(きれいな体のラインをつくる)の方、何かスポーツをされていて補強したい部分がある方など、いろいろですね。
――筋トレを始めたきっかけを教えてください
トレーニングに興味を持ち始めたのは10代の頃。身長170cmに対して当時の体重は50kg前半と、かなり細い感じでした。ダンベルを買って自宅でウエイトトレーニングをしたり、公園に行って懸垂をしたりしていました。
大学に入学後、友人の紹介で空手の道場に通うようになりました。卒業後は、ジムに就職してトレーナーになりたいと思っていたのですが、4年生の時のゼミの先生に「一度は企業でサラリーマンを経験してからでも遅くないから」と止められ、一旦商社に就職。それから3年後に退職して、念願のジムトレーナーに転職しました。
「海が似合う男」が評価されるボディメイク競技の「フィジーク」とは
――森田さんは「フィジーク」というボディメイクの競技の選手でもあるそうですね。
ジャンルは「ボディビル」ですが、フィジークは、ボディビルとは筋肉のつけ方が違います。ボディビルは全身にまんべんなく筋肉をつける必要があるので、太ももなんか、すごいですよね。対してフィジークは「海が似合う男」をコンセプトにしているので、「逆三角形のキレイな筋肉」が評価されます。コスチュームも、三角ビキニではなく「サーフパンツ」を着用します。
25歳で、フィジークとは少し違う「ベストボディ・ジャパン」という大会に出場しました。こちらは、健康的なかっこよさや美しさ、バランスの取れたスタイルなどが評価されるのですが、大阪の大会で準グランプリに選ばれました。それから2年後、大阪で開かれたフィジークの大会で優勝、翌年福島で行われたフィジークの大会でも2位入賞でした。
――フィジークを始めたきっかけは?
本格的にトレーニングを始めたのは23歳の頃。周囲から「何で筋トレ続けてんの?」と言われるようになり、トレーニングを続ける目標が欲しいと思い始めました。そこで出会ったのがフィジークでした。元々シャイで、言いたいことを言えないタイプなので、フィジークは、当時の自分にとってはすごく勇気の要るチャレンジでしたが、自分が変われるいいチャンスなんじゃないかと、トライしてみることにしました。
発症前はカフェインをリットル単位でがぶ飲み、野菜は摂取せず
――確定診断までの経緯、今の体調について教えてください。
2020年10月に高熱が出て、コロナに感染したのかと思ったんですが、3日ほどで熱は下がり、元気になりました。でも、「トイレに行きたくないのに行っちゃう」ということが続くようになり、やがて便に粘液が混じるようになりました。
翌11月、父親が心筋梗塞で倒れた頃から、血便が出るように。精神的ショックもあったのかなと思います。そして、12月に近所の医師に診てもらい、検査の結果、潰瘍性大腸炎と診断されました。
現在に至るまで、幸いにも入院するほど重症化することはなく過ごせています。治療は、5-ASA製剤を使っていて、体調に合わせて量が増減する感じです。
――診断後、食事の取り方など、生活で変わったことはありますか?
「高タンパク、低脂質」は以前からそうでしたが、変わったことはいくつかありますね。
1つは、カフェインの摂取量。筋トレを長時間行えるように興奮状態を維持するため、カフェインをリットル単位で大量に摂取する人がいるのですが、私もその1人でした。コーヒーをたくさん飲んだり、カフェインが多く含まれるトレーニング用の飲料をがぶ飲みしたり(苦笑)。今はカフェインの大量摂取はやめました。
時間の使い方も変わりました。以前はトレーナーとして指導する以外の時間はほぼ自分のトレーニングの時間で、家には寝に帰るだけでした。しかも、睡眠は4時間とか、ショートスリーパーで…。今は、1日1時間半の自主トレーニングで、睡眠も6時間以上。お風呂も湯舟にしっかり浸かって、ゆっくりするようにしています。
このほかに、トレーニングのために飲むサプリメントの種類を変えたり、以前は食べていなかった野菜を食べるようにしたり。自分でも、以前はかなり無謀な生活していたと思います。
――潰瘍性大腸炎と診断された後の方が、良い生活リズムになりましたか?
症状があるときはつらいのですが、総じて良くなっている気がします。適切な表現ではないかもしれませんが、あのタイミングで病気の診断を受けていなければ、もっと良くない方向にいってたんじゃないかと思うことがあります。私にとっては、「このままじゃアカン!」と、気づくきっかけとなりました。
診断後の支えはSNS、病気に配慮したトレーニング法を相談
――生活面での改善について、誰かにアドバイスを求めたりしましたか?
トレーナーである以上、自分自身のトレーニングは欠かせないので、IBD患者さんの先輩方でトレーニングに詳しい人に話を聞けないかと考えたのが、SNSのDM作戦です。
コロナ禍で直接会いに行くことは難しい状況ですので、「#潰瘍性大腸炎」「#トレーニング」というハッシュタグ検索で該当する人がいたら、片っ端からDMを送らせていただきました。回答してくださったみなさん、ありがとうございました。
そうして集まったコメントを受け入れて、少しずつ改善していくことにつながりました。カフェイン大量摂取をやめられたのも、そのおかげです。大好きだった香辛料をやめるきっかけもSNSのアドバイスを受けてのことでした。
――コロナ禍でSNSを通じたコミュニケーションは支えになりましたか?
もっと重い難病を患っている方もいると思いますが、最初に「潰瘍性大腸炎という難病です」と聞いたときは、「お先真っ暗だな」と思いました。でも、個人のSNSで病気と診断されたことを発表した際には、何百通というDMをいただいて本当に勇気づけられました。
勤めていたジムがコロナ禍で閉鎖になったり、本当にいろいろなことがありましたが、この時もSNSが大きな励みになりました。
潰瘍性大腸炎でも諦めない、自身のジム開設を目指して
――今後、チャレンジしようと思っていることはありますか?
実は、パーソナルトレーニングジムを開業しようと思っています。コロナが少し落ち着いてきたところで、オープンできればと今準備を進めています。
また、潰瘍性大腸炎診断後は出場できていませんでしたが、病気との向き合い方が少しずつわかってきたので、またフィジークの大会出場を目指した本格的なトレーニングを再開できればと考えています。
――IBD患者さんで身体を鍛えている方へ、メッセージをお願いします。
最初は、病気でトレーニングを一時的にやめることが怖かったりすると思います。でも、自分に無理のない、最適なトレーニング法はきっと見つかると思うので、食事なども改善しながら、あきらめずにがんばってほしいなと思います。
トレーニングについてお悩みがあれば、お気軽にDMをください!
(IBDプラス編集部)
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