「人生は楽しい方がいい!」病気のカミングアウトに悩んだ保育士が出した答えとは?

ライフ・はたらく2023/9/8 更新

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今回の「仕事・はたらく」でご紹介するのは、保育士のまみさんです。短大在学中にクローン病を発症し、体調に不安を抱えながらも保育実習、就職活動を乗り越え、幼い頃から憧れていた「保育士になる」という夢を実現しました。おっとりした雰囲気の中にも芯の強さを感じさせる彼女の「病気のカミングアウト」に関する考え方とは?保育士という仕事のやりがいや、大変な点とは?恋愛についても、ざっくばらんにお話ししてくださいました。

まみさん(21歳/クローン病歴2年)

物心ついた頃から保育士さんや幼稚園の先生に憧れを抱く。高校卒業後、夢を叶えるべく保育科のある短大に入学。しかし1年目から体調を崩し、精密検査の結果「クローン病」であることが判明。その後、保育士と幼稚園教諭免許を取得し、現在は認定こども園の年中クラス担任として勤務中。趣味はピアノ、お菓子作り、アニメ鑑賞、ライブ観戦など。

実習で一番忙しい時期に、クローン病を発症

――クローン病と診断されるまでの経緯をお聞かせください

病気が見つかる1年前くらいから、頻繁に腹痛や下痢が起こるようになりました。そのうち切れ痔になってしまい、自転車に乗るのも大変になってきました。最初のうちは市販の痔のお薬を使いながら、下痢のお薬は近くの消化器内科でもらっていました。しかし、症状は全く改善せず、そのうち痔の患部が腫れてきたので病院を受診したところ、すぐに精密検査を勧められ、大きな病院に転院しました。

転院先の病院で、おしりの腫れは「肛門周囲膿瘍」と診断され、手術を受けることになりました。その時に担当してくださったのがIBD専門の先生だったんです。下痢の症状もあったので、入院中に大腸内視鏡検査をしたところ、すぐに「クローン病」と診断され、そのまま2週間くらい入院することになりました。

――実習にも影響があったそうですね

私の通っていた学校の実習は、保育園2回(2月に11日間×2回)、幼稚園2回(3月と6月に計4週間)、児童養護施設や障害児施設1回(8月に11日間)と決まっており、それをほぼ1年でこなす必要がありました。

クローン病を発症した年の2月くらいから実習が始まっていたのですが、6月の幼稚園実習の前に入院してしまったので、授業も休むことになりました。幼稚園実習が始まる直前に退院できたのですが、体のことを考えて1週間後ろ倒しで参加することになりました。それでも何とか全ての実習を終えて、卒業に必要な単位を取得することができました。

――発症のきっかけとして、思い当たることはありますか?

保育園実習が始まってから下痢がひどくなってきたように思います。実習中は毎日欠かさず園と学校に子どもたちの1日の様子を書いた書類を提出する決まりがあり、それをクリアしないと卒業できません。そのため、実習が終わった後も遅くまで起きて書類を書いていたので、疲れが溜まっていたというのはあると思います。

――診断を受けた時、どのようなお気持ちでしたか?

クローン病という病気を知らなかったので最初はピンと来ませんでしたが、ネットで調べて「難病」であることや、「食事制限」が必要になることなどを知りました。私は食べることが大好きなので、今後スイーツを食べられなくなる可能性があるのかと思ったら、生きる希望や楽しみが失われてしまう気がして、泣いてしまいました…。

――ご家族や周囲の人たちはどのような反応でしたか

私は知らなかったのですが、妹から「病気がわかった日、お母さん泣いていたよ」と聞きました。泣くことなんて滅多にない母なのでとても驚きましたし、申し訳ない気持ちになりました。入院する時に担任の先生には伝えましたが、友達にはまだ伝えていません。一緒にご飯を食べに行く機会も多いので、やっぱり言い出せないですね…。入院の時も「ちょっとおしりの調子が悪くて入院するんだ」と、軽く伝えただけです。

――現在の治療内容を教えてください

2か月に1回通院しています。使っているのはメサラジン、レミケード、イムラン、整腸剤、ビタミン剤で、エレンタールも頑張って飲んでいます。フレーバーは、グレープフルーツとオレンジが好きですね。前はステロイドも飲んでいましたが、今はやめることができました。

最近はクローン病の症状は落ち着いていますが、口内炎と首が回らないなどの症状が出てしまって…クローン病との関係も含め、原因を調べているところです。

病気のことは伝えた方が、結果的に「自分のため」になる

――保育士を目指したきっかけを教えてください

昔から小さい子と遊ぶのが好きで、ピアノを弾くことや工作も好きだったので、小学生くらいから保育士さんや幼稚園の先生に憧れがありました。高校の時、進路を調べる中で「やっぱり保育士って大変そう…」と思い、一度は違う道も考えてみたのですが、他にやりたいことも見つからなくて、それなら小さい頃から憧れていた保育士さんを目指してみようと思い、短大で保育士と幼稚園教諭の資格を取りました。

――保育士・幼稚園教諭の就職活動に関して、IBD患者さんたちへアドバイスがあれば教えて下さい

私の場合は、性格的に大きな園よりも、こぢんまりとして落ち着いている園が合っていると思い、イメージに近いところを探しました。就活の際にクローン病であることを伝えるかということに関しては、すごく迷いました。でも、伝えた方が自分のためになるんじゃないかって思ったんです。その方が働きやすいと思うし、不採用になってしまったとしても他に必要としてくれるところはあると思うので、病気を少しでも理解してもらえる所で働いた方が絶対いいと思います。伝えるタイミングも迷いましたが、採用が決まってから「実は病気で…」と伝えるのはあまり印象が良くないと思ったので、面接の時に伝えました。

実は保育以外にもやることがたくさん。でも、残業は控えて「自分時間」を大切に

――お仕事の魅力と大変な点を教えてください

今働いているのは「認定こども園」という保育と幼児教育を一緒に行う施設で、乳児から年長児までを夜まで預かっています。ほとんど保育園と同じですね。今は、年中クラスの担任をしています。10人以下のクラスなので、一人ひとりとじっくり向き合うことができて満足しています。中には障害のある子もいますし、環境の変化で吐いてしまう子もいます。なので、常に「この子とはどう関わるのが良いか?」と、考えながら接しています。悩むこともありますが小規模の園なので「悩んだらみんなで考えよう」という雰囲気があり、気軽に相談できています。病気のことも伝えているので、仕事中も「おなかの具合が悪いのでトイレ行ってきます」と、素直に伝えて行かせてもらっています。

子どもたちに見せる風船劇

大変な点は、保育以外にもやることがたくさんあるということですね。書類作成や掃除など、やらなければならないことに日々追われています(笑)。すごく忙しいですが、できるだけ早く仕事を片付けて、残業しないように心掛けています。まだ1年目ですが、子どもたちが毎日楽しいと思える毎日を送れるように、保育していきたいと思っています。

病気と向き合うのは大変だけど、人生は楽しい方がいい!

――お休みの日はどんな過ごし方をされているのでしょうか

ピアノをよく弾いています。趣味で弾くこともありますし、園では季節ごとに曲が決まっていて、それを弾いたり歌ったりできるようにしなければならないので、その練習もしています。他には、お菓子作りをしたり、アニメを観たりしています。「Official髭男dism」のファンなので、ライブに行ったりもします。

――まみさんは、今、恋愛中ということですが、恋人に病気のことをどのように伝えていますか

付き合い始めの頃、Twitterで「病気のことを伝えたらフラれた」「病気が理由で結婚がダメになった」というような書き込みを見てしまって、「やっぱり病気のことを伝えるのはやめよう」と思い、最初は隠していたんです。でも、きちんと伝えた方が自分自身も気持ちがラクになると思い、少し経ってから伝えることにしました。

持病があることは伝えていたので「前に持病があるっていったじゃん。クローン病って知ってる…?」という感じで恐る恐る打ち明けたところ、なぜかクローン病を知っていたんです。聞いてみると、彼の家族にクローン病の人がいるとのことでした。本当にびっくりしましたね…。でも、病気の大変さとかエレンタールのことも知っていて、そういう話題が話せるのが嬉しかったですね。

――彼の身近にクローン病患者さんがいなかったとしても、伝えて良かったと思いますか?

はい。どこか出かけるにしても「おなかが途中で痛くなったらどうしよう」という不安がありますし、食事の面でも自分で気を使わなければならない部分があるので、「言えない」というのはやっぱりつらいと思います。私もたくさん悩んで自分で決めたので、伝えたことに後悔はありません。

――IBD患者さんにメッセージをお願いいたします

私はまだ発症して間もないので病気の対策などは何も伝えられないのですが、病気の情報収集や共有したいという想いでTwitterを始めたのは本当に良かったと思っています。みなさんのツイートを見ていると「つらいのは自分だけじゃないんだ」と思えますし、同じIBDの人同士でSNSを通してつながるのは、元気をもらうきっかけにもなるということをお伝えしたいですね。

病気と向き合うというのは大変なことですし、私自身もいろいろな症状が出てしまって大変でした。でも、やっぱり人生は楽しい方がいいと思うので、やるべきことが日々たくさんあると思いますが、無理せず「自分の身体第一」で過ごしていきましょう。

(IBDプラス編集部)

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