クローン病夫婦のリアルな毎日「IBDとともに生きるための10のヒント」(前編)

ライフ・はたらく2023/6/16

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今回ご紹介するのはクローン病のぷみさん・ゆちゃさんご夫婦です。硬派で繊細なぷみさんと、天真爛漫なゆちゃさん。真逆のタイプの二人が出逢い、ともに過ごしてきたこれまでの日々に詰まっている「IBDとともに生きていくためのヒント」を、前編・後編に分けてご紹介します!前編となる今回は、患者さん同士の恋愛・結婚、そして、一時どん底の状態に陥っていたというぷみさんが立ち直るまでの軌跡も、赤裸々に語っていただきました。

夫:ぷみさん(39歳/クローン病歴24年)、妻:ゆちゃさん(40歳/クローン病歴25年)

ゆちゃさんがクローン病で入院中に出会い、交際9年で結婚。結婚9年目。ぷみさんは介護職員、ゆちゃさんは専業主婦。趣味はキャンプ、ゲーム、麻雀。マルチーズ×トイプードルのミックスの愛犬テトちゃんとの日常をインスタグラムで公開しているほか、ライブ配信サービス「17LIVE」でペットが主役の配信を行うアニマルライバーでもある。配信中に、クローン病について話すことも。

はじめに:二人ともクローン病歴20年以上で手術も複数回経験

――おふたりの現在の病状と治療について教えてください

ゆちゃさん(以下、ゆ):2022年11月に腸を60cm切る手術を受け、今は狭窄もなく久々に良い状態なので、脂質制限をしながら好きなものを食べています。最初の手術は20歳くらいの頃で、今回が2回目ですね。長年レミケードを使っていたのですがステラーラに変えて、その後悪化して狭窄ができてしまいました。ステラーラが効いていないわけでは決してなく、レミケードがとても効いていたので、その時に無理をしていた反動がレミケードをやめた途端に来て、悪化したということでした。本当はもっと早く手術をするはずだったのですが、3か月に1回バルーン内視鏡で狭窄部分を拡張する治療を受けながら、2年くらい頑張っていました。でもついに限界が来て手術になりました。今はステラーラとエレンタールを使っています。

ぷみさん(以下、ぷ):僕は2021年に手術を受けました。妻と同じく狭窄をバルーン内視鏡拡張術でごまかしていたのですが、限界が来てしまい…。僕の場合はレミケードの副作用も出てしまって、それを抑える注射も打っていたので、妻と同じタイミングでステラーラに変えました。手術は過去に16歳、20歳、26歳で受けているので、4回目になりますね。大腸の長さはすでに半分くらいになっていて、小腸も次はもう切れないかもと言われています。今はステラーラ、アザニン、ペンタサ、エレンタール、胃薬と、胆石があるのでその薬も飲んでいます。

ヒント1:恋愛 同病の恋人はお互い初、何でも話せて理解し合えるメリットは大きい

――おふたりはいつ、どんなきっかけで出会われたのでしょうか

ゆ:出会いは18年前、入院中に知人を介して紹介されました。第一印象は「超チャラい!」ですね(笑)。

ぷ:僕は最初に会った時からいいなと思いましたが、妻に恋人がいたので友人として接していました。その後、妻が恋人と別れたのをきっかけにお付き合いするようになりました。

――お互いに同じIBDの人とお付き合いされるのは初めてでしたか

二人:はい、初めてです。

ぷ:妻の前は病気ではない人とお付き合いしていましたが、病気のことに関しては最初から「どうせ理解してもらえるわけない」と思いました。同病だと何でもわかってもらえるし、気を使わずに伝えられるので、僕はデメリットよりメリットの方がはるかに大きいと感じています。もちろん、二人とも働けなくなったらという金銭的な心配はありますが、精神面は本当に楽ですね。

ゆ:でも、反対に「同じ病気の人と付き合うのはイヤ」っていう人もいますよね。うちの夫も昔はそうだったようです。でも、歳を重ねた今は、同じ病気で良かったとお互い話しています。

ぷ:僕の場合は「自分が病気だ」と感じるのが嫌だったので、若い頃は同病の恋人なんて考えたこともありませんでした。

ゆ:私は真逆で、みんなに言いまくっていました(笑)。病気を隠した状態で好きな人ができたら大変じゃないですか。最初から伝えておけば、いざお付き合いする時も、病気のことを知っているので安心ですよね。

――同病であることのデメリットはありますか

ゆ:自分の調子が良くても、相手の調子が悪いと気持ちがわかるので、自分だけ好きなものは食べられないと思ってしまいます。

ぷ:後は、今日は悪くなってもいいから食べたいという時でも「それは絶対ダメ!」ってストップをかけられてしまうというのはありますね(笑)。妻はトイレの問題で水分摂取を避けるようなところがあります。僕は介護という仕事柄、脱水の怖さを知っているので「もっと取らないとダメだよ!」と口うるさく言ってしまいます。

ゆ:あと、一番大変なのはトイレの取り合いですね(笑)。

――お互いのご両親から、交際や結婚について何か言われたりはしませんでしたか

ぷ:付き合う時には二人とも病歴7年くらいだったので、お互いの両親もIBDについて理解していたように思います。

ゆ:結婚するまでの約10年、二人とも実家暮らしで互いの家に遊びに行っていたので、本当の家族のように仲が良かったです。なので、結婚の話が出た時は「やっと落ち着いたか」という感じでしたね。

ヒント2:社会復帰 引きこもり中に親の介護を経験。資格取得のモチベーションにつながった

――もっと早くに結婚ということにはならなかったのでしょうか

ゆ:二人とも体調が悪くて定職につけなかったというのが大きいですね。

ぷ:僕は高校を卒業してからすぐ建築業界に入って、肉体労働をしていました。そんな時にクローン病になって、膝も壊してしまったりして建築の仕事を辞め、その後、営業、飲食業、アパレル業など、本当にいろいろやりました。23歳くらいの時に全部嫌になってしまって働くことをやめて引きこもってしまったんです。妻と付き合って1年くらいの時でした。その後も変わらず支えてくれた妻のことを待たせているということに、常に焦りは感じていました。兄と姉は独立していましたし、周囲の友達が仕事に就いて結婚していくのも見ていましたから…。

ゆ:正直、いろんな人から「もう別れなよ」って言われました(笑)。でも、なぜか「この人はちゃんとなれる」って思えたんです。そんな時、入院中に夫が心を開いて仲良くできているのがお年寄りだということに気付いて、「介護の仕事なんていいんじゃない?」って言ってみたんです。最初は「介護なんて…」って感じでしたが、いざやってみたら合っていたようです。

ぷ:27歳くらいの時に親が入院して介護も経験して、「もっと自分がしっかりしなければ」と思ったんです。それでようやく踏ん切りがついて、前に進むことができました。その後、介護の資格を取得して介護の仕事に就きました。それで妻にようやくプロポーズできました。

ゆ:あんなに病んでいた人がここまで立ち直ったことに私が一番ビックリしています。人はそう簡単には変われないと思っていたので人は変われるということを、目の前でまじまじと見せてもらった感じです。

ヒント3:就職活動 面接時から病名だけでなく「起こり得るリスク」も説明

――介護職員として実際に働いてみていかがですか

ぷ:最初はグループホームで、今は特別養護老人ホームで働いています。どちらの職場も良い人ばかりで、病気のことも理解してくださっています。病気を隠して働くのは嫌だったので、面接の時に病名も、起こり得るリスクも説明しました。なので、トイレの回数が多い時も、上手くフォローしていただいています。今は月に5回くらい夜勤もしています。

――ゆちゃさんは専業主婦ということですが、いずれは働きたいとお考えですか

ゆ:私は夫に比べてトイレが頻回なので、なかなか難しいと思っています…。実家が自営なので、事務作業を在宅で手伝ったりしています。

ヒント4:病気を伝える 愛犬テトが仲介役。趣味を通じてなら心を開ける人もいる

――職場以外でのカミングアウトはどのようにされていますか

ぷ:隠すつもりは全くないのですが、病気の話を聞きたくないという人もいると思うので、積極的に話すことはないですね。最近はアニマルライバーとしてテトのライブ配信をしているので、その中で少し話すこともあります。妻がインスタグラムに病気のことを出しているので、それを見て配信を見に来てくれる人もちらほらいますね。

ゆ:テトの配信を通じて同じ病気や境遇の人が私たちに悩みを打ち明けて、少しでも楽になってくれたら嬉しいです。クローン病の患者さんでは、同じ病気の知り合いが1人もいないという人も珍しくありません。そんな人たちに少しでも寄り添うことができたらと思っています。

――おふたりにとって、テトちゃんの存在は大きそうですね!

ゆ:すごく大きいです!それまでトイレが心配で、近所のスーパーに行くのも不安でした。でも、テトが来てからは家を起点に1時間くらいお散歩するようになりました。テトを連れてコンビニのトイレを借りるのは難しいので、テトも入れるスペースがある多目的トイレのある公園の位置をチェックして、そこを必ず通るようにしています。

ヒント5:患者家族の支え方 体調が気分のバロメーター。さり気ない気遣いがポイント

――「患者家族」として相手を支える上で意識していることがあれば教えてください

ぷ:僕が心配性というのもありますが、「好きなことは何をやってもいいけど、絶対に無理はしないで」と常日頃から言っていますね。やはり病気のことは軽く考えないで欲しいと思っています。

ゆ:後は心のケアですね。「あ、落ちてるな」とか、常に心の浮き沈みを気にかけるようにしています。精神的に病んでしまう人は、根が真面目で神経質な人が多いように思います。夫も仕事の愚痴なんて絶対に言ってはいけないと思い込んでいるタイプだったので、「職場で言ったら悪口になるかもしれないけど、家で言う分には問題ないよ」と伝えました。話してくれるようになってからは、落ち込むことは少なくなったように思います。

ぷ:お互いに体調が悪い時は気持ちも落ちるとわかっているので、僕も「気にするなよ」と声をかけるようにしています。妻は、さり気なく僕の好物を出してくれたりします。鶏チャーシューとか、豆腐に片栗粉をつけて揚げ出し豆腐風にしてくれたものとか、おなかに負担がかからないものを。気を遣ってくれているのがわかるだけで、気持ちが楽になりますね。

ゆ:レンチンポテトとか、ささみチップスとかもよく作ります。何かで悩んでいる時に、食べ物のことでまで悩みたくないですからね。

(IBDプラス編集部)

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