仕事を通じて出会った「やりがい」。周囲のサポートがあれば長く続けられる
ライフ・はたらく | 2017/11/29
10〜20代といえば、多くの人々が学校に通いながら知識を身につけ、社会人として羽ばたいていく時期。しかし、クローン病や潰瘍性大腸炎は、比較的若年層で発症するケースが多く、大切な「学ぶ」・「働く」に対する影響は少なくありません。
今回は、高校生のときにクローン病と診断されたSさん(37歳)に「働く」ことについてお話を伺いました。2016年には大腸を全摘出し、2017年に入って本腰を入れて就職活動に取り組んだというSさん。これまでの仕事との関わり方、そして就職活動を通して感じたこととは?
Sさん(37歳、クローン病歴20年)
10〜20代は、入退院とアルバイトを繰り返す
——まず始めに、クローン病という診断を受けたころのお話を聞かせてください。
Sさん: 17歳のときに、痔ろうを発症したんですね。それで近所の病院に行ったら、先生から詳しい検査をするために大学病院を紹介されました。そこでクローン病という診断を受けたんです。痔ろうをくり抜く手術をしたのですが、当時所属していた野球部の合宿にも行けず、友達に言うのも恥ずかしかったですね。
——クローン病と診断される前は、将来のキャリアをどのように考えていましたか?
Sさん: 小さいころは漠然と「お医者さんになりたいなあ」と思っていましたが、中学生・高校生になると「将来はサラリーマンになって、ふつうに結婚して家族を養おう」と思っていました。
——高校を卒業してからの進路は?
Sさん : 高校のときは理数系の成績は良かったんですけど、英語が壊滅的で(笑)。進学することもなく、高校卒業後はフリーターです。友人に誘われて、焼肉店で約1年間アルバイトをしていました。
そろそろちゃんと就職しようかな、と思ったときに、再燃してしまって。毎日40度の熱が出て、少し動いただけでも激痛を感じました。このときは相当きつかったですね。そこで、大腸の一部と肛門を切除して、人工肛門を造設しました。それが20歳ぐらいのときです。
手術後、退院してからはまた別の友人に誘われて、居酒屋でアルバイトをしていました。深夜勤務もあって体力的にはキツいのですが、接客が楽しくて。居酒屋で2年ほど働き、その後は、契約社員としてメガネ・コンタクトレンズショップの販売スタッフをしていました。ただ、そこで働き始めて2〜3か月でまた再燃して入院し、退職しました。それからは、再燃して入院、退院したらアルバイト、また再燃して入院…を繰り返すようになりました。
アルバイトは、飲食・接客が中心です。ボウリング場のアルバイトやタクシー運転手、派遣会社に登録して配達のサポートや雑務を担当していたこともありました。
就職活動を通し、「やりがい」を感じられる仕事に出会う
——2016年に大腸を全摘出されたと伺いました。
Sさん: そうです。私はもともと痔ろうから発症しており、大腸型のクローン病でした。去年(2016年)の8月に大腸を全摘出。術後は寛解状態が続いており、これなら就職活動にも本腰を入れて取り組めるな、と感じたんです。そこで、まずはハローワークに行きまして。障がい者枠の求人で、警備員の仕事を見つけました。休みが比較的多く、条件や待遇もよかったのです。去年の10月から今年の春頃までは警備員をしていましたね。
——体力的には問題なかったのでしょうか?
Sさん: 求人票では問題ないはずだったのですが、実際には夜勤があって。それが少し辛かったですね。先ほどお話ししたように、若い頃には居酒屋で深夜勤務もしていましたが、若さゆえです(笑)。今はとてもじゃないけど、深夜に働くのは無理ですね。
警備員の仕事を辞めて、就職活動を再スタートさせたのは今年の3〜4月頃です。一般的な求人内容で働くことには不安があったので、障がい者枠の求人を調べました。
ハローワークにも行きましたが、リサーチは主にインターネットです。大手の就職サイトはもちろん、さまざまな求人情報をチェックしました。そのなかで、障がい者に特化した人材紹介会社を見つけまして。それがゼネラルパートナーズです。こちらに登録し、紹介していただいた会社に無事に就職することができたんです。
——Sさんはこれまでに、接客をメインにした業務経験をお持ちです。今回、就職活動するにあたって、どのような仕事を探していたのでしょう。
Sさん: 体力的な不安があったので、やはり事務職です。あとは、ゼネラルパートナーズからご提案を受けた大手企業のメールルームでの仕事も魅力的でしたね。大きな会社で働いた経験がないので、「大手企業で働く」という安心感が魅力のひとつ。そして、事務職のようにデスクワークだけではなく、社内に郵便物を配達するので社員の方々とのコミュニケーションが発生します。これまで培ってきた接客のスキルを活かせる点にも魅力を感じました。また、キャリアアドバイザーから障がい者の方でも長く働いてる人が多いと聞いて、興味を持ちましたね。
——最終的には、どのような企業に就職が決まったのでしょうか?
Sさん: ゼネラルパートナーズから紹介されたもうひとつの会社、携帯電話の販売代理店です。今年の7月に内定が出て、8月から契約社員として勤務がスタートしています。
入社の決め手になったのは、配慮が行き届いている点です。最終選考前には職場見学を実施してくれましたし、上司が「トイレに行きたくなったらいつでも言ってね」と声をかけてくれるなど、サポートがとても手厚いんです。自分の契約しているプランもわからないほど携帯電話の知識もなかった私ですが、一から研修制度で学ぶことができ、周囲もフォローしてくれます。
今は毎日が勉強ですね。携帯電話に関わる知識を学んで、さっそく自分の料金プランを変更しました(笑)。PCを使う仕事もはじめてですし、おぼえることは山ほどあります。本当に日々、勉強と挑戦の繰り返しです。フォローやサポートもあるので、ここでは長く続けられそうだなと実感していますね。
——どのような点に仕事のやりがいを感じていますか?
Sさん: やはり、お客様から感謝されることが一番のやりがいになっています。また、私の配属先は実は社内でNO.1の実績を誇る店舗。その実績に少しでも貢献できていると感じられる点も、やりがいに結びついていますね。
資格を取得することで、就職活動が有利になる
——これからのキャリアはどのようにお考えでしょうか?
Sさん: 今の病気は治らないという事実を受け止めて、病気とうまく付き合っていくしかないと思っています。私にとって再燃しないための対策はシンプルで、「規則正しい生活」です。特にきちんと寝ることは大事です。そうした生活をベースにしながら、まずは今の仕事でしっかりと独り立ちすることが目標です。知識を蓄えながら、大手通信キャリアの認定試験をパスし、将来的には正社員になって……結婚もしたいですね(笑)。
またさらに50〜60歳になったら、「地方で居酒屋をやりたいなあ」と思っています。やはり、食べることやお酒を飲むことが大好きなので。
——最後に、Sさんと同じくクローン病の方々へのメッセージをお願いします。
Sさん: 私が何か言える立場じゃありませんが、寛解時や若いうちに何かしら資格を取っておいたほうがよいと思います。クローン病だと、やはり体力的な不安からオフィスワークを目指すことになると思います。オフィスワークで役に立つ資格や、コンピュターやIT系の資格を取得することで就職活動が有利になるでしょう。いつか「いい日」が来ると信じて、みなさんとともに、私も頑張りたいと思っています。
(取材・執筆:眞田 幸剛)
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