IBD患者さん必見!難病医療費助成制度Q&A

ライフ・はたらく2024/10/28

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多くのIBD患者さんが利用している「難病医療費助成制度」ですが、誰でも助成を受けられるわけではありません。そこで今回は、取り上げて欲しいとの声も多くいただいていたこのテーマについて、厚生労働省 健康・生活衛生局 難病対策課の島田将広さんに、詳しく教えていただきました。

難病医療費助成制度ってどんな制度?軽症者は諦めるしかない?

Q 「難病医療費助成制度」とは、どのような制度なのか簡単に教えてください

指定難病患者のみなさまの医療費の負担軽減を図るとともに、患者さんのデータを効率的に収集して治療研究を推進するために、医療費の自己負担分の一部を助成している制度です。症状が一定程度の方と、軽症ではあるけれど一時的に医療費が一定以上の方が対象になります。

Q 「難病医療費助成制度」の申請手続きに関する公的な相談窓口はありますか

その場合には基本的に、ご自身がお住まいの都道府県あるいは政令指定都市の保健所等の相談窓口にお問い合わせください。基本的には保健所が窓口になっていますが、自治体によって異なりますので、ホームページなどでご確認ください。

Q 申請から結果通知までにはどのくらいかかりますか

自治体によって異なりますが、申請が受理されてから大体3か月くらい要します。自身で用意する書類、医師が用意する書類があり、準備に時間がかかりますので、申請しようかと悩まれている場合は、早めに医療機関などで相談していただくとよいでしょう。

Q 一度認定されたらずっと有効ですか

大体1年以内での更新となります。更新の際の提出書類も自治体ごとに若干異なりますが、必要書類のリストが一緒に渡されますので、そちらにしたがってご提出ください。

Q 不認定だった場合、再度申請することは可能ですか?可能な場合、再申請は翌年以降など決まりはありますか

可能です。再申請の時期に関して国で厳密なルールを定めているわけではありませんが、自治体によってはルールを設けている場合もございますので、事前にご確認いただきますようお願いいたします。

Q 認定された場合の自己負担額について教えて下さい

世帯年収(市町村民税の課税額)と状況によって上限額が設定されています。例えば、年収約810万円以上の場合は3万円、年収約370万円以上の場合は2万円です。金額に関しては、市町村民税の課税に関する書類を確認することになっておりますので、それを受けて自治体で決定し、受給者証に記載されます。

Q 申請する際に必要となる指定医の判定について教えてください

指定難病ごとに医療費助成の対象となる「診断基準」(重症度分類)と、「臨床調査個人票」(診断書)があります。「診断基準」(重症度分類)を指定医がチェックして「臨床調査個人票」(診断書)に記載するという流れになります。記載する医師も、IBD専門医であれば誰でも良いということではなく、「難病指定医(厚生労働大臣が定めた認定機関が認定する専門医の資格を持つ医師又は研修を修了した医師。詳しくは保健所や自治体にお問い合わせください)のみ可能」という点にご注意ください。また、疾病によっても異なりますが、記載するための検査に時間を要したり、院内で話し合いが必要になる場合もあるようですので、申請される場合は早めに医師に相談することが重要だと思います。

【参考】
診断基準や重症度分類については、以下のページをご覧ください。
指定難病の概要、診断基準等、臨床調査個人票(告示番号1~341)※令和6年4月1日より適用
  • クローン病(告示番号96)
  • 潰瘍性大腸炎(告示番号97)
なお、全国の指定医については、難病情報センターに「都道府県・指定都市別 難病指定医一覧」があります。

Q 「軽症高額該当」について教えてください

重症度が基準を満たさない場合でも、指定難病にかかる医療費の総額(医療保険の10割)が3万3,330円を超える月が1年に3回以上ある場合において「軽症高額該当」となり、原則1年以内(都道府県又は政令指定都市が決める期間)助成を受けることが可能です。所得制限はありません。

Q 申請してから受給者証が届くまでの期間にかかった医療費の払戻し請求は可能ですか?期限もあれば教えて下さい

はい、可能です。払い戻し請求の申請書類や領収書などの提出書類は自治体ごとのマニュアルがあるので、ご確認ください。何か月以内というような期限についてはあまり聞いたことがありませんが、こちらもあわせてご確認いただくのが良いと思います。

Q 「助成開始時期前倒し」という制度について教えてください

令和5年の10月から施行されている制度です。これまでは申請日から支給開始となっていましたが、新たな制度では、医療費助成の開始時期を、「重症度分類を満たしていることを診断した日」ということになりました。こちらも自治体で申請いただく際に、診断書の日付がいつになっているか、申請日がいつになっているかということで判定してもらいます。一般的に1か月前までさかのぼれることになっていますが、申請までに時間がかかってしまったり、体調不良で申請することができなかったといった事情がある場合は、最長で3か月までのさかのぼりが認められています。

Q 「高額療養費制度」について教えてください。「難病医療費助成制度」と併用できますか

高額療養費制度は、難病であるなしに関わらず、公的医療保険に入っている人が医療機関や薬局に支払った額が、ひと月(月の初めから終わりまで)に上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。

指定難病の医療費助成につきましては、高額療養費の上限額を超えた場合は、残りの分を「支払い可能額の上限まではお支払いする」ということになっています。ですから、この範囲内で併用することは可能です。

Q IBDが指定難病から外されないかと心配する声も聞かれますが、疾病ごとの見直しというのは行われているのでしょうか

現段階でどの疾病を外すという議論をしているわけではないのですが、厚生労働省の審議会で、制度の公平性や安定性を考える中で、難病を満たす要件について研究の進捗状況を踏まえて確認して、仮に今の時点で指定難病の要件に合致しないとみなされた場合は、見直しを行うかを検討し、判断するということになっています。その場合は経過措置もあわせて判断するという趣旨の検討が今行われています。

Q 過去に指定難病から外された事例はありますか?また、何年に1回など見直しの期間に決まりなどはあるのでしょうか

指定難病制度が始まってから外された事例はございません。また、何年に1回見直しを行うというような決まりもございません。だからこそ、他の疾病との公平性の観点から今見直しを進めている最中です。IBDに限りませんが、検討会では万が一指定難病から外すことが決まった場合でも、一定の経過措置を検討するべきだという意見が出ています。

IBD以外の治療でかかった医療費はどうなる?医療費助成の適用範囲は?

Q IBD以外に難病ではない別の疾患の治療を受けている場合、その医療費はどのようになりますか

あくまで助成対象となるのは指定難病に関係する治療のみですので、別の疾患に関する治療に関しては通常通りの医療保険の負担額になります。

Q IBD患者の栄養療法(経腸栄養剤など)に対する医療費助成の適用範囲を教えてください

製品ごとに決められているというわけではなく、総合的に見てIBDに付随して発生しているものか、関連するものかという基準で医師に判断していただきます。IBDに関連する大腸がんのスクリーニング検査などに関しても、同じような判断になると思います。

Q 小児IBDの患者さんが小児慢性特定疾病医療費助成制度から難病医療費助成制度に切り替えるタイミングを教えてください

小児慢性特定疾病医療費助成制度と難病医療費助成制度を比べてみた時に、小児慢性特定疾病医療費助成制度の方が、自己負担額が小さい制度になっていますので、こちらが使える20歳ギリギリまで使っていただいて、その後に切り替えるので良いかと思います。これ以外にも上乗せ制度などを設けている自治体もありますので、それらもふまえてご検討いただければ幸いです。

Q IBDの合併症の治療において、IBD指定病院以外での診療が必要になった場合、医療費助成は適用されますか

医療費助成の対象は「指定医療機関」に限られます。昔は決められた病院でなければ受け付けなかったのですが、今はルールが緩和され、指定医療機関であればどこを受診しても助成が受けられるようになりました。

IBD患者さんにメッセージをお願いします

マイナンバー保険証の利用促進を図っているなかで、まだ検討の段階ですが、受給者証もマイナンバーカードに統一できるのではという議論が進められています。電子化が進むにつれて「今までと違う」という部分も出てくるかと思いますが、どうかご理解いただければと思います。現状では自治体ごとに異なるルールなどがあり、自治体向けにQ&Aなどをお示ししてはいるものの、ルールを全国で統一となるとなかなか難しいのが現状です。ですが、電子化に伴って、今後、徐々に統一しやすくなっていくことも期待されます。

厚生労働省といたしましても、引き続き難病法の基本理念である「難病の克服」と「共生社会の実現」に向けた対策をこれからも進めていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

(IBDプラス編集部)

島田さん
厚生労働省 健康・生活衛生局 難病対策課 課長補佐
島田将広さん
大学時代に大好きだった祖父母の介護をしていたこと、船会社に勤務していた祖父の話を聞いて「歴史の裏側を体験できる仕事がしたい」と考えたことから厚生労働省に入省。医療保険、介護保険などを担当し、1年半の米国留学を挟んで2024年から現職。文系のため、医師の友人から参考書を借りたり、医療系の漫画を読んで勉強している。最近の趣味はYouTube Shortsで流れてきた美味しそうな料理を作ったり、ボリウッドのダンスを踊ること。

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