目標は、生涯美容師!潰瘍性大腸炎が「治る」日を願って

ライフ・はたらく2024/8/2 更新

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今回ご紹介するのは、美容師歴33年、多くの指名客を持ち、ディレクターとしてお店の信頼も厚い塩見清幸さんです。潰瘍性大腸炎発病当初は5-ASA製剤のみで多少の無理をしても何ともなかったそうですが、9年後に突然再燃。コロナ禍での入院など、大変な経験をされました。それでも第一線の美容師として、身体のしんどさを抱えながらもお客様に真摯に向き合い続ける塩見さんの強さの秘訣とは?接客業を目指す全ての方に向けた、厳しくも暖かいメッセージもいただきました。

塩見清幸さん(52歳/潰瘍性大腸炎歴19年)

美容師歴33年。現在は大阪の美容院のディレクターとして勤務している。2005年に潰瘍性大腸炎と診断されるも、その後は5-ASA製剤のみで寛解状態に。食事も特に気にせずこれまでとほとんど変わらない生活を続ける。しかし、2014年に再燃し、その後再び2020年に悪化するなど2度の絶飲食・入院を経験。現在も自分に合った治療を模索しながら、仕事と治療を継続中。最愛の妻と一人息子との3人暮らし。
Instagram
病気:https://www.instagram.com/yon_maru_san403/
プライベート:https://www.instagram.com/403shiomi/
お仕事:https://www.instagram.com/shiomi.52/

ほぼ寛解から9年後にまさかの再燃。「新型コロナ」感染にもおびえる入院生活

――発症時、どのような症状が現れましたか?

2005年、診断がつく2週間前くらいに突然血便が出て、驚いて病院に行きました。今思えば、昔からハンバーグとか食べるとよく下痢をしていたので、もともと胃腸が弱かったのかもしれません。ただ、どす黒い血が便に交じっているのは初めてだったので、これはアカンと、すぐに近くの総合病院に行きました。内視鏡検査をすることになり、その時に先生が「病名がつかないと検査できないから」と言っていたのですが、カルテに「大腸がん」って書かれていたんですよ。もうびっくりしてしまって…。麻酔なしで内視鏡検査したので何回も先生に「僕、がんなんですか??」って聞いてしまいましたが、すぐに「大腸がんじゃないよ。まだ調べないとわからないけど、おそらく潰瘍性大腸炎だと思う」と言われました。聞いたことのない病名だったので、すぐにネットで調べて、いろいろわかっていくうちに「一生薬を飲まないといけないのか…」と、どんどん絶望感に苛まれていきました。しかし、その後はペンタサのみで症状が落ち着いたため、仕事を長く続けていけるのかという多少の不安はあったものの、まだこの時は軽く考えていました。

――そのまま数年寛解状態が続き、2014年に突然再燃されたそうですね

発症した時と同じように何の前触れもなく血便が出て、即入院となりました。3週間入院したのですが、最初の1、2週間は絶飲食で起き上がるのもダメと言われました。でも、症状は微熱がある程度で腹痛も大したことはなく、寝たきりというのがとにかくつらかったです。職場の人や友人が心配してお見舞いに来てくれたのですが、動けないし、おむつもしてるし、かなり恥ずかしかったです(笑)。それでも退院後は、またペンタサのみ処方されました。

その後しばらく落ち着いていましたが、2020年頃から再び体調を崩し、ペンタサ坐剤が追加されました。しかし数か月経っても改善せず、レクタブルも追加になりました。それでも悪化する一方でトイレの回数は1日15回位になり、下血と下痢が止まらず、制御不能になりました。仕事はおむつをして何とかやっていましたが、切っている最中に何度も中断してトイレに行くような状態でした。トイレの回数が1日30回になった頃には痛みも激痛で我慢できなくなり、主治医の先生に頼んで入院させてもらいました。絶飲食で、この時初めてプレドニンが処方されました。

コロナ禍だったので、散々医師から「ステロイドを飲んでいるとコロナに感染しやすいから気を付けてね」と言われていました。気分転換にテレビをつけてもコロナで何人死亡したというニュースばかり…。それなのに、うちの病院はなぜか制限が緩く、面会もOKだったので、僕から病院に「面会を禁止して欲しい」とお願いするくらいでした。最初は4人部屋でしたがトイレが間に合わないため、途中で個室にしてもらいました。35日後に一度退院しましたが、ステロイドを減量していくうちにまた下痢が止まらなくなってしまい、再び入院。今度は70日間の入院をし、レミケード治療を開始しました。ステロイドの減量がなかなか大変でしたね。5mgくらいまで減らすとまた体調が悪くなってきて…。ただ、ステロイドはずっと続けられないということでイムランに変えました。現在はレミケード、レクタブル、イムラン、リアルダ、コレチメントで治療しています。副作用なのか、倦怠感でしんどい時もあります。もっと楽な治療が出てくれたらいいんですけどね。

お客様にとっての最高のスタイルを目指して。おむつは仕事の必需品

――美容師として勤務されているとのことですが、大体の一日の流れを教えてください

高校を卒業してからずっと美容師をやっているので、もう33年になります。今のお店ではディレクターをやらせていただいていますが、もう勤続15年くらいになりますね。腹痛が起きないか心配で電車通勤は無理なので、今の職場も自宅から自転車で10分くらいです。月曜が定休日で、それ以外は不定休です。朝9時に出勤して閉店までに大体1日10人前後のお客様を担当しています。日によりますが大体20時くらいまではお店にいますね。美容師は休憩時間という概念があまりなく、お客様がいない時間帯が休憩という感じです。食事も各々空いた時間に取るので、その点は気が楽です。

――職場の人にもお客様にも、病気のことを伝えているそうですね

はい。シャンプー中でも急にトイレに行きたくなってしまうことがあるのですが、そういう時は目で合図するとすぐに代わってくれるので、すごく助かっています。助け合いの精神で、僕自身も日頃からできるだけフォローするように心がけています。急な体調不良で予約をキャンセルさせていただく時は、お客様に自分で連絡します。病気のことを伝えている人がほとんどなので、みなさん快く日程変更してくださいます。職場の仲間とお客様には、本当に恵まれていると日々感じています。

――仕事をする上で、悪化しないために「働き方」で工夫したこと、変えたことはありますか

「思っても、できない」というのが正直なところです(笑)。きちんと食べた方がいいとわかっていても、忙しければ食事をするヒマもありません。もっと休んだ方がいいのかもしれないですが、僕を含め、ほとんどの美容師の給料は歩合制なので、たくさん働かないとやっていけないと思います。僕の場合、18時過ぎると身体がしんどくなってくるので「働ける時間にタイムリミットがある」って感じですね。また、体調が良い時でもトイレを我慢するのが難しいので、毎日おむつをして仕事をするようにしています。お店のトイレが空いてないこともありますし。それでも指名してくれるお客様のために、毎日頑張っています。

美容師の道は決して甘くない。やると決めたら「覚悟」を持って

――IBD患者さんで美容師を目指している方へのアドバイスをお願いします

美容師の仕事はハードですし、トイレ問題も想像以上に大変です。個人的には美容師に限らず、接客業はあまりお勧めしませんね。それでもやりたいと思うのであれば、まずはおむつを抵抗なくつける覚悟が最低限必要だと思います。

あとはとにかく、お客様の方だけを見てひたむきに仕事に励んでいれば、おのずと結果はついて来るんじゃないですかね。例えば、うちの店だとカット代と指名料で6,000円以上します。一方で1,000円カットの店もあります。その差額にある「価値」といいますか、それを払ってでも来てくださるお客様の気持ちを、決して忘れないことが大切だと思います。

――IBD 患者さんにメッセージをお願いします

美容師という仕事は好きですし誇りも持っているので、身体が動くうちは続けていきたいと思っています。僕を指名して来てくれるお客様もたくさんいますし、20年以上のお付き合いの方もいます。その人たちが喜んで帰る姿を見るのは本当に嬉しいので、身体がキツくても、そう簡単に辞められないという気持ちはありますね。それと、これだけ医療が進歩しているのですから、症状を抑えるのではなく根本から治せるような薬が一日も早くできることを心から願っています。他のIBD患者さんも同じ気持ちだと思いますが、それが実現する日まで、お互い頑張りましょう!

(IBDプラス編集部)

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