小学生のIBD患者さんとご家族にインタビュー~潰瘍性大腸炎編

ライフ・はたらく2024/12/18

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小児の潰瘍性大腸炎の患者さんは、どこでどのような治療を受けている?日頃から何に気を付けているの?おやつは?保護者と学校はどのように連携をとっているの?――。今回は、IBDプラス編集部へのリクエストが多かった「小学生の潰瘍性大腸炎患者さんご本人とご家族」に取材しました。

UC
患者さんのプロフィール
現在の年齢:現在の年齢:10歳(小学5年生の女の子)
症状が出始めた年齢:8歳
診断を受けた年齢:8歳
居住エリア:関東地方
通院している病院:小児専門の医療施設
習い事:ピアノ(発症前から)、ジャズダンス(発症後から)
 

病状と治療、通院している病院のこと

――症状が現れてから診断に至るまでの経過を教えてください

ママ:娘は3年生の6月、突然の粘血便が出ました。少量でしたが下着に血が付着していていました。熱や腹痛といった他の症状があったわけではなかったので、その日は家で様子を見て、翌日に近所の小児科を受診。粘血便の画像も見せましたがこの時は「おなかの風邪かな?」と言われ、整腸剤と抗菌薬を処方されました。しかし内服しても良くなるどころか悪化していったので、改めて小児科を受診したところ、「潰瘍性大腸炎の可能性がある」との話があり、大きな病院に移ることになりました。

娘は乳幼児期に小児専門病院に定期受診していたことがあったので、今回もその病院を紹介してほしいと伝えました。ところが、その病院に移るまでの間に急激に悪化してしまい、一旦、別の病院に緊急入院。数日後、改めて希望した転院先へと移りました。そこで詳細な検査を受け、潰瘍性大腸炎と診断を受けました。粘血便が出た日から診断を受けるまでは約1か月です。

――通院している病院について教えてください

パパ:自宅から車で約1時間の範囲にあり、コロナ禍ではありましたが、両親は面会することができました。施設内のプレイルームはおもちゃが充実していて、遊び時間もあり、いい意味で「病院らしさ」がなく、楽しい雰囲気があります。保育士さんが友達づくりを手助けしてくれたりもしました。娘はその病院が好きで、採血や注射もさほど嫌がらないのですが、病院の環境がそう思わせてくれているのかもしれません。入院期間が長くなってきた頃に「面会来なくていいよ」と言われ、逆に悲しかったです(笑)。

長期療養が必要なので、小児専門の病院にかかることができたことは、娘にとっても、私たち親にとってもすごくよかったと思っています。娘は来年6年生になります。移行期を経て、成人を診る病院に移る話も出てきてはいます。

――急に症状が出たり入院することになって、どんな気持ちでしたか?

お子さん:はじめに血が出た時、怖くてびっくりしました。そして、入院することになった時は、急にパパとママと離れて過ごすことになり、寂しかったです。

――診断後から現在までの治療について教えてください

ママ:入院して絶食すると症状がおさまりました。ペンタサとイムランが処方されたのですが、2週間経過した頃、急に悪化。5-ASA不耐の可能性があったので検査をしてもらったところ、不耐と言い切れるほどではないとのことでしたが、ペンタサを飲み始めてからの悪化なので、ペンタサをストップして、ステロイドとイムランを使うようになりました。この頃は左結腸型だったので注腸フォームも勧められたので試しましたが、おしりから何かを入れることを断固拒否…でした。

ステロイドを減量していくと血便が出てきてしまう状態が続いていたため、4年生の夏に検査入院。内視鏡で改善が見られなかったので、レミケードを開始しました。月1回の投与でしたが、秋になっても血便は続いたまま…。再度検査入院を検討していたところで、再燃悪化(左結腸型から全大腸型へ)。これを機にレミケードからステラーラに変更しました。

それから数か月してようやく寛解状態となりステロイドの内服も中止できました。今は血便もなく安定していて、月に1回くらいの頻度で受診しています。

――これまでの治療でつらかったとこはありましたか?

ママ:ステロイド使用期間中の副作用でしょうか。気分の浮き沈みがあって、つらそうでした。気持ちのコントロールが難しく、「学校行かない」と急に言うこともありました。また、貧血もあり、だるそうで、疲れやすいという印象でした。出血がないのに貧血が改善しないという期間も長かったので、鉄分が多いものを食べるなどの工夫もしました。。

学校のこと、お友達への病気の伝え方

――学校へはどのように病状を説明されましたか?

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(左)「潰瘍性大腸炎の生徒のための手引き」(EAファーマ)
(右)小中高校教員に知っていただくための潰瘍性大腸炎ガイドブック「先生、あのね・・・ 潰瘍性大腸炎なの」(IBDネットワーク)

ママ:インターネットで見つけた説明に使えそうな資料を印刷して、娘の病状、治療薬のことなどを書いて持っていき、先生に説明しました。

最初の退院の時はまだステロイド使用中で、感染症対策が必須。常時マスク着用、給食前の手洗いとうがいをさせてほしいということもお願いしました。また、娘は「病気の名前を言わないで」と希望していたので、担任の先生からクラスのお友達には「おなかの病気」と説明してもらい、給食をしばらく食べられなかったので「お弁当を持ってくるよ」と伝えてもらいました。

――給食について、どのようなことに気を付けていますか?

ママ:毎月の献立表のチェックに加えて、詳細な成分表をもらって、脂質を計算しています。給食1食で15g以内、1日3食で35〜40g以内(そのうちおやつ4g)を目安にしています。牛乳はなし、脂質が高いものは、自宅からおかずを持参して置き換えて食べる形にしています。献立の中でも配慮してほしいメニューについては、あらかじめ表に印をつけたものを先生に渡して伝えています。クラスのお友達もその存在を知ってくれていますし、「これは大丈夫?」と聞いてくれたりしているみたいです。

――そのほか、学校に依頼していることはありますか?

ママ:切迫する便意とかはあまりないので、これまでは大きなトラブルはないのですが、着替え一式は保健室に置かせてもらっています。また、学校のトイレでお通じに血が混ざっていた場合は、担任の先生か保健の先生に伝えること、そして、先生には早退できるようにしてほしいと伝えてあります。

おうちでの好きなごはん、作り分けについて

――ご家族の食事は作り分けなどされていますか?

ママ:カレーの甘口・辛口とかは分けますが、作り分けすることはほぼなく、家族で一緒のものを食べています。お肉は鶏むね・もも肉、鶏もも肉、豚もも肉(どれも脂を全て取って)、ひき肉なら鶏むね肉のみのものを選んでいます。最近、魚を嫌がって食べないのですが、お肉と魚をなるべく交互に食べられるようには心がけています。

――好きな食べ物は何ですか?

お子さん:(市販の)チーズ入りのはんぺんです。(ママ補足:もともとチーズが好き)

ママ:娘は入院中に毎日、病院食の写真を撮ってくれていて、それを自宅で作ったりしています。くるま麩の中に鶏ひき肉が入っているおかずがとてもおいしかったようで、それは結構作ります。「まんぞく君」やアレルギー対応のパン(成分表が一目でわかる)は給食の置き換えとしても使っていますし、鶏むね肉を麹で味付けしたから揚げ(冷凍食品)などもよく好んで食べますね。将来、自分で判断できるよう、一緒に買い物に行って、成分表などを見て買うようにもしています。

――病気に関連して食事で困ることはありますか?

ママ:外食の時、でしょうか。家族だけなら大丈夫ですが、例えば、お友達とどこかに行って食べようとなった時、子どもが好むごはん(脂質が高いものが多い)のお店だとメニュー選びに少し困ることはあります。主治医の先生は、「チートデーだと思って」とアドバイスをしてくださっているので、そういう時は食べてみています。その時はミートソースのパスタを選びました。

小児IBD患者さんのご家族へのアドバイス

――最後に、IBDの小児患者さんやご家族へのメッセージをお願いします

ママ:内部疾患は見た目ではわかりにくいですよね。私は「病気のことを、もっとお友達に話していいんだよ」と娘には伝えています。これまで4度の入院を経験して、がんばってきたことや、うれしかったことなどを周囲に話すことで、振り返りにもつながり、がんばってきたことに対して自信がついてくれたらと思っています。

入院中に違う病気のお子さんやご家族と仲良くなり、今も仲良くしている方が何人かいます。病気は違っても、同じような心境を経験していてわかりあえるし、「同士」という感じで、心強く、話をしているだけでも前向きになれました。IBDの小児の患者さんと出会う機会は多くはないのではないかと思いますが、他の慢性疾患のお子さんやご家族との関わりをつくってみることもいいのではないかと思っています。

(IBDプラス編集部)

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