幼児期の衝動性やストレス反応に「腸内細菌」が関与することが判明

ニュース , 腸内細菌を学ぶ2024/9/17

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幼児期の「不快・ストレス」の感じやすさと腸内細菌との関係は?

京都大学の研究グループは、幼児期の「気質」が腸内細菌叢と関連することを明らかにしたと発表しました。

気質とは、環境刺激に対する反応や、それを制御する行動の個人差のことを指します。生後すぐに現れ、一定期間持続する遺伝的要因が大きい特性と考えられています。気質の中でも「不快情動(編集部注:敵や恐ろしいものを見た時などに不快と感じる脳の反応)」や「ストレス反応」の個人差は、後の問題行動や精神疾患と関連することが知られており、リスクを早期発見し得る指標の一つとして注目されています。

近年のヒト成人を対象とした研究により、うつや不安障害などの精神疾患が腸内細菌叢と関連することが知られていますが、生後早期の気質、特に精神行動リスクに関わる不快情動やストレス反応特性が腸内細菌叢と関連するか否かについては明らかにされていませんでした。

3~4歳の日本人幼児 284人の日常場面での様子と腸内細菌叢を調査

そこで研究グループは今回、全国の保育園・幼稚園・こども園に通う3~4歳の日本人幼児 284人を対象に、気質と腸内細菌叢を調べました。参加児の母親に92項目からなる質問紙に回答を依頼。過去 2 週間の日常場面で、それぞれどの程度みられたかを7 段階(「1. まったくみられなかった」~「7. いつもみられた」)で評定してもらい、得点化して評価しました。

さらに、専用キットを用いて家庭で子どもの糞便の採取を依頼。次世代シーケンサーを用いて糞便内の腸内細菌叢の「多様性」「構成の違い」を評価しました。また、腸内細菌叢の構成の違いにどの菌が寄与しているかを詳細に検討するため、「各菌が全体の菌の中で占める割合(占有率)」も算出しました。

幼児期の気質と「炎症の誘発に関連する菌」や「抗炎症作用に関連する菌」が関連

その結果、腸内細菌叢の構成の違いは、不快情動やストレス反応の表出の多さ、さらには快情動の表出や新奇な環境や刺激に対する探索接近行動の低さと関連することが明らかになりました。

腸内細菌叢の構成の違いに寄与する腸内細菌を調べたところ、炎症の誘発に関連する菌(フラボニフラクター、エガセラなど)や、抗炎症作用に関連する菌(フィーカリバクテリウムなど)が、幼児期の気質と関連をもつことが示されました。

腸内細菌叢の多様性が高い子は、新しいことに挑戦したり動機にもとづいて行動しやすい

また、腸内細菌の多様性は「衝動性」と正の関連がみられたことから、腸内細菌叢の多様性が高い子どもほど「新しいことに挑戦したり、動機にもとづいて行動しやすい」という特性をもつことがわかりました。

腸内細菌叢を幼少期に改善することで、メンタルヘルスのリスクを緩和・予防できる可能性

研究グループは「気質に腸内細菌叢が関連していたことから、腸内細菌叢を幼少期に改善することで、メンタルヘルスのリスクを緩和・予防できる可能性がある。今後は、本研究結果(仮説)を長期縦断的に検証していくことや、腸内細菌叢を改善する介入(食生活習慣への介入やプロバイオティクス投与)によって検証を行う必要がある。将来的には子どもの心身の健康を早期にかつ客観的にスクリーニングする手法や、個々の心身の特性に合わせた個別型の発達支援法の開発なども期待できる」と、述べています。

(IBDプラス編集部)

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