腸に住み着いた、ある口内細菌が腸炎発症に関与?

ニュース2017/11/2

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クローン病患者の口内細菌が腸に与える影響を調査

お腹の中や口の中など、私たちの身体にはたくさんの菌(常在細菌)が住んでいます。これらの細菌は、免疫や生理機能へ影響を与えることで健康の維持に貢献しています。腸のなかにもさまざまな細菌が住んでおり、腸内細菌叢を構成しています。潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)をはじめとする、さまざまな腸の病気の発症にも、この腸内細菌叢を構成する細菌の種類数やバランスの変化が関与していると考えられています。しかし、腸内細菌叢の変化と腸の病気の発症については、なお不明な点が残されていました。

慶應義塾大学と理化学研究所、早稲田大学らの研究グループは、口の中の細菌(口腔細菌)に注目。IBDや大腸がんの患者では、便の中に口腔細菌が多く含まれていることから、腸の中に口腔細菌が定着した結果、腸の免疫機構に影響して病気につながっているのではないかと考え、研究を進めました。

研究では、クローン病患者の唾液をマウスに投与して、その口腔細菌が腸の免疫機構へ与える影響を調査。すると、Th1という細胞が増加していることがわかりました。Th1は、細胞に寄生する細菌に対して感染を防ぐ役割を担いますが、その一方で、過剰に活性化すると自己免疫疾患の発症につながるとされています。

腸内細菌叢の乱れが、口腔細菌の定着を許す

通常時は腸内細菌がクレブシエラ菌の定着を阻止しているが…
(画像はプレスリリースより)

さらに研究グループは、Th1を増加させる細菌もつきとめました。クレブシエラ・ニューモニエという細菌で、通常の腸内細菌が存在しているマウスでは腸に定着しませんが、抗生物質を使用して腸内細菌叢が変化したマウスでは、その腸に定着。腸内でTh1が増えることがわかりました。

また、クレブシエラ・ニューモニエの腸への定着がクローン病の発症や悪化に関わっているかを調べるため、免疫を抑制する機能をもつタンパク質が働かないマウスの腸に、クレブシエラ・ニューモニエを定着させたところ、強い炎症が起こることを確認。この細菌が腸へ定着することでTh1が過剰に活性化し、宿主の遺伝型によっては腸に炎症を引き起こす可能性があることが示されました。

潰瘍性大腸炎患者の口腔細菌を用いた実験でも同様に、マウスの腸で、クレブシエラ属菌の定着とTh1細胞の増加が認められました。くわえて、健康な人の口腔細菌にもクレブシエラ・ニューモニエが含まれていることも確認。研究グループは、長期に渡り抗生物質を過剰に服用した場合には、健康な人でもクレブシエラ属の細菌が腸の中に定着する可能性があるとしています。

腸に炎症を起こす可能性が明らかになったクレブシエラ属の細菌。この発見が、IBDの治療につながることが期待されます。

(IBDプラス編集部)

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