トレムフィア(一般名:グセルクマブ)
潰瘍性大腸炎の治療で使用する主なお薬一覧 | 2026/4/13
潰瘍性大腸炎は、本来は体を守るはずの免疫システムが異常を起こし、自分自身の腸の粘膜を攻撃してしまうことで発症します。これにより大腸の粘膜の広範囲に連続した潰瘍などの炎症が生じることが特徴です。主に血便や下痢、腹痛などの症状がみられます。トレムフィアは、これまでの治療(ステロイドや他の免疫調節薬など)で十分な効果が得られない場合に使用される新しい作用機序の治療薬です。
監修者:薬剤師 百武友加
効能・効果
炎症を引き起こす司令塔の役割を果たすのが「サイトカイン」と呼ばれる物質です。トレムフィアは、数あるサイトカインの中でも特に、炎症を起こす細胞を活性化させることで炎症を起こす「インターロイキン-23(IL-23)」という物質を標的としています。トレムフィアがピンポイントでIL-23の働きを弱めることで、腸管内での過剰な炎症反応を抑え、傷ついた粘膜の修復を促します。これにより、症状を抑えるだけでなく、長期的に安定した状態(寛解)を維持することを目指します。
トレムフィアの特徴
トレムフィアは「ヒト型抗IL-23p19モノクローナル抗体」と呼ばれる生物学的製剤です。IL-23には「p19」と「p40」という2つの部分から構成されていますが、トレムフィアはそのうち「p19」の部分を選び分けて結合します。これにより、他の免疫経路への影響を最小限に抑えつつ、潰瘍性大腸炎に強く関連するIL-23の働きのみを効率的に遮断できるのが大きな特徴です。
使用上の注意
- 重篤な感染症にかかっている、もしくは活動性の結核にかかっている方、また、過去に本剤に含まれる成分にアレルギー症状を起こしたことがある方は、本剤による治療を受けられません。
- 免疫の働きを一部抑制するため、感染症(細菌、ウイルスなど)にかかりやすくなったり、潜在的な感染症が悪化したりする可能性があります。
- 投与開始前に、結核やB型肝炎などの持続的な感染症がないか、血液検査や胸部レントゲン検査で確認が必要です。
- 発熱、のどの痛み、倦怠感など、感染症を疑う症状があらわれた場合は、速やかに主治医に連絡してください。
- 妊娠中、または妊娠の可能性がある方、授乳中の方は必ず主治医に相談してください。治療の有益性とリスクを慎重に判断します。
- 維持期に自己注射を行う場合は、適切な手技の指導を受けた後、医師の指示に従って実施してください。
併用禁忌・併用注意
- 麻しん・風疹ワクチン、BCG、水痘ワクチンなどの「生ワクチン」を接種すると、ワクチン由来の感染症を発症するおそれがあるため、投与期間中および投与終了後から一定期間は接種を控えてください。
- 他の生物学的製剤との併用については、安全性や有効性が確立されていないため、原則として避ける必要があります。
用法・用量
治療開始時(寛解導入療法): 通常、成人にはグセルクマブとして1回200mgを初回、4週後、8週後に点滴投与します。継続治療時(寛解維持療法): 導入期終了の4週後(初回から12週目)からは、患者さんの状態によって1回200mgを4週間隔または1回100mgを8週間隔で継続します。
副作用
主な副作用として、鼻咽頭炎(風邪のような症状)、頭痛、注射部位の反応(赤み、腫れ、痛み)などがあらわれる場合があります。また、以下の重篤な症状には注意が必要です。
- 発熱、咳、呼吸困難、激しい倦怠感: [重篤な感染症(肺炎、敗血症など)]
- 血圧低下、息苦しさ、じんましん、顔面の浮腫: [重篤な過敏症反応(アナフィラキシー)]
コラム
トレムフィアの大きな特徴は、治療の段階に合わせて投与方法が変わる点です。最初の3回(0, 4, 8週)は病院のベッドやリクライニングチェアでゆっくりと「点滴」を行い、炎症を一気に抑え込みます。その後、状態が安定する維持期に入ると、通院の負担を軽減しやすい「皮下注射」へと移行します。維持期の皮下注射は、通院時に医療従事者が行うほか、医師が「可能である」と判断した場合には、ご自身やご家族が自宅で行う「自己注射」に切り替えることもできます。ご自身のライフスタイルに合わせた治療継続がしやすいお薬と言えます。皮下注射の部位は下腹部や太ももの前側、二の腕の外側などが推奨されますが、同じ部位に繰り返し注射しないことがポイントです。

