潰瘍性大腸炎の治療法-薬を使った内科的治療から手術による外科的治療まで-

潰瘍性大腸炎2019/4/9

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1.潰瘍性大腸炎の治療法を知る前に

1-1 潰瘍性大腸炎ってどんな病気?

潰瘍性大腸炎(UC)とは、大腸粘膜の内側の層に炎症が起こり、びらんや潰瘍を形成する原因不明の疾患です。病変は直腸から連続的に・口側(上行性)にひろがります。血便の症状から始まることが多く、「痔」と勘違いしやすいので注意が必要です。

根治療法はまだ確立されていないため、腸の炎症を改善し、健康な人と変わらない生活が送れる「寛解状態」をできるだけ長く維持することが最大の治療目標となります。

1-2 潰瘍性大腸炎の症状

潰瘍性大腸炎では、病気の重さ、罹患している範囲、年齢などに応じて異なりますが、以下のような症状が現れます。最も代表的な症状は血便、粘血便であり、診断基準の項目にもあげられています。

・腹痛
・下痢
・下血
・血便、粘血便
・残便感
・しぶり腹(頻回に便意を催すが、少量しか出ない状態)
・発熱
・食欲不振
・貧血
・体重減少
・倦怠感

1-3 潰瘍性大腸炎の病型分類

潰瘍性大腸炎は、病変部位によって、大きく分けると以下の3種類になります。

潰瘍性大腸炎
・直腸炎型:炎症が直腸に留まっている
・左側大腸炎型:炎症が直腸から下行結腸脾彎曲部までに留まっている
・全大腸炎型:炎症が大腸全体に及んでいる

※「右側あるいは区域性大腸炎」が加わる場合もあります。

1-4 潰瘍性大腸炎の重症度分類

潰瘍性大腸炎の重症度は「軽症」「中等症」「重症」があり、重症の中でも特に症状が激しく重篤なものを「劇症」とします。潰瘍性大腸炎の治療では自分が今どのくらいの状態なのかが非常に重要ですので、主治医にしっかり確認し、自分でも把握しておくようにしましょう。

重症 中等症 軽症
(1)排便回数 6回以上 重症と軽症との中間 4回以下
(2)顕血便 (+++) (+)~(-)
(3)発熱 37.5℃以上 (-)
(4)頻脈 90/分以上 (-)
(5)貧血 Hb10g/dL以下 (-)
(6)赤沈 30mm/h以上 正常
・重症は(1)(2)のほかに(3)(4)のいずれかを満たし、かつ6項目のうち4項目以上を満たすもの
・軽症は6項目すべて満たすものとする
・重症の中でも特に症状が激しく重篤なものを劇症とし、発症の経過により、急性劇症型と再燃劇症型に分ける
・劇症の診断基準は以下の5項目をすべて満たすもの
①重症基準を満たしている
②15回/日以上の血性下痢が続いている
③38度以上の持続する高熱がある
④10,000/mm3以上の白血球増多がある
⑤強い腹痛がある

(平成29年度 改訂版(平成30年3月)潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針より一部改変)

2.潰瘍性大腸炎の内科的治療

潰瘍性大腸炎の内科的治療では、まず重症度と病型を調べ、その人の症状に合った薬を使用します。根治療法はまだありませんが、正しい治療を継続することで増悪・再燃を防ぎ、寛解状態を長期的に維持することが可能です。

2-1 5-ASA製剤

5-ASA(5-アミノサリチル酸)製剤は、IBDの治療薬として古くからあるお薬で、潰瘍性大腸炎でも第一選択薬として用いられています。薬剤の作用機序はいくつか考えられていますが、腸内で局所的に働き、細胞に炎症を引き起こす原因となる活性酸素やロイコトリエンの生成を抑えます。

サラゾスルファピリジンは、5-ASAとスルファピリジン(SP)の化合物です。服用すると、大腸の中の細菌により、5-ASAとスルファピリジン(SP)に分解・吸収され、有効成分である5-ASAが腹痛・下痢・血便などの症状を抑えます。しかし、スルファピリジンの副作用(アレルギー症状、発熱、男性不妊など)や薬剤の色素である橙色の着色(コンタクトレンズが着色したり、涙や尿に色がつく)が問題視されていました。

それらの問題を解決すべくスルファピリジンを除き、有効成分の5-ASAのみを取り出した薬として開発されたのがメサラジンです。メサラジンを腸管局所で作用させるためには、胃や小腸で吸収されずに大腸まで届ける必要があります。これにはいくつかの方法があり、薬剤によって異なります。

5-ASA製剤は、活動期には腹痛・下痢・血便などの主症状を抑えることを目的に、寛解期には寛解持続を目的として使用します。約50~80%の活動期のIBD患者さんが、5-ASA製剤のみでの寛解導入が可能とされており、サラゾスルファピリジン、メサラジンのどちらでも同様の効果が得られます。

■サラゾピリン(一般名:サラゾスルファピリジン)
最も古くから使用されている5-ASA製剤。大腸内の細菌により、5-ASAとスルファピリジンに分解・吸収されます。

■ペンタサ(一般名:メサラジン)
5-ASAのみでつくられた薬剤。内服後、時間経過とともに徐々にメサラジンが放出されることで大腸に届ける仕組みとなっています。副作用が少ない一方で、直腸など遠位大腸までは薬の効き目が届きにくいため、直腸に炎症がある場合はサラゾピリンや他の5-ASA製剤の方が適している場合があります。ただし、下痢が高度な場合は、後述するコーティング製剤が無効な場合があり、あえて本剤を用いることがあります。

■アサコール(一般名:メサラジン)
5-ASAが人体に無害な化学物質でコーティングされており、pH7以上になるとコーティングが溶け、大腸にメサラジンが届くよう設計された腸溶性剤です。下部消化管(回腸末端~大腸)に到達してから5-ASAが放出されるため、大腸への選択性が高いと考えられています。

■リアルダ(一般名:メサラジン)
アサコール同様に5-ASAをpH応答性物質でコーティングし、大腸付近で溶けるように設計されています。また、マルチマトリックスという新しい製剤技術により、大腸全域で持続的に有効成分が放出されます。大腸にまんべんなくメサラジンが届けられることや4.8gという高用量のメサラジンを1回で内服することで効果が高いと考えられています。

2-2 ステロイド(副腎皮質ホルモン)

ステロイドは、副腎で作られるホルモンの一種「糖質コルチコイド」の成分を合成してつくった薬剤です。非常に強力な炎症抑制効果があることから、IBDの特に中等症以上の治療で多く使用されています。

通常、迅速に効果を発揮し、短期的には極めて効果が高い薬剤ですが、IBDに対しては寛解維持効果はありません。無意味な「長期投与」や「短期間での繰り返し投与」は、副作用や合併症を招く原因になります。寛解導入後はできるだけ早い段階での中止を目指しますが、無理な減量・中止は、体内のステロイドホルモンが不足している状態になり、頭痛、吐き気、血圧低下などの離脱症状が起こることがあるので、徐々に減量していきます。

ステロイドについては他の薬剤に比べ、副作用や依存性などの知識を持っている患者さんが多いようです。そのため、なかには「怖い薬」と思っている人もいるのではないでしょうか。しかし、正しく服用すれば副作用も最小限に抑えられます。IBDの活動期の治療ではステロイドを凌ぐ治療法は見つかっていないとも言われていますので、医師に処方されたらむやみに怖がるのではなく、不安なことや使用期間について相談してみましょう。

ステロイドはジェネリック医薬品も合わせるとたくさんの種類があります。剤形も、錠剤のほか、注腸剤、坐剤、注射剤などさまざまです。最近では、直腸からS状結腸まで泡が広がり、立ったままで薬剤を投与できる注腸フォーム剤(レクタブル/一般名:ブデソニド)も登場しました。同剤が腸内で到達する範囲はおおむねS状結腸までです。これより深部に病変がある患者さんにも用いることはありますが、他の薬剤や治療と併用して行うことがほとんどです。

2-3 チオプリン製剤(免疫調節薬)

チオプリン製剤は、免疫の過剰な働きを抑えて腸の炎症をしずめる効果のあるお薬です。

IBDの治療では、イムラン・アザニン(一般名:アザチオプリン)のほか、保険適用外ですが、ロイケリン(一般名:6-メルカプトプリン)も使用されることがあります。

ステロイドを使用している患者さんの中には、減量していくに従って、落ち着いていたはずの症状がまた悪化してしまう方がいます。そのような状態を「ステロイド依存例」といいますが、チオプリン製剤は、そのような患者さんの体内で起こっている過剰な免疫反応を調節し、ステロイド依存から離脱するための一助となります。また、ステロイド導入後の寛解維持効果だけでなく、ステロイド減量効果もあることが証明されています。チオプリン製剤は「ステロイド漸減」や「ステロイド治療後の寛解維持」に最適なお薬といえるでしょう。

その反面、チオプリン製剤には「即効性」がありません。効果がハッキリとあらわれてくるまでに1~3か月程度かかります。ですから、「ちっとも効果が感じられない」「自分には合わない薬なんだ」などと考えず、基本的には寛解維持を目的とした薬ですから、主治医と相談しながら可能なら(ステロイド減量・中止などの目的に応じた)効果が出るのを待ちましょう。生物学的製剤導入例では早期から並行してチオプリン製剤を使用することで相乗的な効果が期待できることも知られています。

このように寛解維持に効果が知られている薬ですが、日本人の場合、用量調節が難しいお薬でもあります。遺伝的に約1~2%の患者さんはほぼ100%の割合で高度の白血球減少や脱毛が起こることがわかっています。10~15%の患者さんは軽度から中等度の白血球減少や脱毛のリスクがあります。こうした患者さんを特定する検査も可能となっていますが、現時点では保険では認められていません。治療開始前に主治医ときちんと話し合うことが大切です。

また、チオプリン製剤の投与中は感染症にかかりやすくなります。これは、チオプリン製剤が免疫反応を抑えるお薬であるためです。ですから、投与中は感染症が流行している時期の不要な外出は避け、マスクやうがいなど感染予防を忘れないようにしましょう。また、インフルエンザワクチンなどの予防接種を適切に受けることを心がけましょう。接種する前に主治医に相談するようにして下さい。

2-4 カルシニューリン阻害薬(免疫抑制薬)

カルシニューリン阻害薬(免疫抑制薬)は、免疫の働きを抑えて炎症を抑制するお薬です。本来は臓器移植の領域で使用されていますが、その強力な免疫抑制効果が認められ、2009年より、ステロイド抵抗性(ステロイド治療の効果がみられない)とステロイド依存性(ステロイドを減量すると増悪する)の、いわゆる難治例の患者さん(中等症~重症に限る)に対してプログラフ(一般名:タクロリムス)というカプセル剤が保険適応となりました。これとほぼ同様の効果をもつサンディミュン(一般名:シクロスポリン)というお薬が選択されることもありますが、こちらはまだ保険適応外です。経口のシクロスポリンは体内での安定性や代謝に個人差があり、調整が難しい欠点があります。重症例では点滴で用いますが、どの施設でも行っている治療ではありません。

どちらも即効性のあるお薬ですが、治療初期は頻回に血中トラフ濃度を測定して投与量を調整します。まれに腎機能障害や血糖上昇などの強い副作用が出ることもあるため、経験豊富で副作用なども理解している専門施設での治療をおすすめします。また、免疫調節剤と同様、感染症にかかりやすくなるので注意が必要です。

2-5 生物学的製剤・バイオ医薬品(抗TNFα受容体拮抗薬、抗α4β7インテグリン抗体)

生物学的製剤である抗TNFα受容体拮抗薬は、炎症サイトカインの一種であるTNFαという物質の発生を阻害するお薬です。TNFαは本来、腫瘍細胞を攻撃する物質ですが、潰瘍性大腸炎の患者さんでは、TNFαが体内で過剰に産生され、炎症を引き起こすということが判明しています。また、生物学的製剤は化学合成で作られた従来のお薬とは異なる「バイオ医薬品」です。バイオ医薬品とは、バイオテクノロジー(生物工学)を活用して作られた医薬品で、従来の化学合成で作られた医薬品と異なり、細胞や微生物に培養させて作ります。遺伝子組換えや細胞融合などを活用したもので、その代表的なものとして免疫機能を応用した「抗体医薬品」があります。抗体医薬品は体の悪い部分にピンポイントで効くため、副作用のリスクが少ないという大きなメリットがあります。一方、ある分子を長期的に抑制することによる弊害も指摘されています。

潰瘍性大腸炎では、レミケード(一般名:インフリキシマブ)、ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)、シンポニー(一般名:ゴリムマブ)などの既存治療で効果が不十分な中等症~重症の患者さん、ステロイド依存性でかつチオプリン製剤不耐の患者さんなどに対して使用されます。

また、2018年から抗α4β7インテグリン抗体という新たな生物学的製剤が潰瘍性大腸炎に適応となりました。この薬は、免疫をつかさどるリンパ球が血管から腸管に移行し(ホーミングと呼ばれます)、腸管に炎症を起こす機序を抑制するというコンセプトで開発されました。血管内にあるリンパ球表面にあるα4β7インテグリンは血管側にあるMAdCAM-1(Mucosal Addressin Cell Adhesion Molecule-1)という物質と接着することで血管外に出て、腸管に侵入します。α4β7インテグリンを阻害することで、こうしたリンパ球の侵入を防ぎ、炎症性腸疾患の病態を改善します。抗TNF-α抗体の効果が薄れた症例や副作用で使用できなくなった症例にも一定以上の確率で有効とされています。腸管のみに作用することから安全性が高いことも特長です。

いずれの生物学的製剤も免疫調節薬、免疫抑制薬と同様に免疫を抑制するお薬なので、感染症および肺炎や結核には特に注意が必要です。感染していても症状が出ず、本人も気付いてないというケースがあります。ですから、免疫抑制薬での治療を開始する前には、先に感染症の検査を行い、感染症が見つかった場合はまずその治療を行って完治後に投与を開始します。特に抗TNFα受容体拮抗薬使用者では結核菌への抵抗力が下がりますので、投与前に胸部X線検査や結核菌検査(ツベルクリン反応、抗原特異的インターフェロン-γ遊離検査など)が必要です。検査内容や結果は主治医の先生に相談して下さい。また、B型肝炎ウイルスに感染している患者さんの場合、ウイルスの再活性化によるB型肝炎の発症リスクが考慮されます。こうしたリスクの発見や軽減のための検査や治療も必要となるので、投与経験豊富な専門施設で受けることをおすすめします。

2-6 JAK阻害剤

JAK阻害剤は、潰瘍性大腸炎の炎症の原因となるサイトカインの過剰な産生を抑え、伝達に欠かせない酵素「JAK(ヤヌスキナーゼ)」経路をブロックし、細胞内のシグナル伝達を阻害します。その結果、大腸の炎症が抑えられ、下痢や血便の回数の減少、腸管粘膜の状態の改善などが期待できます。投与後8週間の寛解導入治療に加え、寛解維持治療の効果も証明されています。

潰瘍性大腸炎では、2018年5月に関節リウマチの治療で使用されているゼルヤンツ(一般名:トファシチニブクエン酸塩)という経口薬が承認されました。他の薬物療法(ステロイド、免疫抑制薬、生物学的製剤)での効果が得られなかった中等症~重症の患者さんに対しての寛解導入および寛解維持療法として使用されます。

新たな治療選薬として期待される一方、貧血、高脂血症肝機能障害などの副作用も報告されています。また、免疫反応に関わるJAKを直接阻害するお薬なので、「感染症にかかっている」「内臓機能が低下している」など、一部の患者さんには投与することができません。投与の前には、必ず過去から現在に至るまでの感染症の有無、内臓機能などについて、綿密な検査が行われます。

ゼルヤンツはJAKを直接阻害するという、全く新しいタイプのお薬なので、長期間使用した場合の効果や副作用などまだ実臨床での経験が浅いのが現状です。投与期間中に、倦怠感や発熱など、いつもと異なる症状が出たら自己判断せず、主治医にすぐ相談するようにしましょう。

2-7 その他のお薬

潰瘍性大腸炎の内科的治療では、上記のお薬のほか、以下のお薬を使用する場合があります。直接の治療効果が証明されていないものや薬価承認されていない治療が含まれますので、個人でのむやみな使用は危険です。副作用も少なからず報告されており、主治医のきちんとした説明のもと使用を考慮して下さい。

■抗菌薬(シプロフロキサシン・クラリスロマイシン・メトロニダゾールなど)
■プロバイオティクス(有胞子性乳酸菌・ビフィズス菌・カゼイ菌など)
■漢方薬(大建中湯など)
■経腸成分栄養(エレンタール・エネーボ・ラコールNFなど)
■中心静脈栄養

2-8 血球成分除去療法(CAP)

血液中の活性化した白血球を吸着除去およびサイトカインの一部を除去する治療法です。CAP療法、白血球除去療法などとも呼ばれます。血球成分除去療法には、ビーズで吸着する顆粒球吸着療法(GCAP、GMA)と、フィルターで吸着する(LCAP)の2種類があります。LCAPでは血小板も除去されます。

通常は体を守ってくれる白血球(顆粒球、リンパ球、単球)ですが、IBD患者さんの体内ではこの白血球が活性化し、自身を攻撃してしまい、結果として腸管に炎症が起こると考えられています。血球成分除去療法では、透析のように血液を体外に循環させて、必要以上に活性化した白血球をビーズやフィルターを通して除去します。

潰瘍性大腸炎では、ステロイド抵抗例の中等症~重症の患者さん、ステロイド依存例での活動期の患者さんで検討されます。

透析に近い治療と聞くと、「入院しないと受けられないのでは?」と不安に思う方もいるかもしれません。しかし、実際の治療時間は事前の検査なども含めて90分程度なので、外来で受けられる施設がほとんどです。また、GCAPとLCAPはどちらも同等の効果をもちますが、効果には個人差があります。また、「どちらか片方だけ効いた」というケースもあるようです。主治医から治療を勧められた場合は、GCAPとLCAPのどちらなのかをきちんと確認し、治療スケジュールもしっかり立てるようにしましょう。副作用は他の治療に比べると少ないと言われる血球成分除去療法ですが、治療後に発熱、頭痛、めまいなどの副作用の出る場合がありますので、できるだけ経験豊富な施設で受けることをおすすめします。

平成29年度潰瘍性大腸炎治療指針(内科)

平成29年度潰瘍性大腸炎治療指針(内科)をもとにIBDプラス編集部が作成

監修:福岡大学筑紫病院炎症性腸疾患(IBD)センター長 平井郁仁 先生

3.潰瘍性大腸炎の外科的治療

3-1 手術適応となる状態

潰瘍性大腸炎に対する内科的治療の進歩は著しいものがありますが、未だに真の原因は不明で根治的治療のない現状では、外科治療を必要とすることも少なくありません。とくに重症・劇症例では緊急手術も考慮した内科と外科の連携が重要になります。

「絶対的手術適応」とは外科治療以外では解除できない病態で以下のようなケースが該当します。なお、高齢者は感染症など術後合併症のリスクから、若い人に比べると内科的治療の効果判定を早めに行い、手術の遅れがないように留意する必要があります。

<絶対的手術適応>

■重症・劇症例で、強力な内科的治療(ステロイド大量静注療法、カルシニューリン阻害薬、生物学的製剤など)に効果を示さず急激に全身状態が増悪する場合

■腸管合併症 ・大量出血:輸血を行っても血圧の維持が難しい状態 ・大腸穿孔:大腸の深い潰瘍に穴が開いて腹膜炎を併発した状態 ・中毒性巨大結腸症:重い症状を伴って、大腸の動きが止まった状態。腸管(特に横行結腸)内に毒素やガスが溜まることで腸が膨らみ、中毒様症状が現れる。放置すると大腸穿孔を来たすことが多い ・High-Grade Dysplasia(高度異形成):前がん状態 ・大腸がん

■大腸がん、High-Grade dysplasia以外は生命維持に関わる重篤な状態で緊急手術を必要とする

絶対ではないものの、外科治療の考慮を必要とする「相対的手術適応」は、以下のケースになります。再燃を繰り返す場合や、日常生活に支障が出ている場合には、外科治療により大幅なQOLの向上が得られます。

<相対的手術適応>

■通常の内科的治療(ステロイド、免疫調節薬、カルシニューリン阻害薬、生物学的製剤、血球成分除去療法など)で充分な効果が得られず、通常の社会生活が困難な状態あるいは便意切迫など、QOLが著しく低下している難治例

■治療薬剤による重症の副作用の発現、あるいは発現する可能性が高い難治例

■手術で改善が期待できる腸管外合併症 ・壊疽性膿皮症:主に下肢にみられ、放置すると皮膚に痛みを伴う深い潰瘍ができる炎症性の皮膚疾患 ・小児患者における成長障害 など

■大腸合併症 ・狭窄:腸の同じ場所に繰り返し炎症が起こることで腸管が固くなり、内腔が狭くなった状態 ・瘻孔:潰瘍が悪化し、腸管同士、または他の臓器や皮膚に穴が開いて繋がってしまった状態 ・Low grade Dysplasia(軽度異形成)で、がん合併の可能性が高いと思われるもの、あるいは多発している場合

3-2 術式の種類

潰瘍性大腸炎の手術の基本は「大腸全摘」です。かつては肛門まで切除して永久的回腸人工肛門を造設する方法が一般的でしたが、現在は回腸嚢(小腸をJの形に折り曲げて大腸の代わりにしたJパウチ)を作って肛門部につなぐ「自然肛門温存手術」が主流になり、術後の患者さんのQOLは大幅に向上しています。

<潰瘍性大腸炎の標準術式>

潰瘍性大腸炎の標準術式は大きく分けて以下の2種類があります。

潰瘍性大腸炎の標準術式

■大腸全摘、回腸嚢肛門吻合術 (IAA:Ileoanal anastomosis)

大腸を全摘し、回腸嚢を肛門に繋ぐ術式。粘膜抜去によって歯状線を含めた肛門管粘膜まで切除するため、潰瘍性大腸炎が再燃する心配やがん合併のリスクは少なくなります。

その一方で、手術の難易度が高いので熟練した技術をもつ医師でなければ難しく、吻合部(つなぎ目)の保護を目的として、一時的な回腸人工肛門造設を必要とするため2期分割手術になります。術後の肛門機能としては、排便回数はIACAと変わりありませんが、少量の便漏れ(soiling)が長引くことがあります。

■大腸全摘、回腸嚢肛門管吻合術 (IACA:Ileoanal canal anastomosis)

大腸を全摘し、1~2cmの肛門管粘膜を残して、歯状線の口側で回腸嚢を肛門管に繋ぐ術式。歯状線が残るために、IAAに比べ、術後の排便機能は若干良好です。また、人工肛門の介在なしに1期的に手術ができるメリットがあります。

その反面、残存した肛門管粘膜に炎症が再燃したり、がん合併のリスクがわずかに残ることになります。

<その他の術式>

■結腸全摘、回腸直腸吻合術 (IRA:Ileorectal anastomosis)

結腸を全摘して回腸と直腸をつなぐ術式。残存する直腸に再燃のリスクがあり、肛門部での再建手術が普及した最近では高齢者以外に適用されることはあまりありません。

■大腸全摘、永久的回腸人工肛門造設術

肛門まで含めて大腸を全摘し、回腸に永久的人工肛門を造設する術式。下部直腸がん合併例、肛門機能不良例および高齢者に適用されます。

■結腸亜全摘、一時的回腸人工肛門造設術、[S状結腸粘液瘻またはHartmann手術]

潰瘍性大腸炎に対する外科治療として最も侵襲の少ない術式で、全身状態不良例に対し、肛門温存手術を行う前の分割手術の一期目として行います。S状結腸まで残して粘液瘻を造設する場合と、直腸まで切除して断端部を閉鎖するHartmann手術の2つの方法があります。

3-3 手技の種類

潰瘍性大腸炎の手術に用いられる手技は、主に以下の3つに分けられます。どの手技が用いられるかは、患者さんの全身状態や年齢によって異なります。また、医療機関や執刀医によっても異なりますので、主治医の先生にご確認ください。

■開腹手術

お腹を切開して、患部を直接視て触りながら切除、再建を行う術式です。以前は広く臍上部まで皮膚切開が行われていましたが、専門施設では臍下部6~8cmの小開腹手術が主流になっています。術中の予想外の事態にも即座に対応でき、手術時間も短いのがメリットになります。デメリットは下腹部に手術痕(傷痕)が残ることです。

■用手補助腹腔鏡手術

開腹手術と腹腔鏡手術の中間。お腹を小さく切開し、そこから手を挿入して、手術操作を補助しながら行う方法。腹腔鏡手術に比べ、熟練度を要する手技や器具の操作が少なく、少人数での施行が可能です。手術時間も腹腔鏡手術より短くて済みます。傷口は、開腹手術よりは小さいですが、腹腔鏡手術よりは大きくなります。

■腹腔鏡手術

お腹に5~10mm程度の穴を数か所開け、その穴から手術器具を入れ、二酸化炭素を腹腔内に注入してお腹を膨らませ、患部を見やすくします。その他の穴には内視鏡カメラや手術器具を挿入します。手術はお腹の中に入れた内視鏡カメラで見ながら行います。また、切除した大腸は穴を広げて取り出します。開腹手術に比べると傷口が小さく、術後の痛みがいくらか軽いのがメリットになります。一方で術者の触覚が使えず手術時間は非常に長くなりますので、重症で腸管が脆弱した症例や全身状態不良で短時間での手術を必要とする場合には不向きな手術になります。腹腔鏡手術の技量だけでなく、潰瘍性大腸炎の治療にも精通した専門施設での手術が望ましいとされています。

3-4手術の回数

潰瘍性大腸炎に対する手術は、通常2~3期の分割で行われます。

潰瘍性大腸炎に対する手術

■2期分割手術

1回目の手術で大腸を全摘し、回腸嚢を肛門部とつなぎます。さらに吻合部の安静を保つために回腸人工肛門を一時的に造設します。問題がなければ術後2~3週間で一度退院となります。その後、全身状態の回復を待って3~6か月後に人工肛門を閉鎖して2期分割手術が終了します。

■3期分割手術

主に、大量出血や穿孔などで緊急手術となった場合に行われます。まず救命を重視して直腸以外の大腸を切除する亜全摘を行い、回腸に人工肛門を造設します。その手術から3~6か月後に残した直腸を切除し、回腸嚢と肛門部をつないで新しい人工肛門を作る2回目の手術を行います。さらに3か月後を目途に人工肛門を閉鎖する3回目の手術を行い、3期分割手術が終了します。

3-5 手術による潰瘍性大腸炎特有の合併症

■回腸嚢炎

回腸嚢炎は、回腸嚢(小腸をJの形に折り曲げて大腸の代わりにしたJパウチ)に起こる非特異的炎症です。原因は未だに不明ですが、回腸嚢内の腸内細菌の異常増殖が関係しているとも考えられています。

診断には内視鏡検査が必要となりますが、大腸を全摘した潰瘍性大腸炎の患者さんで、術後経過中に10~50%の頻度で発症するといわれています。

主な症状として、便意があるのに出ないしぶり腹、腹痛、肛門痛、排便回数の増加、水様便、血便、漏便、37.8度以上の発熱などがあります。

回腸嚢炎は、シプロキサン(一般名:シプロフロキサシン)やフラジール(一般名:メトロニダゾール)などの抗菌薬による治療で症状が落ち着くことがほとんどです。しかし、これらの抗菌薬の効果が乏しく、再燃寛解を繰り返す難治例では、治療が長期におよぶ場合もあります。

抗菌剤で改善が認められない場合は潰瘍性大腸炎に準じて5-ASA製剤やステロイドの注腸・坐剤を使用します。それでも効果がみられない場合は、免疫調節薬、生物学的製剤、血球成分除去療法による治療を検討します。

また、回腸嚢炎以外にも上部消化管病変の出現、回腸嚢がんなどの「腸管合併症」、ぶどう膜炎(虹彩炎)、口内炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、関節炎などの「腸管外合併症」が起こることがありますので、手術後もしっかりと主治医の指示に従うことが大切です。

監修:福岡大学筑紫病院 外科 二見喜太郎 先生

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