相手の立場に立ったコミュニケーションで―潰瘍性大腸炎と生きる歯科衛生士

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今回の「仕事・はたらく」でご紹介するIBD患者さんは、歯科衛生士として働く、チビUCだけどお酢大好きさん(以下、お酢大好きさん)。会社員から歯科衛生士へと転身され、現在も歯科衛生士として多くの患者さんたちと向き合っています。以前、大きな病院で勤務した際には、責任者なども経験。お忙しい業務をこなしながら、患者さんだけでなく部下やメンバーのサポートを第一に考えて働いてこられたのだそうです。

一方で、少しずつ現れていた体の違和感。しかし、自分のことよりも周りの人たちのことを優先してきたことで、なかなか病院を受診できずにいたと言います。

そんな中、2017年頃には、がんの闘病なども経験。その後、潰瘍性大腸炎と診断されました。さまざまな困難を乗り越えながら、少しずつ変わってきたという仕事への向き合い方。お酢大好きさんは今、どのようなことを大切にしながら働いていらっしゃるのでしょうか?詳しくお話を伺いました。

チビUCだけどお酢大好きさん(42歳・女性/潰瘍性大腸炎歴 3年)

会社員として、社会人生活をスタート。知り合いの紹介で、歯科クリニックの事務をお手伝いするようになったことをきっかけに、歯科衛生士へと転身。大きな病院での勤務などを経験し、現在はクリニックで勤務中。
一方で、39歳の頃に、潰瘍性大腸炎と診断される。その前には、がんを患い、子宮の全摘、抗がん剤治療などを受けた経験もある。

自分よりも周りの人を優先する日々…そして、潰瘍性大腸炎と診断

――発症時、どのような症状が現れましたか?

お酢大好きさん: 最初の症状が現れたのは、約15年前。当時は、仕事が忙しい時期だったため、病院へ行くことができずにいました。その後、しばらく経ってから、軟便、下痢、下血、腹痛、吐き気が現れるようになり、受診したという経緯です。

その頃、大きな病院で歯科衛生士として勤務していました。部下を複数人抱えるような責任者の立場だったこともあり、自身の業務だけでなく、部下のフォローはもちろん、上の人たちからのプレッシャーなどもありました。元々、物事に対してあまり気にしない性格ではありますが、当時は、常に多くのストレスを抱えていたと思います。

その影響もあってか、症状は頻繁に現れるようになり、毎日、出勤前に近くのコンビニでトイレに行かないと職場へ行けないほどでした。ただ、「自分よりも、周りの人を優先しよう」という思いが強く、自分の身体のことは後回しになっていたんです。

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また、2017年頃にがんを患い、子宮を全摘する手術を受けていました。その影響による癒着が原因で、大腸内視鏡による検査が難しい状況だったんです。きっと、そういったさまざまなことが重なり、症状が悪化していたんですね。ある日、便器の中が血で真っ赤になっているのを見て、「これは、さすがに病院に行かないと」と、思いました。

――診断を受けた時、どのようなお気持ちでしたか?

お酢大好きさん: 「やはり、そうか」という気持ちでした。受診する前から症状をインターネットで調べており、「もしかしたら、潰瘍性大腸炎かな?」と考えていたので。診断を受けて自身の病名がはっきりとわかったことで、「できることは、全部やってみよう」という前向きな気持ちになっていました。

私の場合は、がんの闘病を経験していたこともあり、「強い心を持たないと、病気に立ち向かっていけない」と感じていましたね。一度きりの人生ですし、どん底から這い上がれるかも自分次第だなと。そのため、悲観的な気持ちにとらわれるのではなく、前を向こうという気持ちへ切り替えられたのだと思います。

――がん闘病のご経験もあり、「強い心を持たないと」と思われていたんですね。そこから、現在はどのような治療を受けられていますか?

お酢大好きさん: なかなか症状が安定しなかったこともあり、2019年10月から生物学的製剤の点滴投与による治療を受けています。最初の頃は効果が現れて、一時期は症状が落ち着いていました。ただ、徐々に効果が現れにくくなってきたような印象もありますね。私の場合は、寛解維持が当面の課題です。

こういった経験もあって、以前の「周りの人を優先する」という考えよりも、今では「まずは、自分を大事にしよう」という考えに変わってきた気がします。

――生物学的製剤を使用されているとのことですが、現在、新型コロナウイルス感染対策として意識されていることはありますか?

お酢大好きさん: うがい、手洗いは徹底的に行っています。また、歯科衛生士は、飛沫を避けられない仕事です。そのため、仕事中は、マスク、フェイスシールド、グローブを装着し、感染対策をしています。

また、外出時も、ウイルス除去用のウェットシートやアルコールスプレーを常に持ち歩くなどして気を付けていますね。

自分の体を大事にできるように、業務調整を

――歯科衛生士を目指されたきっかけについて、教えてください。

お酢大好きさん: 大学卒業後、最初は会社員として働いていました。その頃、知り合いから、「歯科の受付を手伝ってくれない?」と誘われて、事務のお手伝いをするようになったんです。そこから「もっと歯科に関する知識を深めたい」と考えるようになり、歯科衛生士の道を歩み始ました。

その後、クリニックだけでなく、大きな病院での勤務も経験し、現在はクリニックの歯科で働いています。

――潰瘍性大腸炎と診断されてから、歯科衛生士のお仕事内容に変化はありましたか?

お酢大好きさん: 潰瘍性大腸炎と診断された後も同じ職場で働き続けていますが、働き方については、少し変化がありました。診断前は、時には無理をして働いていたところがあるので…。今は、自分の体を大事にできるようになったと思います。

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例えば、担当する患者さんの数をある程度調整させていただくようになりました。場合によっては、1人の患者さんへの対応時間が1時間近くかかる時もありますから。そういったことも踏まえて、業務時間内にトイレ時間を確保できるよう心がけています。

今の職場は、潰瘍性大腸炎についても理解してくれている方が多く、とても感謝しています。皆さんの理解もあって、自分の体を大事にしながら働くことができていると思います。

病気の有無に関わらず“お互い様”の気持ちで

――仕事をする中で、病気に関連して気を付けていることはありますか?

お酢大好きさん: 職場の方々に、潰瘍性大腸炎の症状などを自分からお伝えする努力しています。病気のことを理解していただくだけでなく、万が一の時に、少しでも患者さんやスタッフ皆さんにご迷惑おかけしないためです。

また、常に相手の立場に立つことを心がけていますね。病気の有無に関わらず、誰でも体調が悪い時ってあると思うんです。例えば、職場の誰かの体調が優れない時、「今日は私が代わるので、休んでくださいね」と、率先してお伝えするようにしています。こういった“お互い様”のコミュニケーションを日頃から積み重ねていくことが大切なのではないでしょうか。

――「相手の立場に立つこと」を意識されるようになったのは、なぜですか?

お酢大好きさん: 「死」を意識したことがあるから、治療でつらい経験をしたことがあるから、でしょうか。

私は、がんを患ったことで、子宮を全摘し、抗がん剤治療も受けました。「もう、人生が終わるかもしれない」という不安に苛まれた時期も、経験しています。そして、その後に潰瘍性大腸炎と診断されました。こういった全ての経験が、今の自分の考え方をつくっているのかもしれません。

少しずつで大丈夫。焦らず、ゆっくり前を向いていこう

――今後の目標について教えてください。

お酢大好きさん: 相手のつらさや苦しさに、少しでも寄り添える人間を目指したいです。

相手の気持ちを100%理解することは、難しいのかもしれません。だけど、相手の立場に立って考えることはできますよね。潰瘍性大腸炎や病気の有無に関わらず、全ての方の気持ちに寄り添える人でありたいと思います。

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――最後に、IBD患者さんにメッセージをお願いします。

お酢大好きさん: さまざまな症状を理由に、気持ちが落ち込んだり、生きていることが嫌になったりすることがあるかもしれません。そんな時は、少しずつで大丈夫なので、焦らず、ゆっくり前を向いていただければと、思います。

気持ちが落ち込み気味な患者さんには、「自分を責めないで」と、お伝えしたいですね。「いつか、復活してみせるぞ」という思いで、ゆっくり前を向いて欲しいです。

今は大変かもしれないけど、この大変な状況は、決して無駄ではないと思います。つらく、痛い思いをしているからこそ、次のステップへつながる希望もあると思います。まさに、私がそうでした。

諦めずに、ゆっくり一歩ずつ、一緒に歩いていきましょう!

(IBDプラス編集部)

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