【はたらくスペシャル】「完璧を目指さない」-漫画家・島袋全優が語る生き方(後編)

仕事・はたらく2019/11/25

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マンガアプリ「GANMA!」で闘病ギャグエッセイ『腸よ鼻よ』を連載中の島袋全優さん。「IBDのことをちゃんと理解しよう…」なんてきっかけで読み始めたら最後。電車の中でも、授業中でも、大事な会議中でも大爆笑してしまうこと間違いなしです!大手出版社の漫画が名を連ねる「次にくるマンガ大賞 2019 webマンガ部門」で第3位を受賞し、単行本の2巻の発売も決定。電車広告も登場し、メジャー感が半端なくなってきた今、IBDプラスが、白塗りの下に隠された全優さんの素顔に迫ります!

【後編】となる今回は、『腸よ鼻よ』の誕生秘話や、漫画家としての「はたらく」についてお聞きしました。

島袋全優さん

島袋全優 さん(28歳/潰瘍性大腸炎病歴8年)

1991年8月生まれ、沖縄県出身。漫画家を目指し専門学校在学中に潰瘍性大腸炎を発症。入退院を繰り返しながら、2013年に『蛙のおっさん』で漫画家デビュー。2017年よりウェブ漫画配信サイト「GANMA!」で連載中の、闘病体験をつづったギャグ漫画『腸よ鼻よ』が注目を集め、「次にくるマンガ大賞 2019 webマンガ部門」で第3位受賞。

■ 『腸よ鼻よ』誕生秘話。人気キャラクターはこうして生まれた

――『腸よ鼻よ』を描こうと思ったきっかけを教えてください。

全優さん: 発病して5年目くらいのときに、担当編集さんから「闘病ギャグエッセイを描いてみませんか?」と、声をかけてもらったんです。自分も描きたいと思っていたので、ネーム(※)を3話分描いたらOKが出ました。でもその頃は体調が悪くて…結局描くまでに数年かかってしまいました。なので、『腸よ鼻よ』のエピソードは、当時の写真を見て思い出しながら描いているんです。大腸を全摘した時の写真も、父に頼んで撮ってもらっておきました(笑)。

主人公は私の名前ですが、「自分そっくりのキャラはイヤだな」と思い、美少女にしました。“最初の担当医”は入院中の話し合いで担当編集さんから、「90年代くらいのGACKTさんみたいにしよう」と提案され、想像で描いたら「似過ぎです」と言われちゃって、最終的にあの見た目に落ち着きました(笑)。家族や友人は見た目をわざと変えている人もいますが、キャラで、みんな自分だとわかるそうです。見た目は兄が一番似ています。

※コマ割り、キャラクターの動き、セリフなどを簡単な絵で示したもの。絵コンテ、ラフとも呼ばれる

島袋全優 さん(28歳/潰瘍性大腸炎病歴8年)

――「次にくるマンガ大賞 2019」のwebマンガ部門で第3位に選ばれたときの気持ちはいかがでしたか?

全優さん: 病院にいたときに、担当編集さんから「先生!3位になりましたよ!!」と、すごいテンションの電話がかかってきました。1位と2位は大手の出版社の作品で、すでに売れている漫画だったので、まさか3位に自分の作品が選ばれるとは…ダークホースにもほどがありますよね(笑)。本当にビックリしました。

――トレードマークの白塗りをするようになったのも、この頃からですか?

全優さん: 学生時代に何度か遊びで白塗りにしたことがあったので、自分の中で仮装と言えば白塗り一択でした。マンガ大賞の授賞式に来て欲しいと言われたので、「白塗りOKですか?」と聞いてみたところ、「白塗りはOKですが、メイク室はありません」との返答があり、当日、メイク中の声優さんの隣でこのメイクをしました(笑)。身バレするのがイヤで白塗りにしているというのもあるんですが、マスクなどと違って表情がわかるのがいいですね!

島袋全優 さん(28歳/潰瘍性大腸炎病歴8年)

――全優さんご自身の『腸よ鼻よ』のオススメポイントはありますか?

パロディネタです!今後はもうちょっとマイナーなパロディを入れていきたいですね。あとは、漫画で紹介しているレシピですかね。IBDは個人差があるので、人によって食べられないものもあるかと思いますが、意外といろんな人の役に立っているみたいです。

■ 「完璧」を目指さず、6割の力で描く理由

――IBDで漫画家を志している方もいると思いますが、仕事の好きなところ・大変なところをそれぞれ教えてください。

全優さん: 私はギャグ漫画家なので、やはり「面白い」と言ってもらえるのがいいですね。さらに、好きな漫画を描いてお金をもらえて、IBD患者さんから「勇気をもらった」とか、「勉強になった」と言ってもらえる。あと、私自身、自分の漫画が大好きなので、描けば描くだけ自分の好きな漫画が世の中に増えていくわけです!「このギャグ、スベるかな…」と思うときもありますが、ネームでOKをもらったら面白いと信じて描くだけです(笑)!

反面、どんなときでもギャグを考えなければならないのは、つらいときもあります。15年飼っていた犬が死んで泣きたいのに、締め切りに間に合わせるために、亡骸の横でネタを考えたことがありました。「もっと散歩に連れて行ってあげれば…」とか、後悔もあるわけじゃないですか。それでも最高のギャグを考えなければならない…。あのときは、本当に大変でしたね。

――入院中も仕事を続けていくのは大変だったと思いますが、漫画家を続けていくための工夫はありますか?

全優さん: 完璧を目指さないことですね。ある程度のところで「これでいいか」と、妥協をすることも大切なのではないでしょうか。私も最初は丁寧に描いていましたが、「入院しちゃうから6割くらいで描いて」と、担当編集さんに言われてやり方を変えました。その分描くのは速くなりましたね。「完璧を目指さない、妥協する」というのは、IBDと付き合っていくうえでも重要なことだと思います。筋肉を描くのが大好きなんですが、やっぱり完璧に描こうとすると、疲れるんですよね(笑)。

以前はアナログ原稿であることにもこだわっていましたが、『腸よ鼻よ』をきっかけに、デジタルに完全移行しました。それまでは、よく病院のコンビニのFAXで原稿を送っていましたね。今は入院するときに、液晶タブレット、ペン、ノートパソコン、Wi-Fiを持ち込めば、入稿までできるようになりました。実は、デジタル化をアドバイスしてくれたのも「アラキ」なんですよ。今は出先でもiPadで作業したりしています。

島袋全優 さん(28歳/潰瘍性大腸炎病歴8年)

入院中に夜中まで描いていて怒られてしまったこともありますが、S先生のいた2つ目の病院は、私が漫画家デビューするまでの経緯を見ているし、どれだけ漫画家になりたかったかということも全部知っているので、止められなかったんでしょうね。看護師さんたちとも本当に仲良しで、結婚式のウエルカムボードを描いたりもしましたよ。

■ 好きなことをやめるのではなく、「どうやったらできるか」を考えて

――今後もギャグ漫画家としてやっていく予定ですか?理想とする漫画家像があれば教えてください。

全優さん: 島袋全優に求められているのはやっぱりギャグだと思うので、このまま続けていくと思います。仮に、恋愛ものやホラーを描いても、ギャグを入れてしまう気がしますね(笑)。理想とする漫画家像は「女房に迷惑をかけない水木しげる先生」(笑)。水木先生くらい長く描きたいです。それと、井上雄彦先生の影響も大きいですね。最初は少女漫画家を目指していたのですが、『バガボンド』を読んで、「こんな絵が描きたい!」と思ったんです。ギャグバトル漫画とか、ギャグ妖怪漫画とか、とにかくいろいろ描いていきたいですね。

――最後に、夢に向かって頑張っているIBD患者さんにメッセージをお願いします。

全優さん: 主治医の先生に「漫画家なんて無理」と言われたこともありますが、「自分にはこれしかない」と、「漫画を取り上げられたら、ただの病人になってしまう」と思いました。病気になったからといって好きなことをやめる必要はないし、「どうやったらできるか」を考えた方がいいと思います。

あとは、人の目を気にしないこと。退院記念にあこがれていた金髪ツーブロックにして、スカジャンで歩いていたら、道行く人に怖がられたし、少し女の子らしい恰好をすれば男の人が優しくなるし、人ってほとんど見た目で判断しているんですよね。だから、過剰に人の目を気にせず、好きなことを思いっきり楽しんだ方がいいと思いますよ。

島袋全優さん
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