「NEVER KNOWS BEST」という言葉を胸に、自分が前向きでいられる選択を決意
IBDの治験体験談 | 2022/11/28
※写真はイメージです
急な体調不良で体重が25kg減少…「絶飲食」や「手術」も経験
2021年の年明け早々に38度くらいの熱が出て、腹痛、食欲不振、嘔吐もありました。新型コロナウイルスに感染したと思い、すぐに内科を受診しましたが、何度検査を受けても陰性でした。しかし、その後も症状は全く改善せず、毎日1kg痩せていくような状態で、90kg近くあった体重が、最終的に25kgも減りました。再度受診した際、血液検査で炎症反応が出たため、すぐに大学病院を紹介されて体力回復のために1週間入院しました。「何かあったら連絡して」と言われて一度退院したのですが、わずか2日で体調が悪化。再度入院となりました。その時にさまざまな検査を行い、ようやくクローン病の診断がつきました。診断されてからは絶飲食となり、点滴のみの生活が2週間くらい続きました。食べ物はともかく、うがい以外は水もNGというのは本当にきつかったですね。
1か月くらい入院した後、「縦走潰瘍があり、癒着しそうな部分もあるので予防的に手術をした方がいい」と言われ、腹腔鏡手術を受けました。退院後は少しずつ固形物が食べられるようになりました。その後、食事療法と経腸栄養剤、5-ASA製剤と免疫抑制剤による治療を開始しました。自分自身も、35歳というタイミングで東京での仕事と生活に区切りをつけ、実家のある岡山県に戻り、父の会社で働き始めました。
岡山に戻ってからも、紹介先の病院でしばらく治療を続けていましたが、特に良くも悪くもならずという状態で、トイレは1日4~5回という感じでした。3回目くらいの受診時に主治医から「治験に参加してみませんか?」というお話をいただきました。最初はまだ迷いがあったので、知人の勧めで漢方薬局に相談に行ったりもしました。でも、漢方の味が無理で…これを一生飲み続けるくらいなら西洋医学に頼ろうと思いました。主治医とも話し合い、最終的には「既存のバイオ製剤を使うか、治験薬を使うか」という選択になりました。どちらも点滴でしたが、「良くなりさえすればいい」と思っていたので、特に抵抗はありませんでした。
承認薬も治験薬も「治療選択肢」の一つであることに変わりはない
治験を選んだ一番大きな理由は金銭的な補償ですね。受給者証での負担額が基本的に毎月上限をいくことを考えると、負担軽減費をいただけるのはメリットだと感じました。僕自身、治験を自然と「治療選択肢の一つ」と考えていたので、そこまで特別なことだと考えていなかったというのも影響していると思います。
主治医から治験の話をされた日に治験コーディネーターさんからも詳細な案内があり、「第3相試験ですぐに実薬が使える」ということでした。また、今使っている薬をそのまま使い続けられるという点も安心できました。最終的に、一番気がかりだった「治験が終わった後の難病手帳の取得」に関しても主治医から納得のいく説明をいただいたので、治験参加を決めました。まだ参加して間もないので効果のほどはわかりませんが、期待したいと思います。
多少の不安はあるけれど、SNSでつながった「IBD仲間」に元気でいて欲しいから
僕はクローン病になってからツイッターを始めたのですが、本当にいろんな人がいます。会ったことはありませんが、親切だったり、面白かったり、好きなものを食べている人もいれば、あまり食べられない人もいて、性格も病状もさまざまです。唯一の共通点がIBD患者というオンラインでのつながりですが、「みんなに少しでも元気でいて欲しいなぁ」と思うのです。治験参加を通して、少しでも貢献できればと思っています。
一方で、不安が全く無いと言ったら嘘ですね。比較的楽観的な方ですが「もし副作用が出たら…」「もし治験中に他の被験者の方に何かあったら…」などという不安は、少なからずあります。でも、どんな治療にも多少のリスクはあると思うので、治験だから特別危ないとは思っていません。ただ、月1回以上の通院があるので、会社員の人は病気の説明をして理解を得る必要があると思います。治験参加以前に、病気のカミングアウトに悩む人が多いかもしれません。その他で知っておいた方がいいと思ったのは、「使えない薬がある」こと、配偶者やパートナーがいる方は「治験参加中は妊娠するのも、妊娠させるのもNG」という点だと思います。
何が正解かわからない。だからこそ、自分が納得できる後悔のない選択を
僕のように、病気になってから治療の選択肢として勧められて参加する場合や、自発的に探して参加する場合など、きっかけや手段はさまざまだと思います。そこには人それぞれの考え方があって、自分の中で前向きに行動できること自体が素晴らしいと思います。「NEVER KNOWS BEST」という僕の好きな言葉がありますが、“何が正解かわからない”だから、深く考えなくても自分で納得して後悔のないように動ければそれで良いと思います。
※試験により実薬とプラセボの使用有無や通院間隔、施設によって負担軽減費が変わります。
治験参加者のプロフィール
ゆうまさん
- 年代
- 30代
- 性別
- 男性
- 病歴
- クローン病歴1年
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