「治験になんか絶対参加しない!」と決めていた僕が治験に参加するまで
IBDの治験体験談 | 2023/3/17
※写真はイメージです
切れ痔が実はクローン病の肛門病変と判明。治療がうまく行かず、医師から突然「治験」の話をされ…
中学生の頃から痔がひどく、健康診断を受けるたびに血便で引っかかっていました。社会人になってからは職場のストレスなどで下痢が4年間くらい毎日続いていましたが、ストレスから来るものだろうと思い、あまり深刻に考えていませんでした。しかし、2020年12月頃から肛門付近に痛みを感じるようになり、肛門科を受診しました。切れ痔と診断され、すぐに治療を開始しましたが、なかなか良くなりませんでした。この頃からたびたび微熱が出ることがあり、医師からも何かしらの原因がありそうとは聞かされていましたが、僕自身「治療をすればいずれ治る」という考えがあって、今は治りが悪いくらいにしか思っていませんでした。
ところが同じ年の3月、診察の時に直腸からの出血が見つかり、大きな病院に入院して精密検査を受けることに。そこでようやく「クローン病」と診断されました。切れ痔の治療をしても全く改善しなかったおしりの痛みも、MRIで「肛門周囲膿瘍」であることがわかりました。クローン病と診断がついたときは、ホッとしたというのが正直な気持ちです。この時は検査と手術期間を含め、2か月半入院しました。入院中は1か月くらい絶食して、徐々におかゆなど、普通食に戻していった感じですね。
退院後は顆粒球吸着療法をやりましたが効果が得られず、生物学的製剤を2年間くらい使いました。しかし炎症の数値が下がらず、下痢と肛門周囲膿瘍も改善しませんでした。医師から「このままだと腸が癒着したりする可能性がある」と言われ、そのタイミングで治験の話をされました。でも、最初はすぐに断りました。ネガティブなイメージが強かったからです。良くなる可能性があることもわかっていましたが、それに賭けて自分の身体を犠牲にするなんて嫌だと思いました。
医師の熱意に心を打たれ、治験のメリットにも目を向けられるようになった
治験の情報を集めようと思いましたが、ネット上にはクローン病と公表している人がたくさんいるにもかかわらず、想像以上に「クローン病で治験に参加した人」の情報が見つかりませんでした。そのため、知り合いの寛解状態のクローン病の人に相談するか、健康な人に相談するという選択肢しかなく、結局は自分で考えて結論を出すしかありませんでした。
それからも診察のたびに医師から説得され、治験コーディネーターの説明も受けました。一緒に付き添っていた親も「せっかくのチャンスなのに、本当に参加しなくていいの?」と何度も聞いてきたので、参加して欲しかったのだと思います。でも、「自分で治験には参加しないって決めたんだから、もう何も言わないで」と伝えました。
その後も気持ちは変わりませんでしたが、治験の話が出てから5回目くらいの時に、医師から「治験はデメリットだけじゃない。今のつらい症状が治まる可能性もあるんだよ」と、本当に真剣な目で言われたんです。それまで自分の中ではデメリットばかり浮かんで、絶対に参加したくないと思っていたのですが、少し気持ちが揺れ動きました。今思えば、この時の先生の熱意に背中を押してもらったような気がします。
その後冷静になって、検査費用や通院にかかる費用を一部負担してもらえることなど、説明にあったメリットを考えてみると、悪くないかなと思えるようになってきました。結局、「いつでもやめることができる」というのが最後の一押しとなり、治験参加を決めました。参加の意思を伝えたとき、先生はホッとした顔をしていました。その様子からも「絶対に治したい」という強い意志が伝わってきて、ここまで真剣に考えてくれているのに患者の自分がそっぽを向いているのは良くない。先生を信用して足並みを揃えて、自分の身体を治すために治験を頑張ろうと思うことができました。
病院の待ち時間が短くなったのは意外なメリット。いつでも体調を相談できる窓口があるのも安心
僕が参加しているのは、皮下注射を月に1回打つ治験です。今使っているのは治験薬と、メサラジン、経腸栄養剤です。最初はプラセボ(偽薬)に当たったようで効果も感じられず、毎月検便を提出するのですが3回目くらいから炎症の数値がすごく上がってしまい、4回目の内視鏡検査で悪化していることがわかりました。5回目から実薬を使うことになったのですが、翌日からおなかがグルグル鳴って腸が動いているのがわかりました。溜まっていたガスや便が出て、すごく効いている感じがしています。それまでは肛門周囲膿瘍が悪化して排膿がひどく熱もあったのですが、それらもすぐに良くなったので驚きました。
今は、配電盤を作る作業員として働いています。日勤なので通院日は休みを取る必要がありますが、仕事仲間は僕が体調を崩してからクローン病と診断されるまでの経緯(おしりの痛みに耐えながら立ち仕事をしていたことなど)を全て見ているので、治験のことを伝えた時も「通院は問題ないから今まで通り一緒に働いてほしい」と言ってくれました。また、僕以外にもクローン病の社員さんがいるので、通院や頻回のトイレにも理解があり、とても助かっています。
通院は問題ないのですが、僕が通っている病院はお年寄りが多いこともあって、待ち時間が長く大変でした。でも、治験に参加してからは治験コーディネーターが代わりに手続きをしてくれて、言われた時間に行けばすぐに診てもらえるのがすごく助かっています。また、何かあってもすぐに相談できるという安心感があります。実際に急な発熱があった時も、市販薬を飲んで良いか、すぐに教えてもらうことができました。
一方で、治験参加中はこれまでのように無理ができないと感じています。以前は多少体調が悪くても趣味のゴルフが楽しめましたが、治験中は何が起こるかわからないという不安がどこかにありますし、少しでも無理をすると体調を崩しやすい気がします。もちろん、治験は基本的に体調の悪い人が参加するものなので、無理をしないに越したことはないと思うのですが。
治験に参加する「前」だけでなく、参加した「後」のことも考えてみて
治験に参加してから「今より良い状態になる可能性がある」と考えられるようになって、治療以外でも、いろいろなことを前向きに捉えられるようになりました。
医師から突然治験の話をされて戸惑い、以前の僕のようにデメリットばかりが目について足踏みしてしまっている人も多いと思います。ですが、僕自身は薬の効果も含め、治験に参加して初めて得られたこと、実感できたことがたくさんあります。良い面も悪い面もあるのは事実ですが、参加する「前」のことだけではなく、参加した「後」のことも考えてみて欲しいと思います。
※試験により実薬とプラセボの使用有無や通院間隔、施設によって負担軽減費が変わります。
治験参加者のプロフィール
北アルプスさん
- 年代
- 20代
- 性別
- 男性
- 病歴
- クローン病歴3年半
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