脱ステロイドに成功。参加の決め手は「ファーストチョイス」

IBDの治験体験談2023/5/26

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クリニカルトライアル

※写真はイメージです

ステロイドの副作用と思われる症状に悩まされ、ついに転院を決意

ある日突然血便が出たのが始まりでした。最初は市販の痔の薬を使ってみたのですが良くならず、近所の肛門科を受診しました。すると、「これは痔ではなく腸の病気かもしれない」と言われ、腸の専門医がいるというクリニックを紹介してもらいました。そこで大腸内視鏡検査を受け、潰瘍性大腸炎と診断されました。最初はペンタサとアサコールが処方されましたが、下血・下痢・腹痛が改善しなかったため、ステロイドも使うようになりました。

しかし、その後も再燃の繰り返し…。電車通勤が本当に大変でした。ガスを出すと漏れてしまうかもしれないという不安があり、それを我慢しなければならないのがすごくつらかったのを今でも覚えています。

やがて、ステロイドの副作用と思われる症状に悩まされるようになりました。とにかくハイになってしまって、夜も1~2時間しか眠れませんでした。その影響もあってか、すごく怒りっぽくなって、会社でも家庭でも感情的になってしまうことが多々ありました。下血や下痢などの症状が出ているだけでも体力を消耗するのに、夜も眠れないので常にヘトヘトの状態でしたね。

しかしその時の主治医はステロイドが一番効果的だと考えており、「精神的につらいのでステロイドを止めたい」とを訴えても止めさせてもらえませんでした。その後しばらくして、下血が一度治まった際に、ようやくステロイドを減量してもらえることになりました。腸の専門家ということでしたが、私を診察する際はいつも専門書らしき本を見ながらでしたので、IBDを診るのは慣れていなかったのだと思います。

減量はしたものの、その後もステロイドは処方され続け、精神的にも限界だったので、妻と相談して病院を変えることにしました。近くにあるIBDの専門病院を探してくれた妻には本当に感謝しています。

医師から示された3つの選択肢。そこで感じた治験薬の魅力

病院を変えた初日、院長から3つの治療選択肢が示されました。2つはすでに日本で治療薬として使われている生物学的製剤で、残りの1つが欧米ではファーストチョイス(第一選択薬)で、日本でも順調に第3相まで進んでいるという治験薬でした。

私自身、特に治験に対する抵抗感はなく、新しい薬であるという点と、何より「欧米でファーストチョイス」という点に魅力を感じ、ぜひ使ってみたいと思いました。同席していた妻も欧米で使われているという点で安心したようでした。治験薬は無償で通院に補助が出るという点も、決断した大きな理由の一つです。

効果を感じ始めたのは3か月後。精神的な症状がなくなったのが嬉しかった

大腸内視鏡検査などを経て、治験に無事参加できることになりました。服用していたイムランとアサコールはそのまま継続で、ステロイドのみ止めることになりました。

最初は治験薬を点滴で投与しました。プラセボか実薬か院長も治験コーディネーターさんも知らないそうで、しかも効果がなかなか現れないので焦りました。

効果を感じ始めたのは3か月経った頃からです。下血が大分治まりました。さらに、その4か月後に点滴が自己注射による皮下注射に変わりました。下血がなくなり、血便も出なくなりました。IBDの症状以上につらかった精神的な症状もなくなったので、本当に気持ちが軽くなりました。

治験コーディネーターさんにも大変お世話になりました。再燃した時やコロナワクチンの接種を受けて良いのかなど、疑問があれば何でもショートメールや電話で相談できて助かりました。予約の面では、通院日を土曜日にしてもらえました。治験が終わった今は人気の土曜日は予約が取れず、平日に通っているのでなかなか大変です(笑)。

一方で、毎日日誌を登録するのは大変でした。回答自体は選択肢を選ぶだけなのでそれほど手間ではありませんが、日誌をつけないとすごく大きな音が鳴るので、外出先だったりするとすごく焦ります。また、再燃して投薬の回数を増やしたのですが、一度増やすと治験終了まで減らすことができないなど、融通の利かない部分もありました。

また、私の参加した治験は途中から自己注射になったので、毎回2か月分の薬を持ち帰る必要がありました。保冷剤を4つも入れたバッグを電車で持ち帰るのは非常に重くてしんどかったですね。保冷バッグの中には温度を管理する機械が入っているのですが、指定の温度から外れてしまうと薬を返却しなければならず、重いバッグを持って病院まで戻ったことも何度かあります(笑)。

治験に参加した約7年、大変なこともありましたが、新しい薬の効果を実感できましたし、金銭面でも助かったので、個人的にはメリットの方が大きい印象です。

治験参加で知った「薬の開発」の大変さ。開発者たちに感謝!

治験に参加して、治験に関わる医療者や治験コーディネーターさんなど、いろいろな人たちと関わる中で、薬の開発の大変さがわかりました。いろいろ言ってくる患者さんもいるでしょうし、イレギュラーな事態も発生していると思います。たくさんのお金と手間をかけて薬を開発してくれているみなさんに感謝、感謝ですね。

検査、通院、毎日の日誌など、通常の治療よりパワーが必要になるかもしれませんが、その分、体調が良くなる可能性もあります。また、治験参加を検討する際に「何相まで進んでいる治験なのか?」という視点も入れると良いかと思います。治験を通して薬の開発に参加することで、多くの同じ病気の人たちを苦しみから解放できるかもしれません。

※試験により実薬とプラセボの使用有無や通院間隔、施設によって負担軽減費が変わります。

治験参加者のプロフィール

もんりんさん

年代
50代
性別
男性
病歴
潰瘍性大腸炎歴13年

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