潰瘍性大腸炎の新たな評価法を開発、散布した色素剤の血中濃度から病態を定量評価

ニュース2024/10/1

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潰瘍性大腸炎などの病態の指標となる「腸管粘膜透過性」の評価法を検討

兵庫医科大学と株式会社島津製作所の研究グループは、試料中の化合物を高感度で同定・定量化できる液体クロマトグラフ質量分析計を活用し、色素剤「インジゴカルミン」の血中濃度から、潰瘍性大腸炎や過敏性腸疾患症候群の病態の指標である「腸管粘膜透過性」を評価する手法を開発したと発表しました。

潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群の原因は明確ではなく、腸バリア機能障害による腸管粘膜透過性の高まりで生じる「腸もれ(Leaky Gut)」が一因と考えられています。腸もれによって消化中の食品抗原や腸内細菌およびその生成物が体内に侵入して発症するとみられているものの、生きた人体における粘膜透過性の定量的な評価手法はこれまでなく、疾患機構と病態解明の研究は進んでいませんでした。

これまで、糖類の内服後に尿に排泄される濃度を測定して粘膜透過性を評価する「ラクツロース・マンニトール法」が、ほぼ唯一の粘膜透過性評価法として用いられてきました。しかし、この方法は1日分の蓄尿が必要であるため被験者の負担が大きく、消化管運動や食事、腎機能が測定値に影響を及ぼすことなどが問題点として挙げられていました。

そこで研究グループは今回、「内視鏡検査で用いたインジゴカルミンが検査後、尿中に排出される」という現象に着目し、この色素剤を用いた粘膜透過性評価法を検討しました。

患者さんの負担が抑えられる効率的な治療につながる可能性

検査でインジゴカルミン散布後にその血中濃度を潰瘍性大腸炎患者11人と健常者5人について病態との関連を評価した結果、両グループで濃度に有意な差が見られたことから、同手法の有用性が示唆されました。

従来の潰瘍性大腸炎や過敏性腸疾患症候群の治療では、薬の投与後の自覚症状で治療効果を測ってきました。新手法が実用化されると、患者さんの負担が抑えられる効率的な治療につながります。

「本手法の臨床研究を継続し臨床的意義を確立させる。今後、本手法の臨床的エビデンスの取得を進め、創薬研究を支援する研究用機器の開発や臨床検査に使用できる医療機器の開発を目指す」と、研究グループは述べています。

(IBDプラス編集部)

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