潰瘍性大腸炎、発症・重症化に関わる新たな仕組みを解明

ニュース2025/8/19

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特定の遺伝子の変異によってUCリスクが高くなるのはなぜか?

大阪大学は、OTUD3という遺伝子の変異が腸内細菌叢の乱れと組み合わさることで潰瘍性大腸炎(UC)の発症・悪化が起こる仕組みを明らかにしたと発表しました。

UCの発症・悪化には、遺伝子の変異、腸内細菌の変化、免疫の異常が関係することが知られています。これまでの研究で「OTUD3遺伝子」に変異があるとUCになりやすいことが報告されていましたが、その仕組みは明らかになっていませんでした。

腸内細菌が引き起こす炎症メカニズムとOTUD3による抑制作用を発見

今回の研究では、まずヒトとマウスの正常な大腸組織を詳しく調べ、OTUD3タンパク質が大腸の組織を支える細胞の一種である「線維芽細胞」に多く存在することを発見しました。そこで、線維芽細胞でのみOTUD3遺伝子を欠損した遺伝子組換えマウスに腸炎を起こす薬剤を投与したところ、正常なマウスよりも重い炎症が引き起こされました。

さらに詳しく調べると、OTUD3遺伝子を持たない大腸線維芽細胞では、腸内細菌が作り出す物質(3’3’-cGAMP)によって炎症反応が過剰に引き起こされることがわかりました。

次に、実際の患者さんで見つかっているOTUD3遺伝子の変異と同じ変異を持つマウスを作製して実験したところ、やはり腸炎が重症化しました。しかし、3’3’-cGAMPが細胞の中に入るのを阻害する薬を投与すると、腸炎の重症化を防ぐことができました。また、ヒトでもOTUD3遺伝子に変異を持つ患者さんから採取した大腸線維芽細胞では、OTUD3タンパク質の量が減っており、3’3’-cGAMPに対する反応が異常に強くなっていました。

OTUD3遺伝子変異+腸内細菌の変化がUC発症・重症化に寄与する

最後に、腸内細菌そのものの影響を調べるため、健康な人とUC患者さんの腸内細菌をそれぞれマウスに移植する実験を行いました。その結果、OTUD3遺伝子変異を持つマウスに患者さんの腸内細菌(3’3’-cGAMPを多く作る細菌を含む)を移植した場合のみ、UCに似た症状が現れました。

今回の研究によって、UCの発症・悪化に寄与する遺伝的な要因(OTUD3遺伝子の変異)と腸内細菌の変化(3’3’-cGAMP産生菌の増加)の組み合わせが明らかになりました。この発見は、将来的に患者さん一人ひとりの遺伝的特徴や腸内環境を考慮した新しい治療法の開発につながる可能性があります。

(IBDプラス編集部)

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