IBD患者を部下に持つ管理職の胸の内②~病気の正しい知識が、適切なマネジメントを助ける~

ライフ・はたらく2018/6/8

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IBD患者が働くうえで、難しいのが職場での理解です。部下にIBD患者を抱える上司は、IBD患者の部下に対してどのような思いを持ち、接しているのでしょうか?そして、仕事での関わり方や業務の進め方は?今回は、同年代の部下(Aさん)が潰瘍性大腸炎患者という、レジャー業界で働く管理職のTさんから、リアルな気持ちを伺いました。

Tさん(40代・女性)

全国にレジャー施設を展開する企業に勤務。施設現場での仕事などを経て、5年前から本社の総務系セクションに所属。課長として、およそ20名の部下のマネジメントを担っている。

突然具合が悪くなり、潰瘍性大腸炎を発症した部下・Aさん

レジャー施設

――最初に、Tさんの所属する会社や仕事内容についてお聞かせください。

Tさん:私が勤務しているのは、全国に展開しているレジャー施設の運営企業です。現在は本社の総務系セクションの課長として働いています。私の課には、20代の若手から定年近いベテランまで、およそ20名の社員が在籍。総務の仕事をしていますが、レジャー施設に携わる業界ですので、基本的には土・日も出勤しています。

――部下である40代の女性(Aさん)が潰瘍性大腸炎だとお伺いしましたが。

Tさん:Aさんとは、5年ほど前から私と同じ総務系のセクションで一緒に働いています。付き合いは長くて、10年以上前にも、社内の別の事業所で一緒に働いていた時期がありました。Aさんが潰瘍性大腸炎を発症したのはその頃です。

当時はレジャー施設の現場で働いてました。1日中立ち仕事で、特に土・日は非常に忙しい職場です。Aさんも現場に立って元気に仕事をしていたのですが、突然体調を崩して緊急入院してしまいました。それまではほかのスタッフと同じように働いていたので、とても驚いたことを覚えています。Aさんは2週間入院した後に、しばらく療養し、トータルで1か月間欠勤しました。Aさんが潰瘍性大腸炎だと知ったのも、そのときです。当時の仕事は現場での立ち仕事で非常に忙しかったですし、また「潰瘍性大腸炎」というのが聞きなれない病名であることもあって、まわりの社員たちは、原因不明の難病であるとは思わず、「疲労やストレスで胃潰瘍になった」というくらいの軽い認識しかなかったと記憶しています。

復帰してもAさんの顔色は青白く、ずっと調子が悪そうで、出社するだけでも精一杯という状態。立ち仕事は肉体的にも厳しいので、座ってできる事務仕事をしていました。復帰してから半年ほど経過した頃にはAさんの調子もずいぶんよくなったのですが、しばらくするとまた体調を崩してしまい、そんな調子で入退院を繰り返していました。

――Tさんご自身は潰瘍性大腸炎という病名は知っていましたか?

Tさん:はい。実は、潰瘍性大腸炎を患っている親戚がいるのです。ですから、潰瘍性大腸炎という病気でどんな症状が出るのかは、ある程度知っていました。そうしたこともあり、Aさんが職場復帰してからは、できる限り仕事のサポートをしてきました。Aさん自身も、自分が潰瘍性大腸炎であることをオープンにしており、周囲の理解を得ようといろいろな情報発信をしていましたが、私からもミーティングの場などを利用しながら、同じ職場の人たちに潰瘍性大腸炎について、どんな病気でどんな配慮が必要なのかなどの説明をしていました。

仕事の進捗状況が分かるように、日々情報共有を

事務仕事

――現在の職場で、5年前からまたAさんと一緒に働くようになったそうですね。

Tさん:レジャー施設の現場の仕事のあと、私はAさんとは違う部署に配属になりましたので、その間はたまに連絡を取りあう程度の付き合いでした。Aさんはシステム関連の部署などを経て、5年前から、現在の総務系のセクションで、久々に一緒に働くことになりました。現場で働いていたときと同じように、今の部署でも周囲の理解を得られるよう、私からもAさんの症状に関して説明しています。Aさんに対しては、「体調がよくないときは、まわりを気にしなくてよいので、無理しないように」と伝えています。

現在もAさんは、年に2~3回ほど体調が悪化することがあり、入院したり、食事制限をするため2~3か月出社できないこともあります。当社の仕事は土・日が忙しいのですが、そのタイミングで体調が悪く欠勤することもあり、仕事のパフォーマンスは100%とはいえません。70%くらいでしょうか。Aさん自身も予期できないタイミングで突然体調が悪化するため、急な休みにも対応できるように、業務の進捗状況の共有は欠かせません。

――先ほど、周囲にも情報発信をしているというお話がありました。実際に今の職場環境では、まわりの理解は得られているのでしょうか?

Tさん:さまざまな立場・考え方の社員がいますので、正直にいえば、“まわりの人々がみんな理解して協力いる”という状態ではありません。Aさんの急な欠勤や長期間休んだりすることに対して、おもしろくないと思っている社員もいることも、残念ながら事実です。しかし、Aさんは職場の仲間に迷惑かけたくないという思いが強い方で、積極的に自分の状態について話していますし、体調に問題がないときには、職場の飲み会などにも出席して、進んで周囲とコミュニケーションをとっている姿も見かけます。

潰瘍性大腸炎の場合、急にお腹が痛くなることがあり、「通勤時間が恐怖」とAさんからよく聞きます。当社ではまだ導入されていませんが、在宅で仕事ができる環境作りが必要だと感じています。

症状をオープンにし、周囲に理解を求める

通勤

――管理職という立場から見て、潰瘍性大腸炎の患者さんがより良い環境で働くために求められることは何でしょうか?

Tさん:上司としては、今の体調をオープンにしてもらったほうが助かりますね。調子がいい・悪いの状態を教えてくれたほうが、仕事量の調整や進捗の共有などの対策もしやすいですし。Aさんを見ていて、やはり患者さん本人も、周囲と話しながら理解を得るように努力することが必要だろうと思います。一方で、先ほどお話ししたように、同僚のなかにはやはり、内心おもしろくないと思っている方もいるでしょう。体調がよく、元気なときには、周囲の仕事を率先して引き受け、同僚が休みを取りやすいように協力するなど、工夫次第で気持ちの面でも周囲の理解を得ていくことができるのではないでしょうか。

――潰瘍性大腸炎などIBD患者の部下を持つ上司は、どんなことを心がければよいでしょうか?

Tさん:まずは、自分自身が病気に関する知識を身につけることが必要だと思います。私の場合、偶然にも親戚に潰瘍性大腸炎の患者がいたことで、ある程度予備知識がありました。それ以外にも、インターネットなどで調べて理解を深めています。潰瘍性大腸炎は、「昨日まで元気だったのに、いきなり体調を崩して休んでしまう」ということが起こり得る病気です。その点を把握しておかないと、適切なマネジメントができませんからね。

また、業務面においては、1人だけに仕事を任せずに、誰かと一緒に2人1組の体制で仕事をしてもらうようにしています。進行中の業務などは、日々、進捗状況を仲間に伝えるなどして、きちんと共有できる仕組みや体制を整えることも大切だと考えています。

(取材・執筆:眞田 幸剛)

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