アロフィセル(一般名:ダルバドストロセル)
クローン病の治療で使用する主なお薬一覧 | 2022/10/20
クローン病では、炎症をくり返すうちに消化管のダメージが蓄積し、腸管に穴が開いて腸管同士がつながる瘻孔が形成されたり、腸管が硬く狭くなったりすることがあります。肛門内の病変から肛門の周りの皮膚までトンネル状に穴が通じている状態を痔瘻と言います。このお薬は、複雑痔瘻がある非活動期または軽症の活動期クローン病患者さんで、過去に少なくとも1つの既存のお薬で治療しても瘻孔への効果が不十分であった方のうち、医師が適切と判断した方に限定して使用される再生医療等製品です。
監修者:薬剤師 谷本かおり
効能・効果
痔瘻では、細菌感染や患者さんご自身の排泄物などが付着することによって、慢性的に炎症が起きています。アロフィセルに含まれる幹細胞は、投与後に体内で活性化し、免疫細胞の増殖を阻害したり、免疫を抑制する細胞(制御性T細胞)を増殖させることにより、免疫反応を抑えます。慢性的な炎症を鎮めることで、瘻孔周囲における組織の治癒を促します。
アロフィセルの特徴
病気やケガで失われた身体の組織の再生を目指す再生医療では、人や動物の細胞や遺伝子を加工した再生医療等製品を用います。アロフィセルは、健康成人の皮下脂肪組織から分離した幹細胞を培養して作られた再生医療等製品です。幹細胞は、身体の組織や臓器を作るもととなる細胞で、身体を作るさまざまな組織の細胞に変化する能力があります。アロフィセルは、さまざまな種類の幹細胞のうち、間葉系幹細胞と呼ばれる細胞を培養して作られたもので、免疫調整機能があると考えられています。使用することが決まると、数週間前から各種検査や処置を行って準備をします。
使用上の注意
- 以前に薬や食べ物で、かゆみ、発疹などのアレルギー症状が出たことがある方は医師に伝えてください。
- 使用中は、感染症にかかりやすくなっているので注意が必要です。
- 製造には安全対策が取られていますが、健康成人から採取した組織を原料としていますので、予期しない感染症のリスクを完全には否定できません。担当の医療者から十分な説明を受けた上で治療を受けてください。
- 妊娠、授乳中、または妊娠している可能性のある方は医師に事前に相談してください。
- アロフィセルを使用することが決まってから治療を受けるまでの間にクローン病の症状が悪化したり、体調が悪くなってしまった場合は、直ちに医師に連絡してください。
併用禁忌・併用注意
併用してはいけない薬は設定されていません。
用法・用量
通常、成人にはヒト間葉系幹細胞として、1回量120×106個(4バイアル(24mL)全量)を、最大で原発口2つまで、二次口3つまでの瘻孔に対して使用します。なお、投与の2~3週間前までに瘻孔の状態や合併症を調べるため、麻酔を使った検査やMRI検査などを行います。また、瘻孔の処置、抗菌薬の投与をし、適切な排膿処置を行います。投与当日は麻酔薬を使用し、瘻孔の処置などを行ってから投与します。
副作用
主な副作用として、肛門膿瘍、肛門周囲痛、痔瘻、クローン病の症状の悪化、下痢などが報告されています。このような症状に気づいたら、担当の医師にご連絡ください。
コラム
細胞を使った再生医療と言えば、ノーベル賞を受賞した山中教授のiPS細胞を思い浮かべる方も多いかと思います。しかし、現在実用化されている再生医療の主なものは、ヒトや動物から採取した幹細胞を使用したものであり、iPS細胞を使った再生医療はまだ研究段階にあります。iPS細胞は、遺伝子テクノロジーで人工的に創り出された人工多能性幹細胞で、ヒトや動物から採取した幹細胞とは異なる性質を持っています。今のところ、ヒトや動物から採取した幹細胞を使う再生医療が先行して実用化が進んでいますが、iPS細胞についても、日本や欧米でさまざまな研究が行われています。
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