オンボー(一般名:ミリキズマブ)

炎症性腸疾患のひとつであるクローン病は、大多数は小腸や大腸で起こると言われていますが、口腔から肛門までの消化管のどの部位にも炎症や潰瘍が起こりうること、複数の炎症部位が非連続にできることを特徴とします。炎症は消化管の粘膜だけでなく、壁全体に起こることもあり、炎症によって腹痛や下痢、血便などが生じると言われています。オンボーは、これまでの治療でも効果が十分に得られない場合のクローン病に使用されます。これまで潰瘍性大腸炎に適応があったオンボーですが、2025年3月に既存治療で効果が十分得られない中等度から重症の活動期クローン病に対する適応追加が承認されました。

監修者:薬剤師 百武友加

効能・効果

クローン病は口から入ってくる異物を排除するはずの免疫が、何らかの原因で消化管の粘膜を攻撃してしまうために起こると考えられています。炎症を引き起こす原因物質の一つがインターロイキン(IL)であり、ミリキズマブはその働きを抑える生物学的製剤です。中等症~重症の活動期クローン病の症状を抑え(寛解導入療法)、症状の治まった状態を維持する(維持療法)目的で使用します。ミリキズマブはILのうち、特にクローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患に関わるIL-23p19に作用し、その働きを抑えるため、消化管の粘膜への過剰な免疫反応や炎症を抑える効果があります。

オンボーの特徴

ミリキズマブは、IL-23p19という生体物質に対して働く抗体を、バイオテクノロジーにより人工的に作製して医薬品にしたもので、生物学的製剤と呼ばれます。標的に対して特異的に働くことから、高い治療効果が期待されています。ミキリズマブの標的であるIL-23p19は、免疫機能において重要な役割を担うサイトカインの一つであり、感染防御などに関わっています。このため、IL-23p19の働きを抑えている間は感染症にかかりやすくなる可能性があるため特に注意する必要があります。ミリキズマブには2種類の投与方法があります。病院で点滴で体内に投与する方法と、注射器を使ってご自身でお腹や太もも、二の腕の外側に注射する皮下注射という方法です。詳しくは、用法・用量をご覧ください。

使用上の注意

  • 使用の前には、悪化する恐れのある感染症にかかっていないかを調べます。
  • 使用中は、感染症にかかりやすくなっているので注意が必要です。
  • 使用期間は生ワクチンの接種はできません。
  • 妊娠、授乳中または妊娠している可能性のある方は、医師に相談してください。
  • 肝機能の数値の上昇が見られることがありますので、定期的に受診し、血液検査を受けてください。

併用禁忌・併用注意

他の生物学的製剤またはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤との併用は避けてください。

用法・用量

通常、成人には1回900mgを4週間隔で3回(初回、4週、8週)点滴で静脈内に投与します。皮下投与用製剤を開始する場合は、点滴での投与3回目の4週間後とされています。また、ミリキズマブ皮下投与用製剤による治療中に効果が弱まったと判断された場合には、1回900mgを4週間隔で3回点滴での投与を追加することがあります。点滴による治療開始から24時間後までに効果が得られない場合には、治療を継続するかどうか医師により判断されます。

副作用

このお薬を使用することで、頭痛、吐き気、のどの痛みなどのかぜのような症状、発疹、注射した部位の腫れなどが見られることがあります。 まれに下記のような症状があらわれることがあり、これは[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性があります。このような症状に気づいたら、すぐに担当の医師または薬剤師に相談してください。また、肝機能の数値が上昇することがあるため定期的な血液検査が必要です。臨床試験において皮膚及び皮膚以外の悪性腫瘍の発現が報告されています。因果関係は明らかではないものの、悪性腫瘍の発現に注意が必要なお薬です。

  • 寒気、ふらつき、発汗、発熱、口唇の周りの腫れ、意識の低下、息苦しさ、かゆみ、じんましん、発疹[重篤な過敏症]
  • 発熱、寒気、倦怠感[重篤な感染症]

コラム

皮下注射タイプのオンボーは、光を避けて使用していただきたいので、使用直前に箱から取り出してください。また、2~8℃で冷蔵保存していただき、冷蔵庫から出した後は30℃を超えない場所で2週間以内に使用しましょう。冷蔵庫から取り出してすぐに使う場合は、30分程度待って室温に戻してから使ってください。冷たいまま使うことで、痛みを感じる場合があります。また、ご自身で注射する際は、太ももの前側(少なくとも膝から5cm上側かつ脚の付け根から5cm下側)またはおなか(へその周辺から5cmは離す)に注射します。1回あたりの投与量=注射器2本分のため、必ず2本注射します。それぞれの注射部位は少なくとも5cm以上離してください。

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