エレンタール(成分栄養剤)

クローン病は消化管のさまざまな部分に慢性の炎症が起こる疾患で、腹痛、下痢、血便、発熱、肛門付近の痛みや腫れ、体重減少などがみられ、治療により寛解(症状はないが弱い炎症が起こっている)しても、再燃(症状が悪化する)を繰り返します。食事や栄養状態は、クローン病の寛解や再燃に関係があると考えられています。食事に含まれる脂質やタンパク質が炎症を悪化させることがあるため、消化管を守りながら必要な栄養を補う目的で、エレンタール配合内容剤(以下エレンタール)を処方されることがあります。エレンタールは「アミノ酸・糖質・脂肪・電解質・微量元素・ビタミン」を成分とする経腸成分栄養剤です。

監修者:薬剤師 谷本かおり

効能・効果

消化をほとんど必要としない成分で構成された、吸収されやすい高カロリー栄養剤で、腸の安静をはかりながらバランスのよい栄養を摂ることができます。消化管の疾患があり、食事を摂ることが困難な場合や、手術前後の栄養管理に使用します。

エレンタールの特徴

水やぬるま湯に必要量の粉末を溶かして服用します。経口摂取が困難な場合は、鼻の穴(経鼻)または胃や腸に開けた穴(胃瘻、腸瘻)から、チューブで胃や腸内に直接注入することもできます。消化の必要なタンパク質は含まれておらず、吸収されやすいアミノ酸がバランスよく配合されています。また、脂肪の配合も最小限となっており、腸を安静に保つことができます。栄養分はそのまま腸から吸収され、残りかす(便)はほとんど出ません。エレンタールは少し臭みがあり、そのままだと飲みにくいのですが、青りんごやパイナップル味など10種類の専用フレーバーがあり、これを添加すると少し飲みやすくなります。また、とろみをつけてムース状やゼリー状に調整することもできますので、必要であれば、医師や薬剤師に相談してみてください。

使用上の注意

  • 調整方法や使用方法、注意点などについて、必ず、医師や薬剤師から説明を受けてください。
  • 水やぬるま湯に溶かしたら、12時間以内に服用してください。
  • 服用する速度が速すぎると、下痢や腹痛を起こすことがあります。
  • 過去に薬でアレルギー症状が出たことがある方、糖尿病、ステロイドを使用中で糖代謝異常がある方、アミノ酸代謝異常がある方、小腸切除を受けて腸の機能が低下している方、妊娠・授乳中の方、他の薬を服用中の方は、必ず医師と薬剤師に伝えるようにしてください。

用法・用量

通常、エレンタール配合内用剤80gを300mLとなるような割合で水またはぬるま湯に溶かし(1kcal/mL)、鼻腔ゾンデ、胃瘻、または腸瘻から、十二指腸あるいは空腸内に1日24時間持続的に注入します(注入速度は75~100mL/時間)。また、要により本溶液を1回または数回に分けて経口投与もできます。標準量として成人1日480~640g(1,800~2,400kcal)を投与します。なお、年令、体重、症状により適宜増減します。一般的に、初期量は1日量の約1/8(60~80g)を所定濃度の約1/2(0.5kcal/mL)で投与開始し、状態により、徐々に濃度および投与量を増加し、4~10日後に標準量に達するようにします。
【調製方法】エレンタール配合内用剤1袋80gを1kcal/mLに調製する場合は、容器に水またはぬるま湯を約250mL入れ、エレンタール配合内用剤1袋を加えて速やかに攪拌します。この場合、溶解後の液量は約300mL(1kcal/mL)となります。エレンタール配合内用剤プラスチック容器入り1本80gを1kcal/mLに調製する場合は、水またはぬるま湯で溶解し、液量を約300mLの目盛り(凸部)に調製します。注入量や濃度、注入速度は医師の指示に従ってください。少量で開始し、徐々に増量するのが一般的です。使用量は年齢・体重・症状に応じて適宜増減されます。医師の指示を守り、自己判断で変更したり中止したりしないでください。

副作用

比較的起こりやすいのは下痢で、そのほかには、お腹の張り、腹痛、吐き気などがあります。このような症状に気づいたら、医師や薬剤師に相談してください。
まれに下記のような症状があらわれますが、[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性があります。このような場合は使用を中止し、すぐに医師の診療を受けてください。

  • 蕁麻疹、ふらふらする、息苦しい [ショック、アナフィラキシー様症]
  • 倦怠感、冷や汗、顔面蒼白 [低血糖]

コラム

エレンタールは、食事が摂れないときに栄養を補うことだけが目的ではなく、食事と置き換えることで、腸を休めることも目的としています。症状が落ち着いてくると、食事を我慢してエレンタールを服用することはストレスになるかもしれません。そういうときは「朝・昼・夕の1食または2食だけをエレンタールに置き換える」、「食事の量を減らして一部をエレンタールに置き換える」などに変更できないか、医師に相談してみてください。自己判断で変更することは、症状の悪化につながることがありますので絶対に避けるべきですが、治療の経過によっては医師の判断で変更できる可能性があります。指示通りに服用するのが難しい場合は、できるだけ楽に継続できる方法を、医師と話し合って探してみてください。

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