サラゾピリン(一般名:サラゾスルファピリジン)
クローン病の治療で使用する主なお薬一覧 | 2018/5/18 更新
クローン病は消化管のさまざまな部分に慢性の炎症が起こる疾患で、腹痛、下痢、血便、発熱、肛門付近の痛みや腫れ、体重減少などの症状が、よくなったり(寛解;症状はないが弱い炎症が起こっている)悪くなったり(再燃)を繰り返します。サラゾスルファピリジンは、服用後大腸内で腸内細菌により分解され、有効成分である5-アミノサリチル酸になって大腸粘膜に直接働き、大腸における炎症を抑えるお薬です。活動期に症状を抑えるためだけでなく、寛解を維持するためにも処方されます。
監修者:薬剤師 谷本かおり
効能・効果
サラゾスルファピリジンが分解されてできる5-アミノサリチル酸には、炎症細胞から出て細胞に傷害を引き起こす活性酸素を除去し、ロイコトリエンという炎症を引き起こす物質がつくられるのを防ぐ働きがあります。これにより、炎症の進展と組織の障害を抑制し、腹痛や血便などの症状を改善します。
サラゾピリンの特徴
抗炎症作用をもつ5-アミノサリチル酸は、病変部位に直接働くことで、効果を発揮します。大腸で抗炎症効果を発揮させるには、5-アミノサリチル酸をうまく大腸まで届けるような工夫が必要です。サラゾスルファピリジンは小腸で全て吸収されてしまわないよう5-アミノサリチル酸とスルファピリジンが結合した構造をしており、その結合部分は大腸の腸内細菌により分解されます。これにより、サラゾピリンを服用すると、ちょうど大腸で有効成分の5-アミノサリチル酸が切り離され、その効果を発揮するのです。ただし、大腸で炎症作用を発揮することから、大腸型のクローン病には有効ですが、小腸型には向きません。
使用上の注意
- 血液の病気がある方、腎機能や肝機能が低下している方、喘息のある方は症状が悪化することがありますので、医師や薬剤師にお伝えください。
- 医師の指示に従って、定期的に臨床検査を受けるようにしてください。
- 妊娠または妊娠の可能性のある方、授乳中の方は医師や薬剤師にお伝えください。
- 症状の出ていないときでも、寛解を維持するために処方されます。医師の指示なく服薬量を減らしたり中止したりしないでください。
- 皮膚や爪、尿や汗がオレンジ色に着色することがあります。これは、薬の成分の色ですので心配ありませんが、ソフトコンタクトレンズを使用している方は、レンズが着色することがあります。
併用注意
- スルホニルアミド系またはスルホニルウレア系の糖尿病の薬と併用すると、低血糖を発症するおそれがあります。
- ワーファリンなどの抗凝固剤と併用すると、出血傾向が現れることがあります。
- 葉酸の吸収が悪くなることがあります。
- ジゴキシンなどの吸収が悪くなることがあります。
- アザチオプリンやメルカプトプリンと併用すると骨髄抑制が現れるおそれがあります。
用法・用量
通常1日4~8錠(2~4g)を4~6回に分けて服用します。症状によっては初めに毎日16錠(8g)を服用し、3週間を過ぎると次第に減量して1日3~4錠とすることもあります。ステロイド療法を長期間継続していた場合は、サラゾピリン4錠(2g)を併用しながら、徐々にステロイドを減量していきます。
※薬の用法・用量は年齢、症状により医師の判断で増減されます。医師の指示をしっかりと守って服用してください。
副作用
発疹やかゆみ、だるさ、頭痛、吐き気、食欲不振などが現れることがあります。また、男性には精子数および精子運動性の減少が起こることがありますが、服用をやめれば回復します。
ごくまれに下記のような症状があらわれますが、[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性があります。使用を中止し、すぐに医師の診療を受けてください。
- 貧血、発熱、のどの痛み、鼻血・歯茎からの出血 [再生不良性貧血、汎血球減少症、無顆粒球症、血小板減少症、貧血(溶血性貧血、巨赤芽球性貧血等)、播種性血管内凝固症候群(DIC)]
- 発疹、発赤、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、発熱、全身倦怠感 [中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、紅皮症型薬疹]
- 発疹、発熱などのかぜのような症状、リンパ節の腫れ [過敏症症候群、伝染性単核球症様症状]
- 呼吸困難、胸の痛み、から咳 [間質性肺炎、薬剤性肺炎、PIE症候群、線維性肺胞炎]
- 尿量減少、むくみ、全身倦怠感 [間質性腎炎、ネフローゼ症候群、急性腎不全]
- 胃痛、腹痛、吐き気、嘔吐、吐血、下血 [消化性潰瘍、S状結腸穿孔]
- 意識障害、痙攣等 [脳症]
- 頸部(項部)硬直、発熱、頭痛、悪心、嘔吐あるいは意識混濁 [無菌性髄膜(脳)炎]
- 胸の痛み、動悸、息切れ、発熱 [心膜炎、胸膜炎]
- 発熱、全身倦怠感、関節の腫れや痛み、発疹 [SLE様症状]
- 食欲不振、全身倦怠感、皮膚や白目が黄色くなる [肝炎、肝機能障害、黄疸、劇症肝炎]
- 顔や喉の腫れ、悪心、発疹、血圧低下、呼吸困難 [ショック、アナフィラキシー]
コラム
雑誌やインターネットには、お薬の副作用に関するさまざまな情報があふれています。それらの中には、注目を集めるために事実の一部だけを強調し、わざと誤解を招くような書き方をしたものも少なからずあります。健康なときは話半分で読むような記事でも、病気のときにはそれが唯一の真実であるかのように信じてしまうかもしれません。しかし、医師は記事を書いているライターや一般の方よりも多くの医療情報を得られる立場にあり、実際に診察をして患者さんの病状も理解しています。そのうえで、確かな科学的裏付けのある医療情報をもとに、それぞれの患者さんに合った治療を提案しているのです。どこまで本当かわからない記事に振り回されて、不安にならないようにしてくださいね。
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