ステラーラ(一般名:ウステキヌマブ)

クローン病は消化管のさまざまな部分に慢性の炎症が起こる疾患で、腹痛、下痢、血便、発熱、肛門付近の痛みや腫れ、体重減少などがみられ、治療により寛解(症状はないが弱い炎症が起こっている)しても、また再燃(症状が悪化する)を繰り返します。現段階ではまだ完治させる治療法が見つかっていないため、まず薬を用いて症状を抑え、寛解維持を目標とします。症状が他の薬では改善せず、強力なステロイドによる治療でも効果が十分ではない場合、ウステキヌマブを使用することがあります。このお薬は初回は点滴注射で行い、8週後の2回目からは維持を目的として皮下注射で行います。ウステキヌマブは、クローン病の主な原因物質のひとつと考えられているインターロイキン(IL)の働きを抑える生物学的製剤です。

監修者:薬剤師 谷本かおり

効能・効果

人間の体には、細菌やウイルス、異物などから体を守るための免疫と呼ばれる防御システムがあります。免疫にはさまざまなサイトカインと呼ばれる生体物質が関わっていますが、ウステキヌマブはその中のインターロイキンIL-12とIL-23の働きを抑えることで、免疫を抑制します。クローン病は、免疫が過剰に働くことと関連あると考えられており、ウステキヌマブで暴走する免疫を抑制することで治療効果を発揮します。

ステラーラの特徴

IL-12とIL-23に対して働く抗体を、バイオテクノロジーにより人工的に作製して医薬品にしたもので、このような薬は生物学的製剤と呼ばれます。従来の化学的に合成される医薬品に比べると、標的に対して高精度で強力に働くことから、高い治療効果が期待できます。ウステキヌマブの標的であるIL-12とIL-23は、免疫機能において重要な役割を担うサイトカインであり、感染防御や抗腫瘍作用に関わっています。このため、IL-12とIL-23の働きをステラーラで抑えている間は、感染症に特に注意する必要があります。また、ステラーラのような生物学的製剤は、点滴により体が薬に対し強く反応して全身状態が悪化する、重い副作用(インフュージョン・リアクション)が起きることがあり、十分な対処ができる設備の整った医療施設での使用が推奨されています。

使用上の注意

  • 使用の前には、悪化するおそれのある感染症にかかっていないかを調べます。
  • この薬を使用している間は生ワクチンの接種はできません。
  • ラテックスにアレルギーのある方は、皮下注射の注射針部分のカバーに天然ゴムが使われているため注意が必要です。

併用禁止・併用注意

他の生物学的製剤との併用は避けてください。

用法・用量

治療の初めに体重に応じた量を1回だけ点滴注射します。その8週間後に皮下注射し、それ以後は12週間の間隔で皮下注射を続けます。なお、投与の間隔が8週を超えると効果が弱まるようであれば、間隔を8週間まで短くすることがあります。投与間隔の短縮や、投与を継続するかどうかは、患者さんの症状や病気の経過、副作用などを考慮して医師により慎重に判断されます。

副作用

この薬を使用することで、頭痛やかぜのような症状、発疹などが起きることがあります。まれに下記のような症状があらわれますが、[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性があります。すぐに医師の診療を受けてください。

  • 体がだるい、ふらつき、意識の低下、考えがまとまらない、ほてり、眼と口唇のまわりの腫れ、しゃがれ声、息苦しい、息切れ、動悸、じんましん、判断力の低下 [アナフィラキシー]
  • かぜのような症状、体がだるい、発熱、嘔吐 [重篤な感染症]
  • 発熱、寒気、吐き気、嘔吐、頭痛、発疹 [重篤なインフュージョン・リアクション]
  • 体がだるい、長く続く咳や微熱 [結核の発症]
  • 発熱、から咳、息苦しい、息切れ [間質性肺炎]

コラム

ウステキヌマブが働く対象である“インターロイキン”という言葉は、他にも免疫の異常に関係する病気や、がんの薬についての記事で目にすることがあるかもしれません。インターロイキンとは、免疫に関係する細胞が産生する物質の仲間で、たくさんの種類があり、免疫が働くときの細胞間のシグナルなどさまざまな役割をしています。人工的に合成されたインターロイキンや、特定のインターロイキンの働きを抑える抗体は、それまで治療できなかった病気に新しい治療法をもたらしています。

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