エレンタールP(新生児・乳幼児用成分栄養剤)

クローン病は消化管のさまざまな部分に慢性の炎症が起こる疾患で、腹痛、下痢、血便、発熱、肛門付近の痛みや腫れ、体重減少などがみられ、治療により寛解(症状はないが弱い炎症が起こっている)しても、再燃(症状が悪化する)を繰り返します。食事や栄養状態は、クローン病の寛解や再燃に関与します。10代後半~20代にかけて発症することが多く、乳幼児の発症はまれですが、発症した場合は重症になりやすい傾向があります。症状が出ていると十分な栄養が摂れず、成長にも深刻な影響が出るため、消化管に負担をかけずに十分な栄養を摂る目的で、2歳未満の乳幼児にはエレンタールP乳幼児用配合内用剤(以下エレンタールP)が処方されることがあります。また、2歳以上であっても、医師が治療上必要と認めた場合は処方されることがあります。エレンタールPは、アミノ酸、糖質、脂肪、電解質、微量元素およびビタミンを成分とする新生児・乳幼児用成分栄養剤です。

監修者:薬剤師 谷本かおり

効能・効果

消化をほとんど必要としない成分で構成された、吸収されやすい高カロリー栄養剤で、腸の安静をはかりながら栄養を摂ることができます。消化管の病気があり、食事や未消化態タンパクを含むミルクなどで栄養を摂ることができない新生児・乳幼児に用いられ、手術前後の栄養管理にも使用します。

エレンタールPの特徴

水やぬるま湯に粉末を溶かして服用、またはチューブで消化管に直接注入します。消化の必要なタンパク質は含まれておらず、吸収されやすいアミノ酸がバランスよく配合されています。脂肪は新生児・乳児に必要なため、エレンタールPには、エレンタール配合内容剤(以下エレンタール)より多く配合されています。また、アミノ酸も、母乳を参考にバランスよく配合されています。栄養分はそのまま腸から吸収され、残りかす(便)は、ほとんど出ません。味は良くないのですが、風味をつけるためのエレンタールP専用フレーバーとして、フルーツミックス味があります。また、エレンタールと共通で使用できるフレーバーなどもありますので、必要であれば、医師や薬剤師に相談してみてください。

使用上の注意

  • 調整方法や使用方法、注意点などについて、必ず医師や薬剤師から説明を受けてください。
  • 水やぬるま湯に溶かしてから、6時間以内に使用してください。冷蔵保存の場合でも、30時間以内に使用してください。
  • 服用または注入する速度が速すぎると、下痢や腹痛を起こすことがあります。
  • 薬や食品アレルギーがある、アミノ酸代謝異常がある、出生時に低体重であったなど、医師から言われたことがあれば、使用前に医師と薬剤師に伝えてください。

用法・用量

【内服する場合】1袋を水またはぬるま湯で溶かし、1歳未満は20〜30g/kg体重(78〜117kcal/kg体重)、1〜2歳は15〜25g/kg体重(59〜98kcal/kg体重)を1日数回に分けて服用します。
【チューブを使用して注入する場合】1袋を水またはぬるま湯で溶かし、1歳未満は20〜30g/kg体重(78〜117kcal/kg体重)、1〜2歳は15〜25g/kg体重(59〜98kcal/kg体重)を1日24時間持続的に注入します。注入量や濃度、注入速度は医師の指示に従ってください。少量から開始し、徐々に増量していくのが一般的です。
使用量は年齢(月齢)・体重・症状に応じて適宜増減されます。医師の指示を守り、保護者の判断で変更したり中止したりしないでください。

副作用

比較的起きやすいのは下痢で、そのほかにおなかの張りや、嘔吐、便秘、貧血、発熱などの症状が出ることがあります。様子の変化に気づいたら、医師や薬剤師に相談してください。
まれに下記のような症状があらわれますが、[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性があります。このような場合は使用を中止し、すぐに医師の診療を受けてください。

  • 蕁麻疹、発熱、呼吸が速くなり苦しそうにする [ショック、アナフィラキシー様症]
  • 意識がなくなる、顔色が悪い [低血糖]

コラム

エレンタールとエレンタールPでは、脂肪や消化タンパク質の配合が異なっています。これは、2歳未満の新生児・乳児が必要とする栄養が、大人とは異なるためです。脂質は消化管への刺激となることがあるため、エレンタールではごくわずかしか配合されていません。しかし、新生児・乳児は十分な脂肪を必要とするため、エレンタールPは脂肪の配合量が多くなっています。また、アミノ酸の配合は、エレンタールは鶏卵を参考に、エレンタールPは母乳を参考に考えられています。このように、エレンタールとエレンタールPでは成分に違いがあり、2歳を超えていても、治療上エレンタールよりエレンタールPの方がよいと医師が判断した場合は、処方されることがあります。

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