クローン病とは?
クローン病 | 2017/9/28 更新
クローン病とはどんな病気?
クローン病は、口腔から大腸までの消化管、とりわけ小腸、大腸の腸管に非連続性(飛び飛び)に炎症が起きる疾患です。この炎症は体内に侵入してきた異物を排除するはずの免疫が、なぜか腸管を攻撃してしまうために起こると考えられています。代表的な症状は、慢性的な腹痛、下痢、発熱、体重減少などです。また、炎症の結果として腸管が狭くなる狭窄や、肛門部には痔瘻なども生じます。
診断に必要な検査
クローン病と似た症状を示す病気はほかにもあるため、自覚症状だけではこの病気かどうかはわかりません。そこで様々な検査が必要になります。
血液・便・尿検査などから炎症の程度を判断するとともに、X線検査、超音波検査、コンピューター断層撮影(CT)、核磁気共鳴画像法(MRI)、大腸内視鏡、バルーン内視鏡、カプセル内視鏡などで撮影した画像から、病変の位置や広がりなどの全体像を把握します。さらに内視鏡検査のときに、一部の病変を採取して、それを電子顕微鏡で観察することで、クローン病に特徴的な大腸組織の変化を確認します(病理検査)。これらの検査結果を総合的に判断し、ほかの大腸炎ではないことが確認できた場合に、クローン病と診断されます。
病型・重症度・病期
クローン病は、病変が集中している部分や症状の重さによって、病型・重症度・病期別に分類されます。これらの分類は、検査結果に基づいて行われます。
クローン病の病型は、病変が集中している部分から、4種類に分類されます。
- 小腸型…小腸に病変が集中している
- 小腸・大腸型…小腸と大腸に病変がまたがる
- 大腸型…大腸に病変が集中する
- 胃・十二指腸型…胃・十二指腸に病変がある
クローン病では、病気の活動性を評価する「CDAI(Crohn’s disease activity index)」と呼ばれる指標があります。1週間の便回数や腹痛、一般状態を点数化し、これに体重、症状や合併症の所見、腹部腫瘤、下痢に対する薬剤使用回数、血液検査の結果などを医師が点数化したものを合計した指標です。この点数や、合併症の有無、炎症の程度、治療への反応などを総合して「軽症」、「中等症」、「重症」と判定されます。
クローン病の病期は、炎症が活発に起きている時期かどうかで2種類に分類されます。
活動期…現在炎症が続いている 寛解期…炎症が治まっている
クローン病の治療
治療の目標
クローン病は現在、原因不明で根本治療がないため、いわゆる完全に治ること(治癒)は難しい病気です。しかし、治療の進歩により、多くの方がふつうの生活を送ることができるようになりました。治療では、炎症を抑え込んで、日常生活に支障のない状況を目指します。
クローン病の治療では、炎症状態の経過を踏まえ、活動期に炎症を抑えて寛解に持ち込むことを「寛解導入治療」、寛解となった状態を維持することを「寛解維持治療」といいます。
寛解導入治療
軽症~中等症の場合、5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤を使用する薬物療法と、患者が受容できる場合は栄養療法を併用します。これで改善しない場合や、中等症~重症の場合は、薬物療法あるいは栄養療法のいずれかを中心とする治療を行います。この際の薬物療法では経口のステロイド薬を用います。このいずれかで効果不十分かつ大腸に病変が残っている場合には、血球成分除去療法を併用します。病態が重篤で、高度な合併症がある場合には、経口や点滴でのステロイド薬や、生物学的製剤による薬物療法が行われます。
中等症から重症でステロイド薬が無効な場合は、ステロイド薬を増量するかステロイド薬の点滴静脈を行い、栄養療法中心の場合は完全な絶食での栄養療法に切り替えます。
外科手術は、大腸や小腸に穴が開いたり(穿孔)、腸管同士や腸管と他の臓器がくっつきあったところに穴ができている(瘻孔)、大量出血がある場合、中毒性巨大結腸症、薬物治療で改善しない腸閉塞、がんなどの合併症が生じた場合に行われます。
寛解維持治療
寛解維持療法では、5-ASA製剤、生物学的製剤、免疫調節薬、あるいは在宅での栄養療法を続けていくことになります。
- 参考文献
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日比紀文、久松理一編集:IBDを日常診療で診る,羊土社,2017
日比紀文監修、横山薫ほか編集:チーム医療につなげる!IBD診療ビジュアルテキスト,羊土社,2017
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