クローン病の治療|薬物療法、外科治療など、各治療について解説

クローン病2017/8/7

どんな治療があるの?(クローン病)

薬物療法とは?

寛解導入療法では、軽症~中等症の場合には、5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤を使用します。小腸型、小腸大腸型では、小腸で放出されやすいメサラジン(製品名:ペンタサ)、大腸型ではサラゾスルファピリジン(製品名:サラゾピリン)が使われます。

5-ASA製剤では、投与直後から数週間は、下痢や血便、発熱、発疹、倦怠感などの副作用が出ることがあります。これらの症状があったら、医師などに必ず報告しましょう。まれに重い肝障害や腎障害が起きることがあるので、定期的に検査を受けることも大切です。

軽症から中等症で5-ASA製剤の効果が不十分な場合や、中等症から重症の場合は、経口のステロイド薬を併用します。より重症の場合は、外科手術も考慮しながら、ステロイド薬を中等症から重症での使用時よりも増量するか、点滴静注剤のステロイド薬を使用します。

ステロイド薬を使用した場合には、効果が見られれば徐々に量を減らし、最終的には投与を中止します。これは、ステロイド薬を長期に使用すると、ムーンフェイスと呼ばれる顔のむくみが起こるほか、骨がもろくなったり(骨粗しょう症)、大腿骨の組織が死んだ状態になったり(壊死)するなど、日常生活に大きな支障をきたすことがあるからです。

ステロイド薬には、経口剤と静注剤のプレドニゾロン(製品名:プレドニン)があります。最近、全身的な副作用の少ない経口のプレドニゾロン(製品名:ゼンタコート)も使用できるようになりました。

ステロイド薬を減量していくと、炎症が再発・悪化する場合があります(ステロイド依存性)。このような場合には、異常な免疫反応を調整する薬剤(免疫調節薬)としてアザチオプリン(製品名:イムラン、アザニン)などを併用します。免疫調節薬を併用しながらステロイド薬を減量し、中止に持ち込みます。免疫調節薬は効果が認められるまで2~3か月ほどかかるといわれています。

ステロイド薬を使っても症状が改善しないステロイド抵抗性の場合には、免疫が炎症を起こすためのシグナルを伝えるたんぱく質の働きを抑える抗体である生物学的製剤を使用します。

生物学的製剤には、「インフリキシマブ(製品名:レミケード)」や「アダリムマブ(製品名:ヒュミラ)」、「ウステキヌマブ(製品名:ステラーラ)」などがあります。

免疫調節薬や生物学的製剤を使用すると、免疫の働きが抑えられるため、肺炎なども含め、感染症になりやすいことに注意が必要です。特に、B型肝炎、結核などにかかっている場合は、これらの病気が悪化する可能性があります。ステロイド薬、免疫調節薬を使用中に感染症にかかった場合は、すぐに病院を受診しましょう。

免疫調節薬では、白血球減少、食欲不振や嘔吐などの胃腸症状、膵炎、肝機能障害、脱毛などの副作用が、使用開始からそれほど時間が経っていない段階で現れることがあります。このため使用開始直後は頻繁に血液検査を行って、白血球が減っていないかなどをチェックします。生物学的製剤で感染症以外に注意すべき副作用として、アナフィラキシーショックと呼ばれる重いアレルギー反応が起こることがあります。

寛解維持療法では、原則として5-ASA製剤、寛解導入時に免疫調節薬や生物学的製剤を使用した場合は、それらの薬剤で治療を継続します。

クローン病では、肛門周辺では炎症の結果、肛門付近に膿がたまったり(肛門周囲膿瘍)、それが悪化して肛門と皮膚の間に穴が開いたり(痔瘻)しやすいのが特徴です。このような場合には、抗菌薬などによる薬物治療が行われます。

クローン病に関しては現在、数多くの新薬や治療法が開発中です。

栄養療法とは?

クローン病では腸管の炎症により、栄養分の吸収が低下して栄養不良になるほか、食物に含まれる脂肪が腸管の蠕動運動を激しくし、炎症を悪化させます。このため、薬物療法と併用する形で、栄養剤を用いた栄養療法が、寛解導入療法や寛解維持療法で用いられています。

栄養療法は、鼻から入れたチューブを十二指腸周辺まで通して、そのチューブから栄養剤を注入する経腸栄養療法が最も一般的です。栄養剤は脂肪分を極力低く抑え、たんぱく質については消化を行わなくても吸収できる合成アミノ酸で構成される成分栄養剤、たんぱく質をアミノ酸とペプチドまで分解し、消化の必要がほとんどない消化態栄養剤が用いられます。

成分栄養剤、消化態栄養剤は、味や香りがよくないため、受け入れられない人も少なからずいます。このため、半消化態栄養剤を使用する場合もあります。半消化態栄養剤は、たんぱく質はそのままであるため、一定の消化活動は必要になります。

成分栄養剤には「エレンタール」、消化態栄養剤には「ツインライン」、半消化態栄養剤には「エンシュア」、「ラコール」、「エネーボ」があります。半消化態栄養剤は口から飲むこともできます。

近年の治療の進歩により、栄養療法を使用しない方も多く、その場合は油ものやアルコールなどを控えるよう求められる方もいます。

小腸の病変がひどい場合や、病変の範囲が広いなどの重症な場合、腸管に穴が開いていたり(穿孔)、腸管同士や腸管とほかの臓器がくっつきあったところに穴ができている(瘻孔)場合、大量出血がある場合などは、絶食のうえ、心臓に近い静脈にカテーテルと呼ばれる管を入れ、そこから輸液の栄養剤を注入する完全静脈栄養療法を行います。

血球成分吸着除去療法とは?

血球成分吸着除去療法は、血液中の白血球を物理的に減らす治療法です。中等症から重症で、栄養療法や5-ASA製剤、ステロイド薬の効果が不十分あるいは使いにくい場合、大腸に病変がある場合に、この治療法の選択を検討します。

血球成分吸着除去療法は、左右どちらかの腕の静脈に注射針を刺し、注射針からチューブを通して血液を抜いて、チューブが接続した医療機器の中で白血球成分を吸着します。吸着が終わった血液は、別のチューブを通ってもう一方の腕の静脈に刺した注射針を経由して体内に戻されます。治療の際には、血液を抜いて機器に通す途中で血液が固まらないようにする薬剤を加えます。治療自体は約1時間ですが、治療開始前に注射針を刺す部位の消毒を行う必要があること、血が固まらないようにする薬剤を加えることや、使用している注射針が太いため治療終了後に確実な止血を行わなければならず、実際には1時間半から2時間はかかります。

使用する医療機器は、白血球の成分の中でも顆粒球、単球をビーズで吸着除去するアダカラム(GCAP)です。潰瘍性大腸炎で使用される、白血球成分のうち顆粒球、単球に加えリンパ球を糸状の膜でできたフィルターで吸着除去するセルソーバ(LCAP)は、クローン病では医療保険適応がありません。

治療にともなう副作用は薬物に比べると少なく、頭痛や吐き気、立ちくらみ、一過性の発熱などです。頭痛や吐き気を感じた場合は医師や看護師に遠慮なく伝えましょう。また、治療中にどうしてもトイレに行きたくなった場合にも、医師、看護師に伝えましょう。医師、看護師が、定められた手順にしたがって機器を停止させますので、その指示に従いましょう。

外科治療とは?

クローン病は消化管全体に病変ができ、腸管の病変は粘膜の表面から深くまで達するため、腸管の外までの合併症なども起こりやすく、病変部を手術で切除しなければならないこともあります。

とりわけ手術が必要になるのは、腸管に穴が開く(穿孔)、腸管同士や腸管と他の臓器がくっつきあったところに穴ができてしまう(瘻孔)場合、大量出血がある場合、炎症で結腸が拡大、拡張、膨張してガスや便を排出することができなくなり、放置すると結腸が破裂する可能性がある中毒性巨大結腸症や、がんなどの合併症が生じるといった、緊急性や生命維持に困難をきたした場合です。

手術では、小腸、大腸ともなるべく病変部のみに絞って、切除する範囲をできるだけ小さくします。ただし、大腸病変では、病変が広範囲にあったり多発していたりして、直腸の病変が比較的軽度で肛門機能が保たれている場合には、大腸のほとんどを摘出して自然肛門温存する手術を行います。また、直腸にひどい狭窄や瘻孔がある場合には、正常な腸管を腹部の隅に穴をあけて接続する人工肛門(ストーマ)を造設します。

クローン病では、繰り返す炎症で腸管内や肛門部が狭くなる狭窄がひどくなった場合に、外科治療が多く行われています。腸管の狭窄に対する手術では、かつては狭窄した腸管を切除し、残った正常な腸管同士を接続して縫い合わせる手法が行われていましたが、最近では薬物療法などで炎症を抑えた後に、バルーンを付けたバルーン小腸内視鏡を挿入して、狭窄部位でバルーンを膨らますことで、狭窄部位を拡げる内視鏡的バルーン拡張術も行われるようになっています。

肛門部の肛門周囲膿瘍、痔瘻では、膿などを物理的に吸引するドレナージを行います。また痔瘻では、ゴムや糸を痔瘻の穴に挿入した後に、肛門を経由してループさせて留置する処置を行います(シートン法)。これを行うと、ドレナージと同様の効果があるとともに、時間の経過でループ内の組織が脱落し、その後に肉芽が形成されて修復されます。

(2017年8月現在)

参考文献
日比紀文、久松理一編集:IBDを日常診療で診る,羊土社,2017
日比紀文監修、横山薫ほか編集:チーム医療につなげる!IBD診療ビジュアルテキスト,羊土社,2017
日比紀文監修、小林拓、新﨑信一郎編集:チェックリストでわかる!IBD治療薬の選び方・使い方,羊土社,2015