【開催レポート】炎症性腸疾患(IBD)メディアセミナー 5月11日
月別のイベント | 2021/5/24
最も患者数の多い指定難病IBDでも一般人の9割以上が「よく知らない」
アッヴィ合同会社は5月11日、「炎症性腸疾患(IBD)メディアセミナー」を開催。健康社会学者の河合薫さんがモデレーターを務め、札幌医科大学医学部 消化器内科学講座教授・仲瀬裕志先生と、病歴41年のクローン病患者でIBDネットワークに所属の山田貴代加さんが登壇されました。
「炎症性腸疾患(IBD)の実態と患者さんの生活への影響 ~意識調査の結果から~」と題した講演では、IBD患者さんと一般の方、791人を対象としたIBDの認知度・理解度および患者さんの生活意識に関する調査(2020年3月実施)の結果をもとに、仲瀬先生がお話しされました。
一般の人に対する「あなたは炎症性腸疾患(IBD)-潰瘍性大腸炎/クローン病を知っていますか」という質問に対し、「全く知らない」が56.0%、「聞いたことはあるが、どんな病気かは全く知らない」が34.8%と、全体の9割以上が「IBDという病気をよく知らない」と回答。患者数の多い指定難病とされるIBDですが、社会的認知度は極めて低いということがわかりました。
また、「IBDをある程度知っている」と回答した人でも、「若い世代の発症が多い」「症状が落ち着いた状態と症状が強い状態を繰り返しやすい」「脂質や食物繊維などの食事制限が必要」などについては、知らないと回答した人がほとんどでした。
IBD患者さんが日常生活で困っていることに関しては、患者さんの多く(悩みの4位)が「外見や見た目からは病気であることが分からず、理解を得られにくいこと」を挙げていましたが、一般の人の多くは「痛みのつらさ」や「トイレの回数」などの症状を上位の悩みと予測。患者さんが本当に困っていることと、一般の人が抱くイメージとの間にも大きなギャップがあることが明らかになりました。
これらの結果を受けて仲瀬先生は、「IBDの社会的認知度が想像以上に低いことに驚いた。IBDは若年発症が多く、就学・就労に大きく影響することからも、これは社会的課題と言える。一人ひとりがIBDを知ることが社会全体のIBDに対する理解につながる。さらに、患者さん自身が社会との積極的な関りを持つことが、IBD患者さんたちの活躍の場を広げる後押しになる」と、自身の考えを述べました。
大きな支えとなったのは、気持ちを理解してくれる患者会と一緒に考えてくれる主治医
続いて、同調査結果をもとに、仲瀬先生、山田さん、河合さんのトークセッションが行われました。
河合さんの「見た目で病気だとわからず困ったことは?」との質問に対し、10歳で発症、12歳でクローン病と確定診断されたという山田さんは、お弁当の時間と回答。見た目でわからないので「何で食べられないの?」と聞かれるのがつらかったそうです。また、看護師という職業柄、職場の理解はあって助かったと語る一方、患者さんは病気であることを知らないので、貧血で歩くのが遅かったり、寝ている人を起こす力が入らなかったりすると、「体力がないね」と言われてしまうこともあるそうです。
それでも「私は恵まれていた」と語る山田さん。生きていく上で大きな支えとなったのが、自身の悩みを理解してくれる患者会との出会いと、一緒に将来のことを考えてくれる主治医との出会いだったそうです。
この回答を受けて仲瀬先生は、「医師はできるだけいろいろな可能性を提示して、それを患者さん自身が選び、一緒に治療を進めていくことが大事。そのためには医師だけでなく、看護師さん、栄養士さん、薬剤師さんなどのヘルスケアプロバイダーが一丸となって治療に参加していくことが大切で、患者さんの治療満足度向上にもつながる」と、述べました。
難病への偏見を、難病になった自身に向けてしまうことがないように
最後に河合さんから投げかけられた「ご自身のウェルビーイングスコア(心身の健全な状態を数値化したもの)は高いですか?」という問いに対し、山田さんは「大人になって発症した患者さんの中には、自分が抱いていた難病への偏見を、難病になった自身に向けてしまうことがあることがあります。私は幼い頃に発症したので、病気に対する偏見もありませんでした。今思い返せば、何がやりたいのか聞いてくれた主治医がいて、それに挑戦させてもらえる環境があった。だから、満足度はとても高いです。みなさんにも、いろんなことにもチャレンジして欲しいと思います」と、力強く語りました。
一般の人は「外見からはわからない病気」であることがプラスにはたらくと考えてしまいがちですが、実はIBD患者さんにとっての大きな悩みの一つであることを再認識しました。また、山田さんの「難病への偏見を、難病になった自身に向けてしまう」という言葉が心に刺さりました。「どうせ難病だし…」と悩んでいる人たちに気付くことのできない社会が少しでも変わるように、IBDプラスではこれからも発信し続けていきたいと思います。
(IBDプラス編集部)
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