小学生のIBD患者さんとご家族にインタビュー~クローン病編2

ライフ・はたらく2025/2/7

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「小児IBD患者さんの情報がなかなか見つからない…」と悩むご家族は少なくありません。治療法や通院、学校給食、家庭での食事管理など、さまざまな課題に直面します。今回、中部地方在住の小学生クローン病患者さんとそのご家族に取材し、これまでの治療の経過や日常生活の工夫や経験を伺いました。診断後に海外旅行に出かけられたそうで、事前準備についてもお聞きしました。

Crohns Disease
患者さんのプロフィール
現在の年齢:11歳(小学5年生の女の子)
症状が出始めた年齢:10歳
診断を受けた年齢:11歳
居住エリア:中部地方
通院している病院:大学病院の消化器内科
習い事:学習塾、英語教室(発症前から)、ダンス(現在休会中)
 

病状と治療、通院している病院のこと

――症状が現れてから診断に至るまでの経過を教えてください

ママ:最初に症状(この時は症状とは思っていませんでしたが)が現れたのは、娘が小学4年生の秋頃でした。おなかの痛みを訴えたので、近所の小児クリニックを受診。整腸剤を処方されました。服用し始めて1か月が経つ頃には治まっていきました。

5年生になった2024年5月、再び腹痛を訴えました。再度同じ小児クリニックを受診して、この時も同じ整腸剤を処方されて、1か月様子を見ましょうと言われたのですが、日に日に症状がひどくなっていきました。少しおかしいなと思い始めて、消化器内科のクリニックも受診。「過敏性腸症候群ではないか」と、整腸剤、漢方薬を処方されました。ですが、改善する気配がなく、夜中に腹痛で起きる、1日に何度もトイレにこもる(下痢)ことが増えていきました。やっぱり何かおかしいと思って、小児クリニックに紹介状を書いてもらいたいと伝え、7月中旬に初めて大学病院を受診しました。

大学病院受診日、ノートに書き留めていたそれまでの娘の状態や食事のことなども伝えたところ、このまま入院したほうがよさそうだねと言われ、そのまま入院、検査の準備が進められました。一過性の腹痛なのだろうと思っていたのですが、診断の結果はクローン病でした。

発症以前はとても元気で、風邪もほとんどひかないような子で、腹痛を訴えるようなこともなく、いつも快便でしたし、そのような気配もなかったので、クローン病という診断には本当に驚きましたし、不安でいっぱいになりました。

――入院中の経過について教えてください

ママ:入院直後は絶食で、エレンタールを飲んではみたももの、すぐにトイレに駆け込む、1時間に3~4回腹痛が襲う状態で、何かを考えることすらできないほど、繰り返す腹痛に苦しんでいる様子でした。内視鏡検査後にはそれまでなかった血便が出るようになり、入院しているのに入院前よりつらそうな様子に変わっていきました。

治療は、最初は5-ASA製剤を使いましたが、期待したほどの効果が見られず、ステロイドに変更。しかし、入院初期より炎症マーカーの数値が上がったため、中断。最後にヒュミラを使用しました。投与後2日目、まだ薬の効果を実感できるほど改善していませんでしたが、退院させてもらいました。その時点で精神的にかなりつらい状況だったので一度リフレッシュを兼ねて自宅に戻らせてほしいとお願いしました。

退院後、数日経った頃に夜起きることなく眠れるようになりました。薬が効いてきてくれたようで、一時退院の予定でしたが、そのまま入院することなく、通院で大丈夫ということになりました。

――現在の治療、通院中の病院について教えてください

ママ:今は、ヒュミラ、整腸剤、エレンタールを使っています。退院後3か月間くらいは2週間に1度通院して血液検査とヒュミラ投与を受けていました。在宅自己注射(シリンジタイプ、補助具あり)に切り替えられるように、病院で打ち方指導をしてもらい、今は私が定期的に打っています。体調は、たまに腹痛はあるようですが、以前ほどの痛がり方や頻度ではなく、普通に生活することができています。

通院先は、診断を受けた大学病院です。成人を診ている診療科ですが、高校生までの患者さんは、小児に詳しい今の主治医の先生が診てくださるそうで、成人後はそのまま成人医療に引き継いでもらえる流れになっているそうです。通院時の診察の時はじっくりと話を聞いてくださいます。

――エレンタールはどのように飲んでいますか?

お子さん:エレンタールは苦手です(ニッコリ)。入院中にパイナップル味、オレンジ味、ヨーグルト味とか、フレーバーの分量を変えながら試しました。でも、今は鼻をつまんで、フレーバーなしで飲んで、お茶で飲みこむようにしています。

ママ:入院中はほぼ全てのフレーバーを試しました。ゼリーにもしました。それでもなかなか気に入る飲み方が見つからず、ある時、「鼻をつまむとにおいがしないからいいかも」と娘が言い出して、今はその飲み方になっています。学校から帰宅時、習い事から帰ってきた時、夜ごはんの後に分けて飲んでいます。

学校のこと、お友達への病気の伝え方

――学校での給食について、どのようなことに気を付けていますか?

ママ:夏休み中に担任の先生と面会して、状況を説明するとともに、新学期からは給食ではなくお弁当にさせてほしいと伝えました。夏休み明けから急にお弁当に変わることでクラスメイトが驚いてしまうかもしれない、だけど、娘は病気のことを伝えてほしくないという意向があったので、担任の先生には病気のことは触れず、お弁当になることだけをさらっと伝えてほしいとお願いしました。

実際には、給食の献立表を見て、食べられそうなもの、そうでないものに合わせて、足りない分をお弁当で持参するという形にしています。クラスのお友達にもアレルギーがある、という伝え方をしています。

――その他にお願いしていることはありますか?

ママ:少し前まで貧血がひどかったので、体育の授業でフラフラすることがあれば途中で休ませてほしいということを伝えました。5年生なので宿泊合宿があったのですが、事前に献立表をもらって調整をしてほしいメニューを具体的に伝え、エレンタールの飲み方についても伝えました。

おうちでの好きなごはん、作り分け、旅行準備について

――ご家族の食事は作り分けなどされていますか?

ママ:作り分けはせず、娘と一緒のメニューを食べています。

――ママが作るごはんで好きなメニューは何ですか?

お子さん:豆乳クリームパスタ(写真)が好きです。エビとほうれん草が入っています。たくさん食べられます。あとは、大根が好きだから、ぶり大根も好きです。

画像右寄せ

ママ:娘は発症前からクリームパスタが大好きでした。白米と水のみで作られたスパゲティタイプの米粉パスタと、無調整豆乳、ほうれん草、マグロのそぼろ、エビを使います。貧血防止のために鉄分が取れるようにと、ほうれん草とマグロを入れました。

――お菓子は何が好きですか?

お子さん:マシュマロ(りんご味とぶどう味が入っているもの)とカヌレ(米粉やココナッツバターを使って作られている、近所にあるスイーツ店)が好きです。

――発症後に海外旅行にも行かれたそうですが、どんな準備をされましたか?

ママ:診断前からオーストラリアへの旅行を計画していたのですが、娘の様子を見つつ、実際に予約したのは旅行の直前でした。主治医の先生に事前に相談したところ、「状態や数値は安定しているし、楽しんできてね」と言ってくださいました。

準備したことはいろいろありますが、治療関連では、ヒュミラを打つタイミングを少し前倒しにしてもらう調整をお願いしました。出発直前に打ってから行けるように配慮していただきました。

また、エレンタールについても、英語版の薬の説明書を用意してもらいました。手荷物にエレンタール(粉末)を入れていたので、万が一現地の空港で何か聞かれても説明できるようにとお願いしました。

食事は、炊飯器を持っていっておにぎりを作ったりもしました。温度管理にも気を付けながら、現地では遊園地に行って絶叫マシンに乗ったりプールで遊んだりと、旅行を最後まで楽しむことができました。

小児IBD患者さんのご家族へのアドバイス

――最後に、IBDの小児患者さんやご家族へのメッセージをお願いします

ママ:娘がクローン病と診断されてから、SNSを通じて同じ境遇の方々とつながりたいと専用のInstagramアカウントをつくりました。同じ病気のお子さんを持つ親御さんのアカウントをフォローし、DMでコミュニケーションを取ることで、さまざまな工夫や経験を共有していただきました。

同じクローン病でも症状や使用する薬が人それぞれ異なること、一方で、お弁当作りの悩みなどは共通していて、また、「周囲に同じ境遇の人がいない」と思っている方が多いことも知りました。

数か月前から私も自分の体験を発信し始めました。SNSでのつながりは心の支えとなり、前向きな気持ちを保つモチベーションにもなっています。同じような状況で悩んでいる方がいらっしゃいましたら、ぜひInstagramをご覧ください。共感できる部分や役立つ情報を見つけてもらえたらうれしいです。

SNS:https://www.instagram.com/ibd_mama_foods/

(IBDプラス編集部)

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