【企業提供】松田耕一郎 先生に聞く IBDとともに生きる働く世代をサポートする取り組みとアドバイス
ライフ・はたらく | 2025/10/10
炎症性腸疾患(IBD)の症状は、患者さんの日常生活に深刻な影響を及ぼすことがあります。突然の腹痛や下痢で行動が制限されるだけでなく、再燃への不安から、進学や就職といった人生の大切な節目で一歩を踏み出すことを躊躇してしまう方も少なくありません。職場での人間関係に影響が出ることもあります。
こうした現実と向き合う患者さんの治療と仕事の両立について、松田小児科・消化器IBDクリニック院長の松田耕一郎 先生にお話を伺いました。
取材日2025年8月25日(肩書などは取材当時)
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治療を続けながら仕事や夢を実現してほしい
――IBDが患者さんの学業や仕事に及ぼす影響について教えてください。
IBDの症状は外からは見えにくいため、周囲の理解を得にくく、学業や仕事に支障をきたすことがあります。急に体調を崩す、数日仕事を休まなければならない、といった状況は多くの患者さんで起こり得ますから、IBDは労働生産性の低下にもつながる可能性がある疾患であると言えるでしょう。
私の患者さんの中には、就職試験をあきらめざるを得なかった方や、再燃への不安から海外出張を断念しようとした方もいました。そうした人生の大切な転機において、せっかくのチャンスを逃してしまうことは患者さんにとって大きな損失となります。
――いつ症状が表れるか、不安の中で生活されている方が多いのですね。
寛解を維持している方でも、再燃したときのことを常に考えていることが多いと思います。新しいことに挑戦したいのに躊躇してしまったり、仕事を休んで同僚に迷惑をかけたくないと消極的になってしまったりする方もいます。
私は常々、「IBDであることが人生の選択肢を狭めることにつながってほしくない」と考えています。最近はさまざまな治療法が選べるようになり、寛解を長期にわたって維持できる患者さんが増えてきました。症状が表れても、早期の治療で再燃を防げる可能性もあります。一人ひとりに合った治療を見つけ、患者さんの「こういう職に就きたい」という子供のころからの夢をしっかり実現させてあげたい、と思いながら日々の診療にあたっています。
治療の進歩は大きな支えに でも油断は禁物
――選べる治療が増えて、患者さんに合った治療法が見つかりやすくなったのですね。
そう思います。ただ注意したいのは、症状がなくなったことで安心し、「もう薬をやめてもいいのでは」と思ってしまう方がいることです。治療によって症状がなくなる状態を「臨床的寛解」と言いますが、消化管に炎症が残っていると再び症状が表れやすいため、内視鏡検査で炎症が見られない状態、すなわち「内視鏡的寛解(粘膜治癒)」が得られるまでは治療を続ける必要があります。
――症状がなくなったとしても、治ったわけではないのですね。
そのとおりです。さらに言えば、内視鏡的寛解が得られても完全に治ったとは言えないのがこの病気の難しい点です。とはいえ、それでも再燃リスクを下げるためには、内視鏡的寛解に到達することが重要であり、IBD治療における大きな目標の1つとされています。だからこそ、治療を続ける意味をしっかり理解し、納得した上で継続していくことが大切です。
仕事の不安は医療者と一緒に乗り越える
――先生がIBD患者さんを診るときに、特に意識していることは何ですか。
IBD患者さんは、「今は体調が良くても、明日突然悪くなるかもしれない」という不安と常に隣り合わせです。だからこそ、「今だけで終わらない診療」を心がけ、長期的な視点で治療方針を立てます。例えば就職したての患者さんであれば、就職してから何年間か、極力長く寛解状態を維持してあげるのが、本人に対する一番のメリットだと思っています。就職したてでいきなり休みがちになると、同僚に引け目を感じてしまうこともあるでしょう。そういったことを極力避け、患者さんが意欲を持って仕事に取り組める環境を整えることが、私の役割だと考えています。
――仕事などの大事な局面で寛解を維持できているといいですよね。
はい、それはすごく重要だと考えています。たとえば、海外出張に行ったのにうまくいかなかった、となれば、次のチャンスがなくなったり、意欲が失せてしまったりする可能性もあります。「IBDだから海外出張を断った方がいいんじゃないか」と相談されたこともあります。けれども、こういう大事な局面は逆にチャンスと捉え、医療者と連携して治療をしっかりして、挑戦してもらいたいと思っています。
“つながる”ことが力になる
――先生が定期的に開催している「IBD教室」について教えてください。
IBD教室は、患者さんやご家族に参加していただき、病気に関する講義を行ったり、医療者と患者さんがディスカッションを行ったりするイベントで、年に2回ほど開催しています。最近では、クリニックに併設しているカフェで管理栄養士監修のクッキー作りなどを行いました。こうした取り組みを通して、IBDへの理解を深めていただくのはもちろん、医療者と患者さんの距離も近づき、相談しやすい関係づくりにつながっていると感じています。
――患者さん同士がコミュニケーションできる集いでもあるのですね。
それがとても大事だと思います。年配の患者さんが、若い患者さんに自身の体験を伝えて励ます場面もあります。体験を共有することで治療へのモチベーションが高まったり、「悩んでいるのは自分だけじゃない」と心の支えになったりしています。仕事で輝いている先輩患者さんの話は、リアルですし励みになります。
――IBDの一般向けの啓発活動も行っていらっしゃいますね。
「World IBD Day」に合わせて、2025年は「World IBD Day ライトアップイベント in KANAZAWA ~未来へ繋ぐハーモニーフェスティバル~」を開催しました。金沢駅と金沢城のライトアップやトークセッションなどを行い、多くの市民の方にご参加いただきました。
こうした活動を通してIBDの認知度が高くなれば、例えば職場で、患者さんのデスクをトイレに近い場所に配置する、といった配慮が自然にできるようになると思います。患者さん側も「会社は自分のことをしっかり考えてくれている」とわかって、働くモチベーションが上がります。そういう社会が実現するとよいですね。
仕事も夢も“あきらめない”を応援します
――最後に、働くIBD患者さんへのアドバイスをお願いします。
まずは、「やりたいこと、挑戦したいことをあきらめないで」とお伝えしたいです。仕事などで新たな挑戦をするためにどんな治療ができるのか、ぜひ医療者に相談して、一緒に見つけていってほしいと思います。
「仕事のことを先生に言ってもいいのかな…」と思うこともあるかもしれませんが、治療を進める上での大きなヒントになることも大いにあります。主治医が仕事の相談に即答できなくても、ソーシャルワーカーなどにおつなぎすることもできますので、まずは相談してください。主治医以外の医療者に相談してもかまいません。
うまく話せないとか、忘れてしまいそうな場合は、メモを活用してください。自分の話をするのが苦手な場合は、「同じような境遇の患者さんはいますか?」と医療者に聞いてみてもいいでしょう。共通点やヒントが見つかるかもしれません。
寛解状態を長く保つためには、ストレスをため込まない生活をすることも大切です。病気に負けない、仕事にも打ち込む、でも無理はしない。そのバランスを一緒に探していくことが、私たち医療者の役割だと考えています。これからも、患者さん一人ひとりの“自分らしい治療と仕事の両立”を応援していきたいです。
(ヤンセン ファーマ株式会社提供)





