潰瘍性大腸炎と乳製品【UCと食事のQ&A】

※潰瘍性大腸炎と食事（食材）の関連性は現在もなお不明な点が多く、緩解期か活動期か、手術の経験があるかないか患者さん個々人の状況によって食べられるもの・食べられないものが大きく異なります。医師や栄養士など専門家によく相談して、摂取の可否を判断しましょう。

ここ数年で「プロバイオティクス」「腸内フローラ」という言葉がメディアを賑わし、牛乳やヨーグルトなど乳製品の有用性が注目を集めていますが、一方で、「乳糖不耐症」や「牛乳アレルギー」など乳製品による体への悪影響も話題を呼んでいます。潰瘍性大腸炎の患者さんは、乳製品をどのように摂るのが良いのでしょうか？

監修者プロフィール

管理栄養士・スポーツ栄養専門士(公認スポーツ栄養士取得予定)

優生（ゆうき）

自身もIBD患者である病院栄養士。予防医療の普及や女性や子供の健康のために活動する、Luvtelli東京&New York公認カウンセラーとしても活動。得意分野はスポーツ栄養と予防栄養。

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1. 潰瘍性大腸炎で乳糖不耐症の人が乳製品を摂るときのポイントは？

体に良いイメージのある乳製品。しかし潰瘍性大腸炎に限らず、乳製品に含まれる「乳糖」を分解する酵素「ラクターゼ」が少ない「乳糖不耐症」の場合、乳糖が消化されず、そのまま大腸に入って発酵し、大量のガスや有機酸が作られてしまいます。これらが腸管を刺激することで、下痢や腹痛、腹部膨満などが起こります。IBD（炎症性腸疾患）患者さんは乳糖不耐症の人が多いと言われており、少し注意が必要です。乳糖不耐症や、牛乳を飲むとお腹に違和感が出るという方は、以下のような工夫をしてみましょう。

そのほかにも、料理に加える、乳糖が分解された乳飲料、ヨーグルトやチーズで摂取するなどの方法があります。

2. 潰瘍性大腸炎の人が牛乳を飲むのはNG？

潰瘍性大腸炎の患者さんが乳製品を摂る際に注意しなければならない、もうひとつのポイントが「乳脂肪」です。牛乳には、100gあたり3.8gの脂質が含まれています。しかし、牛乳の水分中に小さな脂肪球として混ざっているため、消化吸収は良いとも言われています。

まずは調子のよいときに少しずつ試してみて、下痢や腹痛などの症状が出ないか確認してみましょう。また、飲んで調子が悪くなったことはないけれど、脂質を制限されている方は、低脂肪乳、無脂肪乳を選ぶのもひとつの方法です。牛乳パックには、100mL中に含まれる乳脂肪量（g）が記載されていますので、確認してから購入しましょう。

牛乳は、貴重なカルシウムの供給源でもあります。「潰瘍性大腸炎だから飲まない！」と決めつけるのではなく、飲み方や商品の選び方などを主治医や管理栄養士に一度相談してみることをおすすめします。

3. チーズやヨーグルトなどの発酵食品はNG？

チーズやヨーグルトなどの発酵食品は、乳酸菌の働きで乳糖がある程度分解されており、乳糖不耐症の人が食べても問題がないことが多いとされています。発酵食品はタンパク質もある程度分解されていますので、消化吸収にも優れています。また、液体の牛乳とは異なり、チーズやヨーグルトのような固形物の場合、消化管をゆっくりと通過するため、腸への刺激も少なくなります。

4. 昨今注目されているプロバイオティクス

近年、乳酸菌やビフィズス菌といった生きた微生物の摂取が「プロバイオティクス」として注目を集めています。プロバイオティクスとは「腸内常在菌のバランスを変えることにより宿主に保健効果を示す生きた微生物」と定義されており、発酵乳や乳酸菌飲料、乳酸菌やビフィズス菌入りの補助食品、整腸剤などに多く含まれています。

小腸や大腸に到達した乳酸菌やビフィズス菌などの生菌は、大腸菌やウェルシュ菌、クロストリジウム菌などの有害な菌の働きを抑えて、腸内フローラのバランスを整えます。バランスが整うと、ガスの発生が減って腹部膨満感が軽減し、下痢や便秘が改善するだけでなく、免疫機能が高まり、感染やアレルギーを防ぐなどの効果も期待できるとされています。

（ライター：植田晴美）

参考文献

• 松本誉之、斎藤恵子ほか：潰瘍性大腸炎・クローン病の人の食事, 女子栄養大学出版部, 2003
• 田中可奈子、酒井英樹ほか：クローン病・潰瘍性大腸炎の安心ごはん, 女子栄養大学出版部, 2014