【IBD白書2024】最新調査で判明したIBD患者さんの実態と推移

ニュース2025/2/28

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炎症性腸疾患(IBD)患者さんとそのご家族を対象とした大規模アンケート調査「IBD白書2024」が公開されました。2018年から隔年で実施しているもので、今回は「患者背景」「治療・検査」「日常生活」「情報収集・交流」に関する38問を設定し、562人から有効回答を得ることができました。回答いただいた皆さま、ありがとうございます。2024年の調査を過去の調査と比較した結果、傾向が変わってきたこと、変わっていないことが見えてきました。

■調査のポイント
    【2024年調査の回答者について】
  • ・患者本人が約8割
  • ・約7割が本調査に初めて回答
  • ・潰瘍性大腸炎65.5%、クローン病34.5%
  • ・重症度は「中等症」が最も多い
  • ・約8割が指定難病の医療費助成を受けている

    【2024年調査からわかったこと】
  • ・使用割合が高い薬剤は、潰瘍性大腸炎では5-ASA製剤、クローン病では生物学的製剤
  • ・全体の約7割が現在の治療について「満足」「やや満足」と回答
  • ・潰瘍性大腸炎では、生物学的製剤の使用経験がある患者さんで入院経験が少ない
  • ・潰瘍性大腸炎、クローン病ともに「最も悩んでいる症状」は下痢
  • ・全体の9割が病気のことを学校や職場に伝えている
  • ・全体の約7割が日常生活に何らかの影響を感じている
  • ・潰瘍性大腸炎、クローン病ともに「将来が不確実」であることに半数以上が悩んでいる
  • ・「食事制限がつらい」ことに悩んでいる人は潰瘍性大腸炎よりクローン病で多い

    【過去の調査(2020・2022年)と比較してわかったこと】
  • ・従来の調査では「寛解」の回答者が最多だったが、今回は「中等症」が最多
  • ・増加傾向の治療は「生物学的製剤」、潰瘍性大腸炎では「JAK阻害薬」も増加傾向
  • ・診断時年代「40代以上」の割合が増加傾向
  • ・IBD症状悪化による入院経験が減少傾向(入院経験ありは、2020年71.2%、2022年66.4%)
  • ・患者同士で交流している割合が減少傾向

今回4回目となった本調査ですが、初めて回答した人が約7割だったことから、従来から回答者が入れ替わり、重症度や診断時年齢の傾向が変わったことが推察されました。

また、生物学的製剤の使用割合増加については、2022年以降、在宅自己注射が可能な製剤が発売されるようになったことも背景にある可能性が考えられました。

中高年以上での診断割合が増えた背景には、IBDという病気が認知されるようになったことで、「症状があっても我慢していた人」が体調の異変に気付いて受診するようになったこと、さらにIBDを診ることができる医師が増えて診断がつくようになったことが可能性として考えられました。IBDは10~30代の若年発症が多い病気ですが、これを機に、中高年の患者さん向けの情報発信にも注力していきたいと考えています。

患者背景

 

症状が初めて現れた年代

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全体では20代(25.1%)が最多で、次いで30代(18.3%)、15~19歳(17.3%)でした。疾患別では、潰瘍性大腸炎は30代(22.8%)が最多で、次いで20代(20.4%)、40代(19.8%)、クローン病では20代(34.0%)、15~19歳(24.2%)、10~14歳(16.5%)でした。50代で初めて症状が現れた人の割合は、2020年調査は4.7%、2022年調査は8.4%でしたが、2024年調査は10.1%と、調査のたびに割合が増えてきていることがわかりました。

IBD症状悪化による入院経験

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全体では約6割が入院した経験があると回答。入院経験ありは、2020年71.2%、2022年66.4%、2024年61.6%と、減少傾向にあることがわかりました。

IBD白書2024ではこのほか、回答者の性別、年代、お住まいの都道府県、現在の就労状況、現在の重症度、症状が初めて現れた年代、診断された時の年代、通院頻度、指定難病の医療費助成の有無、現在使用中の薬剤名・治療法に関する詳しい結果が見られます。

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治療・検査

 

治療満足度

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全体の約7割が「満足」「やや満足」と回答し、「不満」「やや不満」と回答したのは7.0%でした。前回調査同様、潰瘍性大腸炎・クローン病に関わらず、全体的に治療満足度は高い傾向にあることがわかりました。また、治療に満足していると感じている人の割合が有意に高いのは、「女性(71.2%)より男性(79.8%)」、現在の重症度が「中等症以上(68.4%)より軽症以下(80.2%)」、就労形態が、「フルタイム以外(70.1%)よりフルタイム勤務(79.7%)」でした。(Fisherの直接法:*p

腸の内視鏡検査を定期的に受けているか

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全体で8割以上が定期的に受けていることがわかりました。

IBD白書2024ではこのほか、最も不安を感じていること、最も悩んでいる症状、医療スタッフへの相談の有無、治験に参加の意向に関する詳しい結果が見られます。

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日常生活

 

病気のことを、学校や職場に理解されていると感じるかどうか

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病気のことを、学校や職場に伝えていると回答した人(511人)を対象に、理解されていると感じるかを尋ねたところ、「理解されていると感じる」「やや理解されていると感じる」と回答したのは、潰瘍性大腸炎50.3%、クローン病61%でした。

脂質を気にするか

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「気にする」「やや気にする」と回答したのは潰瘍性大腸炎77.2%、クローン病85.1%でした。「あまり気にしない」「気にしない」を選んだ人(74人)のうち、現在の重症度が「寛解」「軽症」の人が約6割でした。

IBD白書2024ではこのほか、日常生活に影響があるか、外出時にトイレの場所を常にチェックしているか、友人など身近な人に理解されていると感じているか、診断後の生活であなたが困っていることや悩み(フリーコメントあり)、ファストフードやラーメンなど「NGフード」と言われるものを食べるかなどに関する詳しい結果が見られます。

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情報収集・交流

 

病気に関して最も参考にしている情報の入手先

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病気に関して最も参考にされている情報の入手先は、全体で「医師・看護師・薬剤師など医療スタッフ」(34.9%)が最も多く、次いで「ブログ、SNS」(21.0%)、「IBDプラス」(18.9%)という結果でした。

患者同士の交流の場があったら交流したいか

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「交流したい」という3つの選択肢の中では、「オンラインでもリアルでも交流したい」が最多でした。2024年は規制緩和で対面イベントやハイブリッド(オンライン・対面の両方)開催もあったようですが、継続してオンラインでの交流を希望している傾向がわかりました。

IBD白書2024ではこのほか、調理の際に最も参考にしている情報の入手先、新しい治療法・治療薬の関心度、勉強会や講演会への参加経験、患者会に加入状況、患者同士で交流の有無などに関する詳しい結果が見られます。

「IBD白書2024」(PDF)では、すべての回答の結果に加え、2020年、2022年調査のデータ(比較可能な形にするため再集計を実施)も一同に見ることができます。ぜひご覧ください。

「IBD白書2024」(PDF)のダウンロードはこちら

(IBDプラス編集部)

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